63 / 90
第三部 氷の異種族
第64章 最後の異種族
しおりを挟む
目を覚ますと、白い空間にいた。
どこまでも果てしてなく広がる、音も色もない空間。
そこに、僕はただ1人立ち尽くしていた。
そして、目の前にひとりの女性が現れた。
神々しい……なんて言葉じゃ足りない。彼女は美しかった。けれどそれ以上に、圧倒的な“異質”を纏っていた。
僕が口を開くより早く、彼女は静かに言った。
「私は、あなたをこの世界に送った者。それ以上でも、それ以下でもありません」
これはきっと女神だ。そう思った。
でも彼女は、そう名乗らなかった。名前も、肩書きも、何ひとつ語らない。ただその瞳だけが、僕をまっすぐ見据えていた。
そして彼女は、こう続けた。
「あなたも知っての通り、この世界では男は随分前に滅び去りました。今、この世界では生命の循環が止まり、女たちは行き場のない感情を抱えています。そして、4つの種族は緩やかに絶滅を迎えようとしています」
4つの種族。そのうちの3つは、これまでに出会ってきた種族……セイマー、サーラ、フリューゼリアだろう。
となると、あと1つ異種族が存在するのか……この世界には。
「私はこの世界を守るため、異界から男を呼びました。如何なる女にどれほど求められようと、決して壊れることのない男を選び抜いて」
それで、謎が解けた。
僕は元々、単なる無職だった。
それがなぜ、このような世界に飛ばされて……見たこともない異種族とのハーレムライフを送ることになったのか。
「……なんで、僕じゃなきゃだめだったんです?」
「この世界の女は、みな男を渇望しています。彼女たちの欲、そして子を成す交わりはとても激しい。それに耐えられる男が、必要だったのです」
「でも、僕はそんな頑丈な男じゃ…」
「いいえ。あなたはとても強い男です。あなたの本質は、『拒まないこと』と『壊れないこと』。この世界の女たちが背負う“飢え”と“渇き”にも、あなたは屈しない。むしろ、優しく受け入れる。そう思ったからこそ、私はあなたを『生殖相手』として、この世界へ招いたのです」
彼女は、まるで未来を見てきたかのように語る。
「そして……あなたが次に出会うべきは、ヴァルラーナ。この世界の、4つ目の異種族。かつて男の存在した時代に、彼と交わった女を始祖に持つ一族。彼女たちは今、“黄昏の尖塔”と呼ばれる場所に身を潜めています」
その言葉と同時に、辺りの真っ白な光景ががらりと変わり、山の中にそびえる、古びた塔が映し出された。
きっと、これがその”黄昏の尖塔”なのだろう。
「彼女たちはあなたを求め、欲しています。渇いた魂が、あなたの精を欲している。あなたがいれば、彼女たちは救われる。……さあ、行きなさい。ヴァルラーナの者たちに子を宿す、それがあなたの最後の役目……」
彼女はそう言って、微笑んだ。
けれどその微笑みはどこか寂しげで、どこまでも優しかった。
そうして、僕は目覚めた。
隣にいたヴァレリアとセリシアは既に起き出しており、僕は1人でベッドに寝ていた。
起き出し、二人に朝の挨拶とキスをした僕は、見た夢の内容を話した。
そして、次はヴァルラーナという種族の元へ行く、と言った。
「あら、ヴァルラーナに会いに行くの?……まあ、止めはしないけど……気をつけるのよ」
ヴァレリアに聞いたところ、ヴァルラーナとは俗に言う「吸血鬼」の一族の名前で、他者の血を吸って生きると共に、若さを保っているという。
彼女たちは、ここからずっと西の「嘆きの山脈」と呼ばれる山の奥にある古塔に住み着いている。
かなりの長さがあり、また背が高い木々が生い茂っているために昼間でも暗い山らしい。
「あの山にわざわざ入ろうとする者は、そうそういないわ。ましてや、その先にいるヴァルラーナ……吸血鬼に会おうとする者なんて。でも、彼女たちに会うのがあなたの運命なのなら……仕方ないわね」
「ええ。彼は、私たちだけのものじゃない…この世界の女、全員と交わる責務を背負っている。そして、彼女らでそれが最後だというなら……応援しないとね」
セリシアは僕の手を握り、「必ず帰ってきてね。そしたらまた……私たちといっぱいえっちしてね♪」と言って、キスしてきた。
もちろん、僕はそれを承諾した。
翌朝、僕は旅立った。
雪の降りしきるフリューゼリアの土地……シルヴァースノウ高原を出て、遥か西の「嘆きの山脈」へ向かうために。
出発前、ヴァレリアから「氷の勲章」というものをもらった。
これがあれば、雪の中でも寒さを感じず、迷うこともないという。
フリューゼリアの女王からもらった、愛と信頼の証。
それを手に、僕は前へ進む。
最後の異種族は、吸血鬼だという。
ちょっと怖いが、きっと大丈夫だ。
何しろ僕は、この世界の女たちの「生殖相手」なのだから。
どこまでも果てしてなく広がる、音も色もない空間。
そこに、僕はただ1人立ち尽くしていた。
そして、目の前にひとりの女性が現れた。
神々しい……なんて言葉じゃ足りない。彼女は美しかった。けれどそれ以上に、圧倒的な“異質”を纏っていた。
僕が口を開くより早く、彼女は静かに言った。
「私は、あなたをこの世界に送った者。それ以上でも、それ以下でもありません」
これはきっと女神だ。そう思った。
でも彼女は、そう名乗らなかった。名前も、肩書きも、何ひとつ語らない。ただその瞳だけが、僕をまっすぐ見据えていた。
そして彼女は、こう続けた。
「あなたも知っての通り、この世界では男は随分前に滅び去りました。今、この世界では生命の循環が止まり、女たちは行き場のない感情を抱えています。そして、4つの種族は緩やかに絶滅を迎えようとしています」
4つの種族。そのうちの3つは、これまでに出会ってきた種族……セイマー、サーラ、フリューゼリアだろう。
となると、あと1つ異種族が存在するのか……この世界には。
「私はこの世界を守るため、異界から男を呼びました。如何なる女にどれほど求められようと、決して壊れることのない男を選び抜いて」
それで、謎が解けた。
僕は元々、単なる無職だった。
それがなぜ、このような世界に飛ばされて……見たこともない異種族とのハーレムライフを送ることになったのか。
「……なんで、僕じゃなきゃだめだったんです?」
「この世界の女は、みな男を渇望しています。彼女たちの欲、そして子を成す交わりはとても激しい。それに耐えられる男が、必要だったのです」
「でも、僕はそんな頑丈な男じゃ…」
「いいえ。あなたはとても強い男です。あなたの本質は、『拒まないこと』と『壊れないこと』。この世界の女たちが背負う“飢え”と“渇き”にも、あなたは屈しない。むしろ、優しく受け入れる。そう思ったからこそ、私はあなたを『生殖相手』として、この世界へ招いたのです」
彼女は、まるで未来を見てきたかのように語る。
「そして……あなたが次に出会うべきは、ヴァルラーナ。この世界の、4つ目の異種族。かつて男の存在した時代に、彼と交わった女を始祖に持つ一族。彼女たちは今、“黄昏の尖塔”と呼ばれる場所に身を潜めています」
その言葉と同時に、辺りの真っ白な光景ががらりと変わり、山の中にそびえる、古びた塔が映し出された。
きっと、これがその”黄昏の尖塔”なのだろう。
「彼女たちはあなたを求め、欲しています。渇いた魂が、あなたの精を欲している。あなたがいれば、彼女たちは救われる。……さあ、行きなさい。ヴァルラーナの者たちに子を宿す、それがあなたの最後の役目……」
彼女はそう言って、微笑んだ。
けれどその微笑みはどこか寂しげで、どこまでも優しかった。
そうして、僕は目覚めた。
隣にいたヴァレリアとセリシアは既に起き出しており、僕は1人でベッドに寝ていた。
起き出し、二人に朝の挨拶とキスをした僕は、見た夢の内容を話した。
そして、次はヴァルラーナという種族の元へ行く、と言った。
「あら、ヴァルラーナに会いに行くの?……まあ、止めはしないけど……気をつけるのよ」
ヴァレリアに聞いたところ、ヴァルラーナとは俗に言う「吸血鬼」の一族の名前で、他者の血を吸って生きると共に、若さを保っているという。
彼女たちは、ここからずっと西の「嘆きの山脈」と呼ばれる山の奥にある古塔に住み着いている。
かなりの長さがあり、また背が高い木々が生い茂っているために昼間でも暗い山らしい。
「あの山にわざわざ入ろうとする者は、そうそういないわ。ましてや、その先にいるヴァルラーナ……吸血鬼に会おうとする者なんて。でも、彼女たちに会うのがあなたの運命なのなら……仕方ないわね」
「ええ。彼は、私たちだけのものじゃない…この世界の女、全員と交わる責務を背負っている。そして、彼女らでそれが最後だというなら……応援しないとね」
セリシアは僕の手を握り、「必ず帰ってきてね。そしたらまた……私たちといっぱいえっちしてね♪」と言って、キスしてきた。
もちろん、僕はそれを承諾した。
翌朝、僕は旅立った。
雪の降りしきるフリューゼリアの土地……シルヴァースノウ高原を出て、遥か西の「嘆きの山脈」へ向かうために。
出発前、ヴァレリアから「氷の勲章」というものをもらった。
これがあれば、雪の中でも寒さを感じず、迷うこともないという。
フリューゼリアの女王からもらった、愛と信頼の証。
それを手に、僕は前へ進む。
最後の異種族は、吸血鬼だという。
ちょっと怖いが、きっと大丈夫だ。
何しろ僕は、この世界の女たちの「生殖相手」なのだから。
2
あなたにおすすめの小説
男女比が1対100だったり貞操概念が逆転した世界にいますが会社員してます
neru
ファンタジー
30を過ぎた松田 茂人(まつだ しげひと )は男女比が1対100だったり貞操概念が逆転した世界にひょんなことから転移してしまう。
松田は新しい世界で会社員となり働くこととなる。
ちなみに、新しい世界の女性は全員高身長、美形だ。
PS.2月27日から4月まで投稿頻度が減ることを許して下さい。
↓
PS.投稿を再開します。ゆっくりな投稿頻度になってしまうかもですがあたたかく見守ってください。
男女比がおかしい世界の貴族に転生してしまった件
美鈴
ファンタジー
転生したのは男性が少ない世界!?貴族に生まれたのはいいけど、どういう風に生きていこう…?
最新章の第五章も夕方18時に更新予定です!
☆の話は苦手な人は飛ばしても問題無い様に物語を紡いでおります。
※ホットランキング1位、ファンタジーランキング3位ありがとうございます!
※カクヨム様にも投稿しております。内容が大幅に異なり改稿しております。
※各種ランキング1位を頂いた事がある作品です!
痩せる為に不人気のゴブリン狩りを始めたら人生が変わりすぎた件~痩せたらお金もハーレムも色々手に入りました~
ぐうのすけ
ファンタジー
主人公(太田太志)は高校デビューと同時に体重130キロに到達した。
食事制限とハザマ(ダンジョン)ダイエットを勧めれるが、太志は食事制限を後回しにし、ハザマダイエットを開始する。
最初は甘えていた大志だったが、人とのかかわりによって徐々に考えや行動を変えていく。
それによりスキルや人間関係が変化していき、ヒロインとの関係も変わっていくのだった。
※最初は成長メインで描かれますが、徐々にヒロインの展開が多めになっていく……予定です。
カクヨムで先行投稿中!
魔王を倒した手柄を横取りされたけど、俺を処刑するのは無理じゃないかな
七辻ゆゆ
ファンタジー
「では罪人よ。おまえはあくまで自分が勇者であり、魔王を倒したと言うのだな?」
「そうそう」
茶番にも飽きてきた。処刑できるというのなら、ぜひやってみてほしい。
無理だと思うけど。
異世界でただ美しく! 男女比1対5の世界で美形になる事を望んだ俺は戦力外で追い出されましたので自由に生きます!
石のやっさん
ファンタジー
主人公、理人は異世界召喚で異世界ルミナスにクラスごと召喚された。
クラスの人間が、優秀なジョブやスキルを持つなか、理人は『侍』という他に比べてかなり落ちるジョブだった為、魔族討伐メンバーから外され…追い出される事に!
だが、これは仕方が無い事だった…彼は戦う事よりも「美しくなる事」を望んでしまったからだ。
だが、ルミナスは男女比1対5の世界なので…まぁ色々起きます。
※私の書く男女比物が読みたい…そのリクエストに応えてみましたが、中編で終わる可能性は高いです。
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。
雑用係の回復術士、【魔力無限】なのに専属ギルドから戦力外通告を受けて追放される〜ケモ耳少女とエルフでダンジョン攻略始めたら『伝説』になった〜
霞杏檎
ファンタジー
祝【コミカライズ決定】!!
「使えん者はいらん……よって、正式にお前には戦力外通告を申し立てる。即刻、このギルドから立ち去って貰おう!! 」
回復術士なのにギルド内で雑用係に成り下がっていたフールは自身が専属で働いていたギルドから、何も活躍がないと言う理由で戦力外通告を受けて、追放されてしまう。
フールは回復術士でありながら自己主張の低さ、そして『単体回復魔法しか使えない』と言う能力上の理由からギルドメンバーからは舐められ、S級ギルドパーティのリーダーであるダレンからも馬鹿にされる存在だった。
しかし、奴らは知らない、フールが【魔力無限】の能力を持っていることを……
途方に暮れている道中で見つけたダンジョン。そこで傷ついた”ケモ耳銀髪美少女”セシリアを助けたことによって彼女はフールの能力を知ることになる。
フールに助けてもらったセシリアはフールの事を気に入り、パーティの前衛として共に冒険することを決めるのであった。
フールとセシリアは共にダンジョン攻略をしながら自由に生きていくことを始めた一方で、フールのダンジョン攻略の噂を聞いたギルドをはじめ、ダレンはフールを引き戻そうとするが、フールの意思が変わることはなかった……
これは雑用係に成り下がった【最強】回復術士フールと"ケモ耳美少女"達が『伝説』のパーティだと語られるまでを描いた冒険の物語である!
(160話で完結予定)
元タイトル
「雑用係の回復術士、【魔力無限】なのに専属ギルドから戦力外通告を受けて追放される〜でも、ケモ耳少女とエルフでダンジョン攻略始めたら『伝説』になった。噂を聞いたギルドが戻ってこいと言ってるがお断りします〜」
異世界に転移した僕、外れスキルだと思っていた【互換】と【HP100】の組み合わせで最強になる
名無し
ファンタジー
突如、異世界へと召喚された来栖海翔。自分以外にも転移してきた者たちが数百人おり、神父と召喚士から並ぶように指示されてスキルを付与されるが、それはいずれもパッとしなさそうな【互換】と【HP100】という二つのスキルだった。召喚士から外れ認定され、当たりスキル持ちの右列ではなく、外れスキル持ちの左列のほうに並ばされる来栖。だが、それらは組み合わせることによって最強のスキルとなるものであり、来栖は何もない状態から見る見る成り上がっていくことになる。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる