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第五部 異種族の頂点へ
第90章 女神
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ラヴィナの温もりがまだ体に残っている。
だが僕の意識は、気づけばまた……あの、白の空間にいた。
静謐な空間。光も音も、現実の重さもない。
ただ広がるのは、虚無のような白い世界。
そしてそこに、彼女はいた。
女神、ネフィル。
銀の髪が流星のように宙を舞い、青と金に染まった衣が宙に浮かぶように揺れている。
その背に広がる羽が、光を反射して夜空に新たな星座を描き出していた。
「……戻ってきたようですね、海斗」
深い青緑の瞳が、僕を見つめる。
その瞳の奥には、底知れない感情が揺れていた。慈愛とも渇望ともつかぬ、形を持たない感情が。
「もしかして、今までの……全部、見てたりしました?」
「ええ、もちろんです」
女神様、もといネフィルは無表情で、僕を見た。
けれど、僕はその裏にあるものを何となく感じ取った。
「女神様……あなたが望んだ世界で、僕は今、いろんなものを背負っています。命も、愛も、罪も……」
「それでいいのです。あなたは“選ばれた”存在。世界に、生命に、女たちに──与える者として」
ネフィルは静かに近づき、僕の頬に手を添えた。
その指先は月光のように冷たく、同時に、火に焼かれるような甘い熱を感じさせた。
「でも……あなたはどうなんだ?」
僕は問うた。
「あなた自身は、望まないのですか?子を……誰かとの命の交わりを」
一瞬、空気が張り詰めた。
ネフィルの瞳が微かに揺れた。
彼女の中で何かが、崩れ落ちる音が聞こえたような気がした。
「……それは、許されぬ願い」
言葉はそうだった。でもその声音は、女の吐息だった。
僕の問いが、彼女の“神ではない部分”を確かに抉ったのがわかる。
「私は……長い時を、この世界を見守る存在として在り続けました。けれど、あなたを送り出してから……私の中に“女”が目を覚ましたのです。醜く、欲深く、情けない……」
彼女の声が震えていた。
神であるはずの彼女が、自らの感情に戸惑っている。
「海斗。私は、あなたを見て、あなたに触れた女たちを見て……」
ネフィルは、まるで懺悔のように低く囁く。
「私も、欲しいのです。命を分け合う“契り”を。母となり、あなたの子を宿すという“罪”を……この身に刻みたいと、思ってしまうのです」
彼女の羽が小さく震え、その羽先からひとつの星が零れ落ちた。
それはまるで、涙のように。
「やっぱり、そうだったんですね」
「……?」
そこで、僕は本音を話した。
「あなたが、本当は……ラヴィナたちと同じく、子供を欲しがっているんじゃないかということは、薄々思ってはいました。だって、女神様だって、”女”なんですから」
すると、女神は一瞬だけとても怖い顔をした……けれど、すぐに悲しそうな顔になった。
「私は女神。みだりに世界に干渉することは、あってはならない……ましてや、異界から導いた男に欲情するなど……っ!?」
女神様の言葉を遮り、僕は彼女を抱きしめた。
「いいんですよ、素直になって」
「……海斗」
「神様だって、女は女じゃないですか。好きな男ができたって、別にいい。もちろん、女に目覚めたって、誰も文句は言わない。少なくとも、僕はそう思います」
「あなた……」
女神様は、微かに目に涙を浮かべた。
「嬉しいです。あなたに、そう言ってもらえて……私も、女になっていいのですね……」
両腕と、真っ白な翼が僕を包む。
それは、かつてのラヴィナを思い出させた。
「女神様……」
一度目を閉じてから開き、彼女は意を決して言った。
「海斗。私を……抱いてください。そして……孕ませてください♪」
だが僕の意識は、気づけばまた……あの、白の空間にいた。
静謐な空間。光も音も、現実の重さもない。
ただ広がるのは、虚無のような白い世界。
そしてそこに、彼女はいた。
女神、ネフィル。
銀の髪が流星のように宙を舞い、青と金に染まった衣が宙に浮かぶように揺れている。
その背に広がる羽が、光を反射して夜空に新たな星座を描き出していた。
「……戻ってきたようですね、海斗」
深い青緑の瞳が、僕を見つめる。
その瞳の奥には、底知れない感情が揺れていた。慈愛とも渇望ともつかぬ、形を持たない感情が。
「もしかして、今までの……全部、見てたりしました?」
「ええ、もちろんです」
女神様、もといネフィルは無表情で、僕を見た。
けれど、僕はその裏にあるものを何となく感じ取った。
「女神様……あなたが望んだ世界で、僕は今、いろんなものを背負っています。命も、愛も、罪も……」
「それでいいのです。あなたは“選ばれた”存在。世界に、生命に、女たちに──与える者として」
ネフィルは静かに近づき、僕の頬に手を添えた。
その指先は月光のように冷たく、同時に、火に焼かれるような甘い熱を感じさせた。
「でも……あなたはどうなんだ?」
僕は問うた。
「あなた自身は、望まないのですか?子を……誰かとの命の交わりを」
一瞬、空気が張り詰めた。
ネフィルの瞳が微かに揺れた。
彼女の中で何かが、崩れ落ちる音が聞こえたような気がした。
「……それは、許されぬ願い」
言葉はそうだった。でもその声音は、女の吐息だった。
僕の問いが、彼女の“神ではない部分”を確かに抉ったのがわかる。
「私は……長い時を、この世界を見守る存在として在り続けました。けれど、あなたを送り出してから……私の中に“女”が目を覚ましたのです。醜く、欲深く、情けない……」
彼女の声が震えていた。
神であるはずの彼女が、自らの感情に戸惑っている。
「海斗。私は、あなたを見て、あなたに触れた女たちを見て……」
ネフィルは、まるで懺悔のように低く囁く。
「私も、欲しいのです。命を分け合う“契り”を。母となり、あなたの子を宿すという“罪”を……この身に刻みたいと、思ってしまうのです」
彼女の羽が小さく震え、その羽先からひとつの星が零れ落ちた。
それはまるで、涙のように。
「やっぱり、そうだったんですね」
「……?」
そこで、僕は本音を話した。
「あなたが、本当は……ラヴィナたちと同じく、子供を欲しがっているんじゃないかということは、薄々思ってはいました。だって、女神様だって、”女”なんですから」
すると、女神は一瞬だけとても怖い顔をした……けれど、すぐに悲しそうな顔になった。
「私は女神。みだりに世界に干渉することは、あってはならない……ましてや、異界から導いた男に欲情するなど……っ!?」
女神様の言葉を遮り、僕は彼女を抱きしめた。
「いいんですよ、素直になって」
「……海斗」
「神様だって、女は女じゃないですか。好きな男ができたって、別にいい。もちろん、女に目覚めたって、誰も文句は言わない。少なくとも、僕はそう思います」
「あなた……」
女神様は、微かに目に涙を浮かべた。
「嬉しいです。あなたに、そう言ってもらえて……私も、女になっていいのですね……」
両腕と、真っ白な翼が僕を包む。
それは、かつてのラヴィナを思い出させた。
「女神様……」
一度目を閉じてから開き、彼女は意を決して言った。
「海斗。私を……抱いてください。そして……孕ませてください♪」
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