ボク、女の子に生まれ変わったけど、元気です!

みなはらつかさ

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第四十話 九月二十六日(火) 愛しのカツ丼!

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「ただいまー」

「おお、おかえり。疲れてなければ、またヤマト街行こうと思うんだけど、どうかな?」

 今日は定休日。お父さんが、わくわくしながら提案してきます。

「行けるよー。あ、おじいちゃん。お釣り」

 お父さんと、例によってチェスで対戦中のおじいちゃんに、お釣りを渡す。

「おう。いい地図、あったかい?」

「うん、こんなの」

 地図を見せる。

「へー。こりゃ立派そうだねェ」

「俺らも行きたいねー」

「別の日にしてね?」

 念を押しておく。

「そうですよ、アルクさん。アユムたちも、お年頃なんですから」

 お母さんも、念を押す。

「そーだよ、お父さん! 私たちと一緒に来ようとか、やめてよね!」

 ハーちゃんも、念押し。

「わかってるよー。三人揃って、そんな圧かけなくても。俺、どんだけ鈍感だと思われてんの?」

 お父さん、たじたじ。

 おじいちゃん、笑ってるけど、最初にそれしようとしたの、おじいちゃんだからね?

「おほん、それはさておき。アユム、着替えてきたら、行こうか」

「うん。でも、シャワー浴びていい?」

「いいよ~。じゃあ、親父を詰ませるかー」

「お。小癪な。負けんぞー」

 二人は、再び勝負の世界に入ってしまいました。

 あんまり待たすわけにもいかないし、さっさと浴びてこよーっと。


 ◆ ◆ ◆


 着きました! トラックが五人乗りなので、おじいちゃんは、スクーターで来ています。

 ストルバック一家も誘おうと思ったけど、劇を見に行くそうで。残念。

「今日は、どこ回るのー?」

 頭の後ろで腕組みしながら、のほほんと尋ねる。

「あれから、色々調べてるんだけどね。近所では、ヤマト料理のいい資料が手に入らなくて。こっちに来れば、いい料理本があるかなーってのが、ひとつ。もう一つは、実際にどこかで、食事してみたくてね」

 お父さんが、振り向きながら方針を語る。なるほど。

「まず、書店を探したいね。料理本もそうだけど、この辺のガイドブックが欲しい」

 というわけで、道を訪ねながら、本屋探し。あちこち回って、ありましたー!

 中に入ると、色々と珍しい本が。あ、ヤマトの漫画!? ラドネスブルグ向けに、翻訳されてる。日本風な絵柄、なつかしー。一冊、買っていこう。どれにしようかな?

 漫画に目移りしていると、お父さんたちは目的の本を手に入れてしまったようで、「アユムー? 行くよー?」と声をかけてくる。うーん、残念。また今度!

 ガイドブックによると、「そばげん」というおそば屋さんが、おいしいらしい。

 地図とガイドブックを頼りに、到着~!

 引き戸を開けると、「いらっしゃーい!」とお出迎え。う~ん、そばつゆのいい香り。

「ええと。『イチョウ』というのがおすすめに挙げられてるけど、全員これにするかい?」

「あ、ボクあえて、カツ丼頼んでみていい?」

「カツ丼?」

 謎料理に、首を傾げるお父さんたち。

「ええと……、たぶん、こっちの世界にもあるはず……。あ、これかな? どういうものかは、ボクが頼んでのお楽しみー。前世から、一度食べてみたかったんだよねー。研究なら、一人ぐらい違うの食べたほうがいいでしょ?」

「一理あるな。よし、オレがアユムと同じの頼んでみるから、お前はイチョウいってみろ」

「了解、親父」

 あ、店員さんがきた。ここも、ラドネスブルグ流の、非挙手制なんだね。

 注文を伝えるお父さん。

「ええと、これ、上にトンカツ載ってる丼ですよね?」

 念のため、確認。

「はい」

「じゃあ、これください。おじいちゃんもだよね。二つ」

「かしこまりましたー!」

 オーダーを取って、厨房に伝える店員さん。楽しみだねー。

 和風な趣の内装について、雑談しながら待ってると、まずはカツ丼が到着!

「まだ、箸使えるかな?」

 割り箸を割って、動かしてみる。あ、いけそう。ブランク十二年でも、覚えてるもんだね。

「何だ、そりゃ?」

 おじいちゃんが、不思議そうに箸を見る。

「お箸。前世では、これ使ってご飯食べてたんだ。使うのにコツがいるから、おじいちゃんはフォークでいいと思うよ」

「ほー」

 というわけで、ひと足お先に、二人でいただきます!

 おお……。サクサク味しみとんかつを、固まりきってない卵がコーティングしてて……。これが、カツ丼の味かー! ごはんと一緒に、かき込むと、おいしいおいしい!

 おじいちゃんも、ボクの見様見真似で、フォークで実食。

「へえ。こいつァ、面白ェな! そうか、鰹節と醤油は、こう使うのか!」

 おじいちゃん、研究モードに入っちゃった。

 ボクらが食べている間に、イチョウも到着。こちらもフォークで、四人がいただきます。いろいろな天ぷらが載った、天そばか。あっちも、おいしそうだなー。

「おいしいもんだねえ! そばって、こんななのかー」

 お父さんも、感心することしきり。

「親父。味、しっかり覚えて帰ろうな」

「おうよ」

 二人の料理人魂が、燃えている!

「わたしも、よく覚えましょ。うちで、出してみたいもの」

 お母さんも、ノリノリだ!

 おばあちゃんとハーちゃんは、まったりとおいしそうに食べている。

 ただ、ラドネスブルグでは、麺をすする風習がないから、無音で変な感じ。みんな、スパゲッティーみたいに、巻いて食べてるのが可笑しい。

 まあ、こっちラドネスブルグでは、逆に上級者向けの食べ方になるのかな? 無理しないほうが、いいよね。

「ごちそうさまでした!」

 カツ丼を堪能! おいしかったー!

「オレも、ごちそうさま! いやー、うまいもんだねェ!」

 おじいちゃんと、感想を話し合ってると、最後のハーちゃんも、食べ終わりました。

「お腹いっぱーい」

 お腹をさするハーちゃん。ちょっと、ハーちゃんには量が多かったみたいだね。

「じゃ、適当にぶらぶらしながら帰ろうか」

 会計を済ませ、退店。

 帰り道、ヤマト酒に興味を示すお父さん。

 我が家では全員、飲酒する習慣はないけど、お父さんだけは、お客様にお出しする関係で、「試し飲み」することがある。

 そんなわけでお父さん、店で出すのに手頃そうなのを、一本だけ買っていきました。

 晩に飲んだ感想では、「魚料理に合いそうだ」とのこと。やっぱり、日本酒に似てるんだね。

 そんなわけで、今週もヤマトを堪能しました!
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