たくげぶ!

みなはらつかさ

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第三十九話 紅葉狩りとお弁当

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「十月も終わろうってのに、あっちいなあ~」

 佐武家にやってきたにこが、ハンカチで汗を拭きながらぼやく。

「こんにちは。涼んでってちょーだい。今、アイスティー持ってくるね」

 にこと入れ替わりに、客間を出ていくきいろ。

「こんにちは~。あれ? きーちゃんは?」

「ちーす。アイスティー作りに行ってるぜ」

「そっか。暑いねえ」

 その後、他の二人も、合流する。

「日本の秋、暑すぎませんか?」

 ノヴァルナも、汗を拭き拭き愚痴をこぼす。

「今年は異常ですよね」

「も、じゃね?」

 るうの言葉に、力なく返すにこ。

「お待たせー。あ、みんな、いらっしゃい」

 ピッチャーとグラスを持ったきいろが、戻ってくる。

「なんか話してたの?」

「んー? 暑さへの愚痴」

 さっそく、アイスティーをるにこ。

「ほんと、やんなるよねー。衣替えも遅れてるし」

 きいろも、茶を飲む。

「ところで、日本は紅葉きれいらしいですね?」

「どうした急に」

「いえ、せっかくですから、紅葉狩りしませんか?」

 ノヴァルナが居住まいを正す。

「あー、いいねー。今年は暑さのせいで、紅葉こうようが遅れているらしいけど」

「来週には、見頃らしいですよ」

 「ほほー」と、スマホ片手に調べていたるうに、うなずく一同。

「じゃあ、お弁当持って、集まりましょう! ワタシ、日本のお弁当文化大好きです!」

「いいね。その頃には涼しくなってるといいけど」

 きいろには悪いが、二〇二三年の猛暑は、十一月終盤まで続く。

「来週の予定も決まったところで、締切も近いことだし、エクスプやりまっしょい!」

 リーダーの号令で、エクスプ開始。今日のGMは、歌留奈。

「もう、システム的にはあんまいじるとこ、なさそうだね」

「そだねー。ボク的には、もっといじってあげたいけど、もう手をつけるところが思いつかないや。あとは、かるかんのイラスト待ちかな」

「頑張るね!」

 ぐっと握手する二人。美しきかな、女の友情!

「来週が楽しみだねー」

 のほほんと、茶をしばくリーダーであった。


 ◆ ◆ ◆


 翌土曜。

「あっづ~……」

 F公園にやってきたきいろだが、暑さに参っていた。

(お弁当、傷まなきゃいけど)

 などと思っていると、見慣れたメンバーが。

「暑いね~」

「ねー」

 などと言いながら、紅葉池のほとりに向かう。

「レジャーシート、敷くぜー」

 にこが、手早くセッティング。

「傷まないうちに食べよう」

「そうしましょ」

 車座になる五人。

「やっぱ、お弁当はおかず交換だよね~。きーちゃん、アスパラべーコンとミートボール交換しない?」

「いいよー」

「わ! 楽しいですね、それ! ワタシのナゲットと、アスパラベーコン交換してください!」

 きいろのアスパラベーコン、大人気である。

「それにしても、紅葉って本当に真っ赤なんですねー」

 感心する、ノヴァルナ。

「そうだねー。もっと涼しかったら、風流なんだけど」

 汗を拭くリーダー。

「でも、いい記念になりました!」

 みんなで笑顔。

「そーいえば、にこちん」

「なんぞ?」

「るーことは、どれぐらい進んだの?」

 きいろの野暮天に、むせるにこ。

「あのな。デリカシーとかないんか、お前」

「ごめん、つい」

「映画見たぐらいだよ。極めて、清いおつきあい」

 るうも、こくこくと首を縦に振る。

「そっかー。セーシュンしてるねえ」

 うんうんうなずく、リーダー。

「そういうお前は、浮いた話の一つでもないんか?」

「ないねえ!」

 からからと笑う。

「やれやれだな」

 きいろにツッコんでると疲れてくるので、飲食再開。

「そこで、あーんいかないかなー……」

「聞こえてるぞ」

 またしても野暮なことを言うリーダーに、にこ、心底疲れる。

「あの、大須先輩! わたし、先輩にあーんしたいです!」

「ええっ!?」

 当人、びっくり。

「恥ずいな~……」

「ぜひ!」

「あーん……」

 ぱくっ、もぐもぐ。

「うん、うまい!」

「ヒューヒュー!」

「きいろ、うるさい」

 小っ恥ずかしいが、悪い気分ではなかった。

 そうこうしているうちに弁当箱も空になり……。

「お開きかな」

「ですね! 紅葉狩り、楽しかったです!」

 ノヴァルナ、ダブル・サムズアップ。

「じゃあ、また明日ー」

「また明日ー」

 互いに手を振り、それぞれの家路を歩む。暑かったが、充実したいい日だった。面白いものも見れたし、と思うきいろであった。
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