5年A組の三学期。

文字の大きさ
18 / 22

17 対抗八の字対決

しおりを挟む
この一ヶ月、藤花小の体育は八の字をする。
八の字は、二人で大縄を回し、その中にタイミングよく入り、一回縄を飛ぶ。それを何回続けられるか、というもの。
私たちの目標は300回だ。途中「一億回!」なんていう声もあったが、それは無視して300に決定した。
今日の五限目に体育があるので、今回は八の字をする。
私たちは体育館に向かい、館内の中央に集合した。
私たちの相手ライバルは2年B組だ。豆まきの時も戦ったし、仲良し学級でもあるから。
そんな2年生の八の字の記録は157回。これを抜かすことは、かなり難しいと思われる。
一応今の所、5年生の記録は124回だ。
これより30回多く跳ばなければならない。
今回縄を回すのは美咲とゆいと。全てはこの二人にかかっている。
私は前から四番目に並んだ。
後ろに並ぶほどプレッシャーがかかり、失敗した時に「あー……」ってなるのが嫌だったからだ。
「それでは、5分はかりまーす」
館内に先生の声が響く。5分の間何回跳べるかを数えるのだ。
ピッ、とタイマーの音が聞こえたのを確認すると、先頭のじゅりは動き始めた。
じゅりは縄が地面につくと同時に、その縄を飛び越えた。
じゅりは美咲の横を走っていく。その時二番目に並んでいたひよりが縄を跳んだ。それに続き、るみも跳ねる。
そして私の番になった。私はタイミングを見計らうと、縄が降ると同時にジャンプした。
私は安堵すると、その後の様子を眺めていた。
残りの時間まで2分ぐらいだろう。周りの掛け声では、127回だと言っていた。
二年生を抜かすまで約30回。このまま順調にいけば大丈夫だ……
「残り1分ー!!」
先生が告げた。
「150!!!」
大きな声が聞こえてきた。1分で20回跳べばいい。お願いだ、続いてくれ―
「154!!155!!156!!」
次第に声が大きくなっていく。
私の番になると、軽やかに縄を飛び越えた。次にこの試合で私が跳ぶことはない。
そして―
ピピピッ、と終わりの笛が鳴り響いた。記録は―
「162回!!!」
美咲が嬉しそうに叫んだ。
その瞬間に体育館に歓声が轟いた。
「わーい!!!!」「やったあ!!!」「うわあああ!!!!」
その時五限目終了のチャイムも鳴って、みんなは扉に貼ってある紙に記録しに行った。瞬間に列が言った。
「みんな、二年生に煽りに行こうぜ!」
私は記録するのをやめて、体育館を出て列について行った。後からあゆむも走って追いかけてきた。
私と列は夢中になって走る。二階に続く階段を駆け上り、角を曲がった。
廊下が広がるが全力で走って、二年B組の教室に到着した。B組は終わりの挨拶をしようとしていた所だったが、気にせず報告した。
「「八の字162回行った!!」」
前田先生はこっちを見て「おおー!」と声を出す。
ついでに「うぇーい」と煽った後、私と列は教室を出た。帰る途中私は列に言った。
「でも煽ったからにはこっちも頑張らなきゃあかんけどな」
「そうだな」
列は前を向いたまま返した。
実は八の字は対決ではない。自分の学年の記録が伸びたら良い、というものだ。対抗は私たちが勝手にやってるだけ。
私はいつかこの162回という記録も、更に抜かしたいなと思ったのだった。

一週間後、私達は体育のために外に出た。
外では二年ライバルが八の字を終えていた。その時前田先生から衝撃の一言が告げられた。
「ああ、五年達?172回行ったよ」
「え!?」
周囲にいた人たちは口々に驚く。私含む周囲の人達は、前田先生に言葉をぶつけた。
「ふざけんな!」「えー……」「煽られる……!!」
「違う違う」
前田先生は不満そうな私たちに向け、説得を始める。
「私たちは、五年生を抜かしたんじゃない。目標を達成したの」
二年の目標は160回だった。「目標を達成した=五年生を抜かした」ということなので、同じだろと私は思う。
五年の最高記録は162回だ。
それでも結構大変だったのに、300回なんて馬鹿げた目標だな、と加えて思った。
しおりを挟む
感想 2

あなたにおすすめの小説

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

百合ランジェリーカフェにようこそ!

楠富 つかさ
青春
 主人公、下条藍はバイトを探すちょっと胸が大きい普通の女子大生。ある日、同じサークルの先輩からバイト先を紹介してもらうのだが、そこは男子禁制のカフェ併設ランジェリーショップで!?  ちょっとハレンチなお仕事カフェライフ、始まります!! ※この物語はフィクションであり実在の人物・団体・法律とは一切関係ありません。 表紙画像はAIイラストです。下着が生成できないのでビキニで代用しています。

不思議な夏休み

廣瀬純七
青春
夏休みの初日に体が入れ替わった四人の高校生の男女が経験した不思議な話

秘められたサイズへの渇望

到冠
大衆娯楽
大きな胸であることを隠してる少女たちが、自分の真のサイズを開放して比べあうお話です。

むっつり金持ち高校生、巨乳美少女たちに囲まれて学園ハーレム

ピコサイクス
青春
顔は普通、性格も地味。 けれど実は金持ちな高校一年生――俺、朝倉健斗。 学校では埋もれキャラのはずなのに、なぜか周りは巨乳美女ばかり!? 大学生の家庭教師、年上メイド、同級生ギャルに清楚系美少女……。 真面目な御曹司を演じつつ、内心はむっつりスケベ。

敗戦国の姫は、敵国将軍に掠奪される

clayclay
恋愛
架空の国アルバ国は、ブリタニア国に侵略され、国は壊滅状態となる。 状況を打破するため、アルバ国王は娘のソフィアに、ブリタニア国使者への「接待」を命じたが……。

夫婦交換

山田森湖
恋愛
好奇心から始まった一週間の“夫婦交換”。そこで出会った新鮮なときめき

鐘ヶ岡学園女子バレー部の秘密

フロイライン
青春
名門復活を目指し厳しい練習を続ける鐘ヶ岡学園の女子バレー部 キャプテンを務める新田まどかは、身体能力を飛躍的に伸ばすため、ある行動に出るが…

処理中です...