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第四十五話 九月三十日(土) 水の楽園! ②
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「うおー! 一番、ククチェンバレン、入るぜー!」
「だーめ。準備運動が先でーす」
プールに突撃しようとするククを、制する。
「そっすよ、姉さん。足つったら、その日一日、遊ぶどころじゃなくなるっす」
「むう、シャロンまで……。わーったよ。じゃ、アユムセンセ、お手本よろしく~」
「りょーかーい。ハーちゃんたちも、ボクの真似してね」
いっちにーと、足伸ばしや屈伸など、準備運動を黙々と進める。
それにしても、屋内でヤシの木育ててるんだ。ラドネスブルグで、見れるとは思わなかったな。
ほかにも、おっきな滑り台とか、寝そべる椅子とか、いかにもレジャープールです! って感じのものが、目立つ。
温水プールだけあって、室温は暖か。なんなら、湿気もあって暑いぐらい。
「準備運動おわりー。熱中症になるから、プールだからって油断せずに、こまめに水分補給してね」
「熱中症ってなんぞ?」
首を傾げる、ククほか一同。しまった。こっちじゃ、一般的じゃない名前だったか。えーっと、こっちだと何だったかな……そうだ!
「ごめん。日射病の間違い。太陽なんか差してないけど、内容は同じだから、気をつけて。ボクの、前世知識を信じてほしい」
「アユムの前世知識なら、信じる! みんなも、ね!?」
バーシの気迫に気圧されて、「は、はい……」となる一同。注意事項は、こんなもんかな?
「じゃー、泳ごうか」
「あの! アユムおねーさん!」
フーちゃんが、おずおずと挙手。
「わたし、その、全然泳げなくて……。泳ぎ、教えていただけますか?」
「いいよー」
と応えたはいいけど、ハーちゃんの視線が……。
「フーちゃん! 私が、教えてあげる!」
「え、あの、わたし、お姉さんが……」
なんか、バチバチしてるぅ~! お母さんに指摘されたあとで見ると、確かにこりゃ、嫉妬劇場だ。
「えーと、二人にはボクらの誰かがついてなきゃだから、ボクが二人の面倒見るよ」
「うーん、まあ、それでいいや」
「よろしくお願いします」
ふう。ハーちゃんが、落ち着いてくれたようで、何より。
「じゃあ、小児用プール行こうね。みんなー。ボクは二人と一緒に、小児用プール行ってるからー」
伝言は伝わったようで、プールに入ろうとしていたバーシが、頷きながら手を振る。
◆ ◆ ◆
というわけで、小児用プール。ハーちゃんたちよりも小さな子が、お父さんやお母さんに見守られながら、パチャパチャ泳いでいる。かわいい。
「ハーちゃんは泳げるけど、おさらいのつもりでやろう。フーちゃんは、水に顔つけるのできる?」
ふるふると、首を横に振る。
「じゃあ、そこから始めよう。ボクの手を握って。何かおかしいなって思ったら、さっと顔を上げるか、出来なければ強く握ってね」
二人が、ぎゅっと握ってくる。子供って体温高いな。ふふ。
「じゃあ、耳を出したまま、顔を水につけて、三十まで数えてみよう」
ばしゃっと顔をつける二人。
「いーち、にーい、さーん……」
三十まで、数える。フーちゃん、辛そう。ガンバレ!
「さんじゅー!」
ざばぁと顔を上げ、ぜえぜえと息をする二人。
「フーちゃん、水、怖い?」
「お姉さんと一緒だから、平気です……」
おずおずと応える彼女。
「おねーちゃん! 私にも訊いて!」
「ええ……ハーちゃん、泳げ……」
「いいから!」
これは、逆らわないほうが良さそうだ。
「ハーちゃん、水、怖い?」
「ううん! おねーちゃんのおかげで、全然平気!」
お日様笑顔。なんだかなあ。
そんな調子で、フーちゃんは少しずつステップアップ。とはいっても、急激なレベルアップというのは、無理なもので。
「フーちゃんは、もう、水、大丈夫みたいだね?」
「はい!」
「ハーちゃんも」
「うん!」
視線に気づいて、フォロー。いやはや。ハーちゃんって、割と厄介な所あるなあ、と感じるのでした。
「アユムー」
不意に名前を呼ばれてそちらを向けば、バーシさんじゃあ、ありませんか。
「どしたの?」
「教師役、代わろうかなって」
ハーちゃん&フーちゃんから、「ええー」と不平が上がる。
「お二人さんや。アユム、二人につきっきりで、自分のやりたい遊び、全然出来てないんだよ。ほんとにアユムが好きなら、そろそろ自由にしてあげないと」
入水して、ハーフーコンビにそう問いかけると、二人とも黙ってしまう。
「あの、ボクは大丈夫……」
「アユム。奴隷になるのと、愛するのは違うよ」
むう。
「いいかな、三人とも?」
バーシのいい笑顔に、おずおずとうなずくボクら。
「おねーちゃんが指導しないなら、私、好きに泳ぐ~」
すいすい、平泳ぎを始めるハーちゃん。
「いいけど、私の視界からは外れないでね」
「じゃあ、二人のことよろしく。ありがとうね。ククとシャロンは?」
「流水プール」
フーちゃんと、「どこまでできるか」質疑応答中に、こちらにも回答。
「そっか。ボクは、競泳プール行ってくる」
「いってらー」
さーて、自由時間だ!
◆ ◆ ◆
水中ゴーグルをかけ、耳栓をつける。水中ゴーグルはバンドできっちり固定されるから、ボクらでも、問題なく使える。
水中に入り、まずは平泳ぎ。
気持ちいい。ぬるりと体を通り過ぎていく、水の抵抗。程よい温度。何より、汗をかいても気にならないのが、ジョギングよりもいい。まあ、そのぶん、熱中症に気づきにくいリスクがあるんだけど。
泳法を、クロールにスイッチする。速度が上がり、疲労度も上がる。でも、それが心地いい。
まだまだ時間はあるからね。力を使い果たさないようにしないと。
でも! とにかく泳ぐのが、気持ちいい! 前世で出来なかったことの一つ! とても、幸せだあ!!
たっぷり四往復ぶんしてから、ククたちの様子を見に行くことに。
はー、気持ち良かった~!
「だーめ。準備運動が先でーす」
プールに突撃しようとするククを、制する。
「そっすよ、姉さん。足つったら、その日一日、遊ぶどころじゃなくなるっす」
「むう、シャロンまで……。わーったよ。じゃ、アユムセンセ、お手本よろしく~」
「りょーかーい。ハーちゃんたちも、ボクの真似してね」
いっちにーと、足伸ばしや屈伸など、準備運動を黙々と進める。
それにしても、屋内でヤシの木育ててるんだ。ラドネスブルグで、見れるとは思わなかったな。
ほかにも、おっきな滑り台とか、寝そべる椅子とか、いかにもレジャープールです! って感じのものが、目立つ。
温水プールだけあって、室温は暖か。なんなら、湿気もあって暑いぐらい。
「準備運動おわりー。熱中症になるから、プールだからって油断せずに、こまめに水分補給してね」
「熱中症ってなんぞ?」
首を傾げる、ククほか一同。しまった。こっちじゃ、一般的じゃない名前だったか。えーっと、こっちだと何だったかな……そうだ!
「ごめん。日射病の間違い。太陽なんか差してないけど、内容は同じだから、気をつけて。ボクの、前世知識を信じてほしい」
「アユムの前世知識なら、信じる! みんなも、ね!?」
バーシの気迫に気圧されて、「は、はい……」となる一同。注意事項は、こんなもんかな?
「じゃー、泳ごうか」
「あの! アユムおねーさん!」
フーちゃんが、おずおずと挙手。
「わたし、その、全然泳げなくて……。泳ぎ、教えていただけますか?」
「いいよー」
と応えたはいいけど、ハーちゃんの視線が……。
「フーちゃん! 私が、教えてあげる!」
「え、あの、わたし、お姉さんが……」
なんか、バチバチしてるぅ~! お母さんに指摘されたあとで見ると、確かにこりゃ、嫉妬劇場だ。
「えーと、二人にはボクらの誰かがついてなきゃだから、ボクが二人の面倒見るよ」
「うーん、まあ、それでいいや」
「よろしくお願いします」
ふう。ハーちゃんが、落ち着いてくれたようで、何より。
「じゃあ、小児用プール行こうね。みんなー。ボクは二人と一緒に、小児用プール行ってるからー」
伝言は伝わったようで、プールに入ろうとしていたバーシが、頷きながら手を振る。
◆ ◆ ◆
というわけで、小児用プール。ハーちゃんたちよりも小さな子が、お父さんやお母さんに見守られながら、パチャパチャ泳いでいる。かわいい。
「ハーちゃんは泳げるけど、おさらいのつもりでやろう。フーちゃんは、水に顔つけるのできる?」
ふるふると、首を横に振る。
「じゃあ、そこから始めよう。ボクの手を握って。何かおかしいなって思ったら、さっと顔を上げるか、出来なければ強く握ってね」
二人が、ぎゅっと握ってくる。子供って体温高いな。ふふ。
「じゃあ、耳を出したまま、顔を水につけて、三十まで数えてみよう」
ばしゃっと顔をつける二人。
「いーち、にーい、さーん……」
三十まで、数える。フーちゃん、辛そう。ガンバレ!
「さんじゅー!」
ざばぁと顔を上げ、ぜえぜえと息をする二人。
「フーちゃん、水、怖い?」
「お姉さんと一緒だから、平気です……」
おずおずと応える彼女。
「おねーちゃん! 私にも訊いて!」
「ええ……ハーちゃん、泳げ……」
「いいから!」
これは、逆らわないほうが良さそうだ。
「ハーちゃん、水、怖い?」
「ううん! おねーちゃんのおかげで、全然平気!」
お日様笑顔。なんだかなあ。
そんな調子で、フーちゃんは少しずつステップアップ。とはいっても、急激なレベルアップというのは、無理なもので。
「フーちゃんは、もう、水、大丈夫みたいだね?」
「はい!」
「ハーちゃんも」
「うん!」
視線に気づいて、フォロー。いやはや。ハーちゃんって、割と厄介な所あるなあ、と感じるのでした。
「アユムー」
不意に名前を呼ばれてそちらを向けば、バーシさんじゃあ、ありませんか。
「どしたの?」
「教師役、代わろうかなって」
ハーちゃん&フーちゃんから、「ええー」と不平が上がる。
「お二人さんや。アユム、二人につきっきりで、自分のやりたい遊び、全然出来てないんだよ。ほんとにアユムが好きなら、そろそろ自由にしてあげないと」
入水して、ハーフーコンビにそう問いかけると、二人とも黙ってしまう。
「あの、ボクは大丈夫……」
「アユム。奴隷になるのと、愛するのは違うよ」
むう。
「いいかな、三人とも?」
バーシのいい笑顔に、おずおずとうなずくボクら。
「おねーちゃんが指導しないなら、私、好きに泳ぐ~」
すいすい、平泳ぎを始めるハーちゃん。
「いいけど、私の視界からは外れないでね」
「じゃあ、二人のことよろしく。ありがとうね。ククとシャロンは?」
「流水プール」
フーちゃんと、「どこまでできるか」質疑応答中に、こちらにも回答。
「そっか。ボクは、競泳プール行ってくる」
「いってらー」
さーて、自由時間だ!
◆ ◆ ◆
水中ゴーグルをかけ、耳栓をつける。水中ゴーグルはバンドできっちり固定されるから、ボクらでも、問題なく使える。
水中に入り、まずは平泳ぎ。
気持ちいい。ぬるりと体を通り過ぎていく、水の抵抗。程よい温度。何より、汗をかいても気にならないのが、ジョギングよりもいい。まあ、そのぶん、熱中症に気づきにくいリスクがあるんだけど。
泳法を、クロールにスイッチする。速度が上がり、疲労度も上がる。でも、それが心地いい。
まだまだ時間はあるからね。力を使い果たさないようにしないと。
でも! とにかく泳ぐのが、気持ちいい! 前世で出来なかったことの一つ! とても、幸せだあ!!
たっぷり四往復ぶんしてから、ククたちの様子を見に行くことに。
はー、気持ち良かった~!
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