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第3節 女子高生(おっさん)の日常といともたやすく行われるアオハル

78.女子高生(おっさん)を巡る戦い〈お嬢様vs御曹司〉

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 平和だった日常に遂にこの日がやって来た。
 今まで水面下で起こっていた睨み合いが、ここ最近の『新入生告白ラッシュ』により浮上し、爆発する──

〈職員室前 廊下〉

「あら、ごきげんようアシュナ。今日の放課後なのですがもしよろしければ……………」
「…………む」

 昼休み刻、たまたま廊下でテンマと出くわし……一緒に歩いて話をしていたら職員室から出てきためらぎと遭遇(エンカウント)してしまった。
 これまで、学年が違うからクラスの人間と一緒にいても滅多に出会わなかった故に……俺もめらぎとテンマが邂逅するのを目にするのは初めてだった。

 二人は出会い頭、即座に睨み合いに発展し……教師すら介入できそうもない領域展開を繰り出し舌戦を開始し始めた。

「こうしてお会いするのは初めてですわね、【鳳凰天馬】。噂には聞き及んでいましたが……どうやら無謀にもアシュナに婚姻を申し込み、無様に断られたようですわね。ざまぁねぇですわ、そんなあなたが何故まだアシュナと一緒にいるのかしら?」
「……ふっ、どうやら早目に縁談を断っておいて正解だったようだ。一層キミに出逢えたことに感謝するよアシュナ、【皇めらぎ】も俺の嫌悪する女の類のようだ。生徒会長でありながらアシュナの友人で一般生徒である俺を罵倒するとはお里が知れる」

 思わず『あわわわわ……』と言いたくなるような修羅場が職員室前で巻き起こる。人の修羅場を見るのは割と好物なひねくれたおっさんではあったが、友人の修羅場を見るのは耐え難かったので間をとりもつ。

「あの……ここ廊下だし、周りみんな怖がってるからここは……」
「そうですわね、こんな男はどうでも良いですわ。アシュナ、放課後もしよろしければ私と一緒に帰りませんこと?」
「ふっ、残念だったな。先約済みだ、アシュナは俺と共に帰る事になっている」

 そう、テンマが『学校近くに美味い焼き鳥屋がある』とおっさんの心にクリーンヒットする事を言ったので案内してもらう流れになったのだ。
 この男、学習能力が高く、金持ち坊っちゃんのくせに既に【アシュナ】の気を惹く心得を会得し始めている。恐ろしい男だ。

「アシュナが男と嬉々として帰るとは到底思えませんわね、あなたが強引すぎるが為に優しいアシュナが仕方なく付き合っているだけですわ。卑劣極まりない愚行は今すぐに止めなさい」
「ふっ、アシュナは自ら俺と共に帰る事を選択したのだ。アシュナは嫌だったらはっきりと隠さずに告げる芯のある女性だ、どうやら俺の方がアシュナの事を良く理解しているらしい」

 いや、どっちも微妙に違うし名前連呼しすぎだし恥ずかしい。
 俺があたふたしている間に二人は更にヒートアップしていく、どうにかして宥(なだ)めないと。

                   〈続く〉
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