【R18】侯爵令嬢、断罪からオークの家畜へ―白薔薇と呼ばれた美しき姫の末路―

雪月華

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旅立ち

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 ゼラとダンは、飼育隊長に掛けあい、孕んだ私を二人で世話をするという許可を取ってくれた。

 オーク族の仔は妊娠して、たった三か月で生まれるという。

 どんどん大きくなるお腹、食べても食べても追いつかない程の食欲。

 ダンが消化の良い食べやすいものを用意してくれて、ゼラは時々甘いものをどこからか見つけて持って来てくれる。

 私たちは寝るとき以外は、三人で一緒に過ごした。
 食事も、お風呂も……そして交接するのも。

 お腹が大きくなると二穴同時はきつくなり、ゼラに貫かれながら、ダンの昂ぶりを口に咥えたり、その逆もした。



 そうして出産が近づいたある新月の晩のこと、ここに来てから初めてゼラは私に服を着せた。
 毛織物のあたたかな貫頭衣に、フード付きの外套ですっぽりと身体を隠す。

 ゼラは弓矢を背に負い、腰に剣を佩刀している。

 シンと静まり返った夜半に、真っ暗な闇の中、ゼラに抱えられて畜舎の外に出る。
 オークは暗闇でも満月の夜のように見える、暗視のスキルを持っていて躊躇なく進んで行く。

 見張りのいる門扉をさけ、裏の戸から出ようとすると。

「行くのか、ゼラ」

 後ろからダンの声がして、ゼラに緊張が走った。

「これを、持って行け」

 ダンが渡してくれたのは、希少なアイテム、隠れ蓑の衣だった。
 認識を阻害する魔道具で、隠密行動を担当する兵に貸し与えられるものだ。

「オークはひとりじゃ、生きていけない。はぐれオークの行く末は、人間に討伐されるか、魔獣に喰われるか……。おれは王に逆らって付いて行くことは出来ないが、お前たちが生き延びて、どこかで静かに暮らせることを祈っているよ」 

「すまない、ダン」


 ゼラは隠れ蓑の衣を被り私を抱え直すと、魔の森の奥深くへと一晩中駆け続けた。
 
 そのアイテムのおかげで、魔獣からも身を隠すことが出来、無事に進むことが出来た。



 白々と夜が明けるころ、ゼラは目指していた峡谷にある洞穴に辿り着いた。

 洞穴の中には、生活に必要なものが一通り置かれていた。

 私を藁ぶきのベッドに寝かせると、ゼラは洞穴の入り口を隠れ蓑の衣でふさいだ。
 こうすることで、周囲からこの場所を隠すことが出来るのだ。

「ゼラは、前もって準備していたのね」

「ああ、そうだ。シロが仔を孕んだと分かった時から、考えていた。疲れただろう、ゆっくり休め」

「誰の仔かもわからないのに……」

 静かに涙を流すと、ゼラは目じりに口を寄せ、舐め取った。

「俺たちの子供だ」

「いいの? 本当に、いいの?」

 ゼラは黙ってうなずいた。




 その日の晩、私は産気づいた。

 ゼラが一晩中腰をさすり、励ましてくれる。 

 やがて身を引き裂かれるような痛みと共に、子供たちが産まれた。

 生まれたばかりの赤ちゃんを、取り上げたゼラが見せてくれた。

 焚火の明かりで見える顔は、ゼラよりも緑肌が薄く整った顔立ちで、人間の赤ちゃんに近い気がした。

上位種ハイオークだ」

 産湯に浸からせた後、初乳を与えると力強く、痛いほど吸い付いてくる。


 何もできない私とこの二人の小さな赤ちゃんを、ゼラは守り養おうとしてくれている。

「私も、頑張るから」

 ゼラと赤ちゃんに呟いた。

 










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次回最終話 今夜更新します。
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