ボク、女の子に生まれ変わったけど、元気です!

みなはらつかさ

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第三十七話 九月二十五日(月) 猫耳少女青春日記

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「あたし、姉貴失格かな~」

 いつもの朝の散歩中、不意にククがそう切り出した。

「ほんとなら、あたしがシャロンのこと、解決してやらなきゃならなかったじゃん? でも、何も出来なくてさ」

 ため息を吐く、彼女。

「ため息を吐くと、幸せが逃げるよー? ボクだって、おじいちゃんがいなかったら、きっと何も出来なかったもの。おじいちゃんぐらいの年の功があって、初めて解決できたんだと思うよ?」

「んー……」

 納得いってない様子だ。

「シャロンが、今までグレたりしなかったのは、絶対ククの存在のおかげだと思う。ククがいなかったら、シャロン、今まであの程度じゃすまなかったよ、きっと」

「そっかなー?」

 うんうんと、力強くうなずく。

「それにさ、真っ先に食事の話もらったの、ククでしょ。やっぱり、一番信頼されてるんだよ」

 ボクがお礼の言葉をもらったのは、こちらから電話したからだけど、シャロンも今、色々ぐちゃぐちゃしてて、気が回らなかったんだと思う。でも、ククへのお礼だけは忘れなかった。強い絆だ。

「そっかー。うん、少し自信出てきた。あんがとな!」

「どういたしまして」

「そういえば、結局昨日、行けなくてゴメンな! なんだかんだで、ウチ飯になっちゃってさ」

「気にしないで。気が向いたときでいいから、ほんとに」

 どうも、ククはこれで結構、気を使いすぎるきらいがある。

「ククさ、友達になった日、『年上だからって変に気を使わなくていい』って言ってたよね。それ、ボクらも同じだから。あんまり気負いすぎないほうがいいよ」

「そんなに、変に気ィ使ってるか、あたし?」

 少し、首を傾げて思案。

「変ってほどじゃないけど、やっぱ、『みんなのお姉さんであろう』ってのを感じるかな。バーシぐらい、お気楽極楽でいいと思うよ」

「ありゃ、お気楽極楽ってレベルじゃないと思うけどな」

 教会で、はしゃぎながらシャッターを切っていた姿を思い出す。ククも、思い出していることでしょう。

「まー、ものの例え! ククも、もっと気楽にね!」

「あんがとな。アユムと話してると、何か気が休まるわ。ほんとは、あたしがそういう役どころじゃないと、いけねーんだろうけど」

「ほら、言ったそばから」

 ククが、あっという顔になる。

「ほんとだな。自分じゃ、気づかないもんだ」

 また、ため息。

「幸せが逃げますよー。ほどほどに、ね」

「うん。あ、出口だ。じゃあ、また学校で!」

「うん! またね!」

 こうして、クク&ホリンと別れ、家路を急ぐのでした。


 ◆ ◆ ◆


 ふう、今日の給食もおいしかった! ごはんがおいしいって、つくづく健康の証だね!

 感謝、感謝!

 四人でプールに向けて調整しようと、バーシの机に向かおうとすると、シャロンがちょっと話しにくそうに、バーシに話しかけ、二人は教室を出ていきました。

 家出と、その解決のこと、話すんだね。

 じゃあ、ククとその間、話していよう。


 ◆ ◆ ◆


「バーシっちに、昨日、一昨日のこと、話したっす」

 ボクの席に、いつもの四人が集まりました。

「私、どういう態度で返したらいいのかわからなくて、少し悩んだけど、『おめでとう』って言ったら、シャロン喜んでくれてね」

「ごめんね。バーシをのけ者にするつもりはなかったんだけど、シャロンの口から説明するのを、待ってたんだ」

「謝らないの! のけ者扱いとかいって、怒ったり悲しんだりしないから、安心して。でも、私がノンキしてた隣で、大変なことになってたんだね。何か、役に立ちたかったな」

 バーシ、優しいね。

「気持ちだけで、十分じゅうぷん嬉しいっす。昨日はですね……へへ、お子様ランチをお願いして、作ってもらったっす! なんかね、そういう気分だったんす。ママ、快く作ってくれて。おいし嬉しかったっす」

 照れくさそうに、はにかむシャロン。もちろん、誰もお子様ランチを馬鹿にしたりなんてしない。シャロンが、両親に甘え直してるんだ。

「良かったなあ! 良かったなあ、シャロン!」

 ククが、感極まって、泣き出してしまった。何事かと、周囲の視線が集まる。

「あー、なんでもないから、みんな気にしないで!」

 バーシと一緒に、周りの気を逸らす。

「泣かないでくださいっすよ、姉さん。なんか、うちまで泣けてきちゃうじゃないすか」

 シャロンも涙ぐみ始める。

「ちょっと、場所変えよう」

 バーシと一緒に、二人を移動させる。……この辺なら、人気ひとけ少ないかな。

 その後は、二人が泣き止むのを待って、教室に戻ったのでした。


 ◆ ◆ ◆


「なんか、みんなには変なところばかり見せて、恐縮っす」

「あたしも」

 二人が、頭を下げる。

「気にしないで。二人が、ボクらに心を許してくれてる証拠だもん。ね、バーシ?」

「うんうん。私ら親友じゃん! かっこつける必要ないって!」

 ボクはククの、バーシはシャロンの肩をポンポン叩く。

「ありがとうっす。ところで、プールの話する時間、なくなっちゃったっすね」

「それは、放課後しよう。あ、予鈴。じゃあ、席に戻ろう!」

 というわけで、解散。

 放課後、四人で歩きながら、プールの打ち合わせをするのでした。
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