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第九話 デエト
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「ハールーちゃん! デートしーましょ!」
まだ昨日のアルコールが残っていて調子が悪いけど、起き抜けに隣で目を覚ました彼女に、あえて元気に声をかける。ふたりとも、ネイキッド。つまり、昨夜はそういうことです。
「あたた……。おはよーございます」
ハルちゃんも二日酔い。底なしコンビだね。
彼女のお仕事も至極順調で、程なく生保を外れることができるでしょう。
普通は、なかなか生保を外れるというのはできない。噂の不正受給なんてほんの僅かで、ほとんどの人は、病気、障碍、年齢……そういった覆し難い理由で保護を受けているからだ。
だから、心無い自治体は水際作戦なんてやるわけだけど、それはとても人道にもとることだと、現職として思う。
まあ、暗い考えは一旦頭から追い出しましょ。本来なら、なんちゃら教室なんて日曜が書き入れどきなんだろうけど、新人にはまず慣れてもらおうということなのか、比較的楽な曜日を回してもらっているとのことで。
言い換えると、デートとかするんなら今のうち! これから、スケジュールが合わなくなること必至だろうからね。
と、いうわけで……。
「デートしよ、デート!」
「願ってもないですけど、まずはシャワー浴びません?」
「それもそだね」
というわけで、広くはない浴室で、一緒にシャワーを浴びる。触りっこなんかしたりして。あー、もう。どうしてこの子とは、こんなに波長が合うんだろう! いちゃいちゃ。
はー、さっぱりした。
「どっか、行きたいとこある?」
着替えながら質問。
「そうですねえ……あ、遊園地! 遊園地って、一度行ってみたかったんです!」
ほむほむ。このへんで一番近いとこは……。
ぽんと手を打つ。
「ピュアランドとかどう?」
「ケイティちゃんとかのですか? いいですね!」
ピュアランドは、日本が誇るファンシーキャラブランドの会社が運営するテーマパーク! そういうところで、童心に帰ってはしゃぐのも悪くない。
「よし、善は急げ! おめかししたら、行きましょ」
というわけで、さくさくメイクするのでした。
電車でゆらり揺られて目的駅へ。あとは、歩いていける距離。
お手々繋いで、きゃっきゃうふふ。
着きましたー! 外観からもう、ファンシー王国への入り口って感じ! 入場券を買い、中へ!
まずは私たち、ご飯を食べずに出てきてるので、「ハロウィンメニュー」とやらが食べられるらしい、一階のフードコートに向かう。
ここ、三階が出入り口という、ちょっと変わった構造なのです。
しかし、さすが日曜。混んでますねえ。二十分ほど待たされて、もうお腹限界!
席に着くと、さっそくメニューを物色!
「わたし、このうさちゃんのカレーにしますね」
このブランドの人気キャラの一人、「メロディア」ちゃんのカレーだ。キャラ絵が描かれたプレートが付けられている。
「じゃあ、わたしはこっちの『ポンポンゼリー』のを」
同じく、人気キャラのカレーを注文。
生活保護の身の上で、テーマパーク遊びに興じるハルちゃんを、狭量な人は贅沢と責めることだろう。だけど、私はそうは思わない。人はパンのみに生きるにあらず。文化的な生活は、法律で保証されているのだ。
ともかく、注文を伝え、出来上がるまで、ここのブランドのキャラを説明する。ハルちゃん、トップスターであるケイティちゃん以外、知らなかったみたい。
そして、番号を呼ばれ、受け取りに。かわいい~&美味しそう~。
「いただきます!」
ん! テーマパーク飯とあなどるなかれ! ここの、美味しいわ!
プレートだと思ってたのはかまぼこのようで、おいしく食べられました。食べるの、ちょっと可哀想だけどね。
いやー、お腹が空いてたものだから、二人とも、ぺろりと平げてしまいました。
レストランから出ると、パンフ片手に作戦会議。
「ハルちゃん、行きたいとこあるー?」
「んー、定番の観覧車とかジェットコースターはないんですよねー? あ、このライドっていうのどうでしょうか?」
「ん。いいんじゃない? じゃあそれで」
というわけで、三十分待ち。足が棒になりそうよ。
やっと番が来たので、カートに乗車~。水面を走る……ように見せかけた、レールを走るカートに乗って、周遊するものみたい。
「いってらっしゃーい!」
係員のおねーさんに快く送られ、いざ、夢の世界へ!
おお、白い犬のキャラクター、「ミント」くんが、お菓子作ってる! たしか、ケイティちゃんがミントくんにパーティーの招待状出したって筋書きなのよね。これは、パーティーに持っていくお菓子作りかな?
ハルちゃんも興味津々で「こういうの、初めてですー……」と、目を輝かせている。
アトラクションは進んでいき、美しくライトアップされた「夢の大樹」をぐるりと迂回し、雲の国へ! 看板キャラの「キラとラキ」がお出迎え!
ポンポンゼリーのパン焼き工房を抜け、お城ゾーンに突入! スターキャラ、総出演! そして、なんといっても目立ってるのは看板・オブ・看板、ケイティちゃん!
ハルちゃん、「うわぁ~……」と、感心・感激。
そして、記念撮影ゾーンで、記念撮影! いい思い出になるなあ。
そして、カートは一周してゴールイン。ふー、楽しかったー!
「ハルちゃん、すごく楽しそうだったね?」
「はい! こういうのほんと初めてで……あっ……」
つーっと、彼女の頬を涙が伝う。
「あらあら」
それを、ハンカチで拭いてあげる。
「すみません、なんだか」
「ずっとこういうこと、してみたかったんだもんね。わかるよ」
彼女の涙が収まるのを待ち、先ほどの記念写真をお買い上げ。うん、いい映り。
今度は、ゆっくり座って見れるアトラクションをということで、ハロウィンショーを楽しむ。
その後も色々遊んで回り、最後はパレードで締め!
キャラ総出のパレード・ショーは、とても見ごたえがありました。
帰る前にショップで、ケイティちゃんと、彼女の恋人マニュエルくんのペアマグカップを購入。うふふ、ちょっと照れくさいね。
こうして、ハルちゃん念願の、遊園地デートは叶ったのでした。
帰りの電車での、それはもう嬉しそうなハルちゃんが忘れられません。
まだ昨日のアルコールが残っていて調子が悪いけど、起き抜けに隣で目を覚ました彼女に、あえて元気に声をかける。ふたりとも、ネイキッド。つまり、昨夜はそういうことです。
「あたた……。おはよーございます」
ハルちゃんも二日酔い。底なしコンビだね。
彼女のお仕事も至極順調で、程なく生保を外れることができるでしょう。
普通は、なかなか生保を外れるというのはできない。噂の不正受給なんてほんの僅かで、ほとんどの人は、病気、障碍、年齢……そういった覆し難い理由で保護を受けているからだ。
だから、心無い自治体は水際作戦なんてやるわけだけど、それはとても人道にもとることだと、現職として思う。
まあ、暗い考えは一旦頭から追い出しましょ。本来なら、なんちゃら教室なんて日曜が書き入れどきなんだろうけど、新人にはまず慣れてもらおうということなのか、比較的楽な曜日を回してもらっているとのことで。
言い換えると、デートとかするんなら今のうち! これから、スケジュールが合わなくなること必至だろうからね。
と、いうわけで……。
「デートしよ、デート!」
「願ってもないですけど、まずはシャワー浴びません?」
「それもそだね」
というわけで、広くはない浴室で、一緒にシャワーを浴びる。触りっこなんかしたりして。あー、もう。どうしてこの子とは、こんなに波長が合うんだろう! いちゃいちゃ。
はー、さっぱりした。
「どっか、行きたいとこある?」
着替えながら質問。
「そうですねえ……あ、遊園地! 遊園地って、一度行ってみたかったんです!」
ほむほむ。このへんで一番近いとこは……。
ぽんと手を打つ。
「ピュアランドとかどう?」
「ケイティちゃんとかのですか? いいですね!」
ピュアランドは、日本が誇るファンシーキャラブランドの会社が運営するテーマパーク! そういうところで、童心に帰ってはしゃぐのも悪くない。
「よし、善は急げ! おめかししたら、行きましょ」
というわけで、さくさくメイクするのでした。
電車でゆらり揺られて目的駅へ。あとは、歩いていける距離。
お手々繋いで、きゃっきゃうふふ。
着きましたー! 外観からもう、ファンシー王国への入り口って感じ! 入場券を買い、中へ!
まずは私たち、ご飯を食べずに出てきてるので、「ハロウィンメニュー」とやらが食べられるらしい、一階のフードコートに向かう。
ここ、三階が出入り口という、ちょっと変わった構造なのです。
しかし、さすが日曜。混んでますねえ。二十分ほど待たされて、もうお腹限界!
席に着くと、さっそくメニューを物色!
「わたし、このうさちゃんのカレーにしますね」
このブランドの人気キャラの一人、「メロディア」ちゃんのカレーだ。キャラ絵が描かれたプレートが付けられている。
「じゃあ、わたしはこっちの『ポンポンゼリー』のを」
同じく、人気キャラのカレーを注文。
生活保護の身の上で、テーマパーク遊びに興じるハルちゃんを、狭量な人は贅沢と責めることだろう。だけど、私はそうは思わない。人はパンのみに生きるにあらず。文化的な生活は、法律で保証されているのだ。
ともかく、注文を伝え、出来上がるまで、ここのブランドのキャラを説明する。ハルちゃん、トップスターであるケイティちゃん以外、知らなかったみたい。
そして、番号を呼ばれ、受け取りに。かわいい~&美味しそう~。
「いただきます!」
ん! テーマパーク飯とあなどるなかれ! ここの、美味しいわ!
プレートだと思ってたのはかまぼこのようで、おいしく食べられました。食べるの、ちょっと可哀想だけどね。
いやー、お腹が空いてたものだから、二人とも、ぺろりと平げてしまいました。
レストランから出ると、パンフ片手に作戦会議。
「ハルちゃん、行きたいとこあるー?」
「んー、定番の観覧車とかジェットコースターはないんですよねー? あ、このライドっていうのどうでしょうか?」
「ん。いいんじゃない? じゃあそれで」
というわけで、三十分待ち。足が棒になりそうよ。
やっと番が来たので、カートに乗車~。水面を走る……ように見せかけた、レールを走るカートに乗って、周遊するものみたい。
「いってらっしゃーい!」
係員のおねーさんに快く送られ、いざ、夢の世界へ!
おお、白い犬のキャラクター、「ミント」くんが、お菓子作ってる! たしか、ケイティちゃんがミントくんにパーティーの招待状出したって筋書きなのよね。これは、パーティーに持っていくお菓子作りかな?
ハルちゃんも興味津々で「こういうの、初めてですー……」と、目を輝かせている。
アトラクションは進んでいき、美しくライトアップされた「夢の大樹」をぐるりと迂回し、雲の国へ! 看板キャラの「キラとラキ」がお出迎え!
ポンポンゼリーのパン焼き工房を抜け、お城ゾーンに突入! スターキャラ、総出演! そして、なんといっても目立ってるのは看板・オブ・看板、ケイティちゃん!
ハルちゃん、「うわぁ~……」と、感心・感激。
そして、記念撮影ゾーンで、記念撮影! いい思い出になるなあ。
そして、カートは一周してゴールイン。ふー、楽しかったー!
「ハルちゃん、すごく楽しそうだったね?」
「はい! こういうのほんと初めてで……あっ……」
つーっと、彼女の頬を涙が伝う。
「あらあら」
それを、ハンカチで拭いてあげる。
「すみません、なんだか」
「ずっとこういうこと、してみたかったんだもんね。わかるよ」
彼女の涙が収まるのを待ち、先ほどの記念写真をお買い上げ。うん、いい映り。
今度は、ゆっくり座って見れるアトラクションをということで、ハロウィンショーを楽しむ。
その後も色々遊んで回り、最後はパレードで締め!
キャラ総出のパレード・ショーは、とても見ごたえがありました。
帰る前にショップで、ケイティちゃんと、彼女の恋人マニュエルくんのペアマグカップを購入。うふふ、ちょっと照れくさいね。
こうして、ハルちゃん念願の、遊園地デートは叶ったのでした。
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