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17 対抗八の字対決
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この一ヶ月、藤花小の体育は八の字をする。
八の字は、二人で大縄を回し、その中にタイミングよく入り、一回縄を飛ぶ。それを何回続けられるか、というもの。
私たちの目標は300回だ。途中「一億回!」なんていう声もあったが、それは無視して300に決定した。
今日の五限目に体育があるので、今回は八の字をする。
私たちは体育館に向かい、館内の中央に集合した。
私たちの相手は2年B組だ。豆まきの時も戦ったし、仲良し学級でもあるから。
そんな2年生の八の字の記録は157回。これを抜かすことは、かなり難しいと思われる。
一応今の所、5年生の記録は124回だ。
これより30回多く跳ばなければならない。
今回縄を回すのは美咲とゆいと。全てはこの二人にかかっている。
私は前から四番目に並んだ。
後ろに並ぶほどプレッシャーがかかり、失敗した時に「あー……」ってなるのが嫌だったからだ。
「それでは、5分はかりまーす」
館内に先生の声が響く。5分の間何回跳べるかを数えるのだ。
ピッ、とタイマーの音が聞こえたのを確認すると、先頭のじゅりは動き始めた。
じゅりは縄が地面につくと同時に、その縄を飛び越えた。
じゅりは美咲の横を走っていく。その時二番目に並んでいたひよりが縄を跳んだ。それに続き、るみも跳ねる。
そして私の番になった。私はタイミングを見計らうと、縄が降ると同時にジャンプした。
私は安堵すると、その後の様子を眺めていた。
残りの時間まで2分ぐらいだろう。周りの掛け声では、127回だと言っていた。
二年生を抜かすまで約30回。このまま順調にいけば大丈夫だ……
「残り1分ー!!」
先生が告げた。
「150!!!」
大きな声が聞こえてきた。1分で20回跳べばいい。お願いだ、続いてくれ―
「154!!155!!156!!」
次第に声が大きくなっていく。
私の番になると、軽やかに縄を飛び越えた。次にこの試合で私が跳ぶことはない。
そして―
ピピピッ、と終わりの笛が鳴り響いた。記録は―
「162回!!!」
美咲が嬉しそうに叫んだ。
その瞬間に体育館に歓声が轟いた。
「わーい!!!!」「やったあ!!!」「うわあああ!!!!」
その時五限目終了のチャイムも鳴って、みんなは扉に貼ってある紙に記録しに行った。瞬間に列が言った。
「みんな、二年生に煽りに行こうぜ!」
私は記録するのをやめて、体育館を出て列について行った。後からあゆむも走って追いかけてきた。
私と列は夢中になって走る。二階に続く階段を駆け上り、角を曲がった。
廊下が広がるが全力で走って、二年B組の教室に到着した。B組は終わりの挨拶をしようとしていた所だったが、気にせず報告した。
「「八の字162回行った!!」」
前田先生はこっちを見て「おおー!」と声を出す。
ついでに「うぇーい」と煽った後、私と列は教室を出た。帰る途中私は列に言った。
「でも煽ったからにはこっちも頑張らなきゃあかんけどな」
「そうだな」
列は前を向いたまま返した。
実は八の字は対決ではない。自分の学年の記録が伸びたら良い、というものだ。対抗は私たちが勝手にやってるだけ。
私はいつかこの162回という記録も、更に抜かしたいなと思ったのだった。
一週間後、私達は体育のために外に出た。
外では二年が八の字を終えていた。その時前田先生から衝撃の一言が告げられた。
「ああ、五年達?172回行ったよ」
「え!?」
周囲にいた人たちは口々に驚く。私含む周囲の人達は、前田先生に言葉をぶつけた。
「ふざけんな!」「えー……」「煽られる……!!」
「違う違う」
前田先生は不満そうな私たちに向け、説得を始める。
「私たちは、五年生を抜かしたんじゃない。目標を達成したの」
二年の目標は160回だった。「目標を達成した=五年生を抜かした」ということなので、同じだろと私は思う。
五年の最高記録は162回だ。
それでも結構大変だったのに、300回なんて馬鹿げた目標だな、と加えて思った。
八の字は、二人で大縄を回し、その中にタイミングよく入り、一回縄を飛ぶ。それを何回続けられるか、というもの。
私たちの目標は300回だ。途中「一億回!」なんていう声もあったが、それは無視して300に決定した。
今日の五限目に体育があるので、今回は八の字をする。
私たちは体育館に向かい、館内の中央に集合した。
私たちの相手は2年B組だ。豆まきの時も戦ったし、仲良し学級でもあるから。
そんな2年生の八の字の記録は157回。これを抜かすことは、かなり難しいと思われる。
一応今の所、5年生の記録は124回だ。
これより30回多く跳ばなければならない。
今回縄を回すのは美咲とゆいと。全てはこの二人にかかっている。
私は前から四番目に並んだ。
後ろに並ぶほどプレッシャーがかかり、失敗した時に「あー……」ってなるのが嫌だったからだ。
「それでは、5分はかりまーす」
館内に先生の声が響く。5分の間何回跳べるかを数えるのだ。
ピッ、とタイマーの音が聞こえたのを確認すると、先頭のじゅりは動き始めた。
じゅりは縄が地面につくと同時に、その縄を飛び越えた。
じゅりは美咲の横を走っていく。その時二番目に並んでいたひよりが縄を跳んだ。それに続き、るみも跳ねる。
そして私の番になった。私はタイミングを見計らうと、縄が降ると同時にジャンプした。
私は安堵すると、その後の様子を眺めていた。
残りの時間まで2分ぐらいだろう。周りの掛け声では、127回だと言っていた。
二年生を抜かすまで約30回。このまま順調にいけば大丈夫だ……
「残り1分ー!!」
先生が告げた。
「150!!!」
大きな声が聞こえてきた。1分で20回跳べばいい。お願いだ、続いてくれ―
「154!!155!!156!!」
次第に声が大きくなっていく。
私の番になると、軽やかに縄を飛び越えた。次にこの試合で私が跳ぶことはない。
そして―
ピピピッ、と終わりの笛が鳴り響いた。記録は―
「162回!!!」
美咲が嬉しそうに叫んだ。
その瞬間に体育館に歓声が轟いた。
「わーい!!!!」「やったあ!!!」「うわあああ!!!!」
その時五限目終了のチャイムも鳴って、みんなは扉に貼ってある紙に記録しに行った。瞬間に列が言った。
「みんな、二年生に煽りに行こうぜ!」
私は記録するのをやめて、体育館を出て列について行った。後からあゆむも走って追いかけてきた。
私と列は夢中になって走る。二階に続く階段を駆け上り、角を曲がった。
廊下が広がるが全力で走って、二年B組の教室に到着した。B組は終わりの挨拶をしようとしていた所だったが、気にせず報告した。
「「八の字162回行った!!」」
前田先生はこっちを見て「おおー!」と声を出す。
ついでに「うぇーい」と煽った後、私と列は教室を出た。帰る途中私は列に言った。
「でも煽ったからにはこっちも頑張らなきゃあかんけどな」
「そうだな」
列は前を向いたまま返した。
実は八の字は対決ではない。自分の学年の記録が伸びたら良い、というものだ。対抗は私たちが勝手にやってるだけ。
私はいつかこの162回という記録も、更に抜かしたいなと思ったのだった。
一週間後、私達は体育のために外に出た。
外では二年が八の字を終えていた。その時前田先生から衝撃の一言が告げられた。
「ああ、五年達?172回行ったよ」
「え!?」
周囲にいた人たちは口々に驚く。私含む周囲の人達は、前田先生に言葉をぶつけた。
「ふざけんな!」「えー……」「煽られる……!!」
「違う違う」
前田先生は不満そうな私たちに向け、説得を始める。
「私たちは、五年生を抜かしたんじゃない。目標を達成したの」
二年の目標は160回だった。「目標を達成した=五年生を抜かした」ということなので、同じだろと私は思う。
五年の最高記録は162回だ。
それでも結構大変だったのに、300回なんて馬鹿げた目標だな、と加えて思った。
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