カンブリアン・アクアリウム

みなはらつかさ

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第十一話 らいあ

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「私たちは、渋谷ここで降りますんで!」

「はーい。帰ったら、見せ合いっこしましょーねー」

 ペコリとお辞儀する新人コンビに、奏と里愛が手を振る。らいあは照れくさいのか、ちょっと手を上げただけだった。

 先輩トリオは、京王井の頭線から山手線に乗り換え、原宿へ向かう。


 ◆ ◆ ◆


 渋谷109。開業から、百五十年近い歴史を誇る、女子のメッカにして老舗。

 まりんとあくあは、109のブティックを物色していた。

「あ、ここにしよ、ここ!」

 キュート系の服を売る店に、ビビッと来たあくあ。

 一緒に中に入ると、ハンガーを見ていく。

「お! これは!」

 あくあが上下を手に取り、店員さんに話しかけ、試着室に消える。

 それを追い、どんな服を選んだんだろうとわくわくしていると、カーテンが開かれる。

「どう?」

 水兵セーラー風の、白基調のノースリーブに、同じく白基調の膝丈ショートパンツ。

「可愛い~! すっごくイイ!」

 まりん、好感触。ボーイッシュなあくあに、この上なく似合っている。

「えへへ、そう? じゃ、これで決め打ちしちゃうかな」

 再度カーテンが閉まり、しばしすると、元の服に着替えたあくあが出てくる。

「これくださーい」

 あくあ、お買い上げ。

「私は、キュート系より、ガーリーかな~」

 河岸を変える二人。

 ガーリーファッションの店に入り、色々見ていく。

「あ、これ、これからの季節に良さそう」

 店員さんに声掛けし、試着室に入るまりん。

 今度は、あくあがわくわくと待つ番。

 ややあって、カーテンが開くと、白のキャミソールワンピに身を包んだまりんが。

 あくあ、無言でダブルサムズアップ。

「イケてる? じゃあ、これで」

 着替え直して、お会計を済ます。

 他にも、下着やコスメを買い揃えていく彼女たちであった。


 ◆ ◆ ◆


 一方、先輩トリオは。

 散歩しながらウィンドゥショッピングし、ビビッと来た服を見かけたら、入店するというスタイルを採る。

 里愛がまず、青のゆるTと白のマーメイドスカートのフェミニンコーデで決め打ち。

 続いて奏が、レースデザインの白いトップスと、空色のサス付きレーススカートの、これまたフェミニンなコーデで決める。

 残るは、らいあのみだが……。

「ねね、これどう!?」

 奏が指さしたのは、ウィンドゥに飾られた、白のトップスと、黒いスラックスのコーデ。

「うんうん、絶対らいあに似合うと思う!」

 里愛、好感触。

「試着してみましょうよ」

 奏に背中を押されて、入店。展示品と同じものを、試着する。

「似合う~!」

「バッチリ!」

 カーテンを開けて出てきた、かっこいいらいあに、奏と里愛が、嬌声を上げる。

 しかし、らいあの顔は浮かなかった。

「冷やかしになって、すみません」と服を返すと、らいあは別の店を目指す。

「ちょっとまってよ、らいあ!」

 二人が、慌ててあとを追いかける。

 一軒のブティックの前で、足を止めるらいあ。ショーウィンドゥに飾られていたのは……。

「えっ!? これにするの!?」

 びっくりする奏。

 らいあは、こくりと頷いた。


 ◆ ◆ ◆


「ただいまー」

「おかえりなさい」

 先輩トリオより先に帰っていた新人コンビが、三人を出迎える。

「さっそく、見せ合いっこしませんか?」

 キラキラと瞳を輝かせる、まりん。

「そうね。じゃあ、いってみよう!」

 自室に引っ込む五人。ややあって、着替えて出てくる。

「きれいです~!」

「かわいい~!」

 称賛が飛び交う。特に、あくあの水兵スタイルが、キュートすぎると評判だった。

「織田先輩、遅いですね」

「んー……」

 相部屋をノックする奏。

「二人共、待ってるわよ」

「……わかった。今行く」

「びっくりしないでね」

 奏が二人にそう言うと、二人共、首を傾げる。

 がちゃりとドアが開き、中から出てきたのは……。

 お嬢様然とした、純白フリルワンピースのらいあ!

「えーっ!?」

 驚かないように言われていたものの、やっぱり衝撃は隠せず。

 正直、似合っていない。

「あの、どうしてこのチョイスを……?」

 頭に疑問符を五つぐらい浮かべて、尋ねるまりん。

「一度、着てみたかったんだ、こういうの」

 背が高く、言葉遣いもがさつで、顔の作りも、美女というよりは、イケメンならいあ。

 学生時代は、もっぱら男子より女子からモテ、本気チョコを、バレンタインにもらったこともある。

 らいあも、そんな自分の立ち位置を自覚し、かっこいい系のファッションで通してきた。

 しかし、今日ついに、そんな「偽った自分」に、嫌気が差した。

 そして、本当に着たかった服を、選んだのだ。

「似合わないだろう?」

 自嘲気味に、微笑むらいあ。

「いえ、その……。服は着られるものではなく、着るものだと思います!」

 真剣な眼差しで、答えるまりん。

「ありがとう」

 らいあは、今度は優しく微笑んだ。
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