180 / 268
第5節 女子高生(おっさん)の日常と、いとも愛しい夏休み
168.女子高生(おっさん)と陽キャ達と肝だめし
しおりを挟む『肝だめし』
それは夏定番の陽キャ達の遊戯──男が女に勇敢なところを見せるべく、吊り橋効果を狙い、いい感じになる目的のためだけに行われるイベント。
何が楽しいのかと問われると、やった事がないのでそれ位しか思い浮かばない。ていうか、どんなに頭を捻(ひね)ってもそれ以上の解答は得られないだろう。
何故ならその解答が真理だからだ。
そんな単純明快なイベントに、例の如く、何も考えていない陽(あか)るい男共に誘われたわけだが……そんな真理を手に取るようにわかっていたおっさんは、先手をとって集合場所へと赴(おもむ)いた。
「やっほー姐さん久しぶ……げっ…………ミナミさんアユミさん……? どうして姐さんと一緒に……?」
「こないだのビリヤードみたいな事があったからねぇ~、アシュナと連絡が取り合ってたんだよ~……アタシらは男だけで集まるって聞いてたのにおかしいなぁ~?」
案の定、アキラら陽キャ軍団は彼女に内緒で……男4人おっさん1人という大胆な編成での肝だめしを目論んでいやがった。
リア充の姫状態にして乱交でもするつもりだったのかこの野郎共……当然、そんなの御免なおっさんは彼女のミナミ達を同行させていたのだ。
*
〈県内 某トンネル〉
ここは地元でホラースポットとして有名な観光地近くにあるトンネル。
以前からその存在は知っていたが、特に用があるわけなし……訪れるのは勿論初めてだ。車通りから少し離れた場所にポツンと空いた穴はまるで黄泉へと誘う亡者蠢(うごめ)く深淵の闇。
近寄ると……なるほど、これは確かに出てもおかしくないと思えるような不気味な雰囲気に包まれていた。
そんなトンネルを前にして、男女の修羅場が巻き起こっているとは幽霊達も驚きだろう。
アキラらはワンチャン狙いの男共は彼女達に詰め寄られ、シバかれていた。
『生きている人間の方が恐い』とはまさしくよく言ったものだ──特に、本気を出した女の子の怖さは幽霊など裸足で逃げ出してしまうだろう。
「ごめんねアシュナー、アタシらこいつらにみっちり言いたい事があるからさ。来てもらって悪いんだけどお開きってことで……」
「あ、私はせっかくだから中に入ってみるよ。先に帰ってて」
「……ええええっ!??」
全員が一斉に同じ表情をして驚嘆する。
ここまで来てそのまま帰るのも味気ないし、せっかく来たんだから入ってみるのも乙なものだろう。
「ちょっ……アシュナやめときなって……もうじき暗くなるしバスも無くなっちゃうし……」
「ちょっと入るだけだから大丈夫だよ、一回どんなもんか見てみたかったんだ」
そう言って、俺は暗闇へと足を踏み入れる。
実はおっさんはホラー耐性を持っている。と、いうより歳を重ねて幽霊に対する恐怖心など若い時分に置いてきてしまったのだ。
一説によると……そういったものが見える感性や第六感的なものは20歳頃をピークに衰え、無くなっていくという。
そして40近くにもなると、現実に対する処理能力に全ての力を割いているため──もはや、いてもそれどころではない存在と化しているのだ。
幽霊なぞより、将来への不安や悲観にしか目がいかない……そんな現実を前に、いるかいないかわからない存在など無に等しいのだ。
つまり中年ともなると、お化け屋敷や肝だめしなどは娘でもいない限り決して行く事はなく──自然と疎遠となる。おっさん同士でそんな場所に行くやつは頭がイカれているやつしかいないだろう(※偏見です)
ただ一つだけ──そんな中年が肝だめしに行く理由があるとするなら……冒頭で述べた『女の子に対する見栄(マウント)』のみ。怖がりな女の子が隣にいれば、それだけが肝だめしに入る理由となりえよう。
でも、おっさん一人じゃんと思った方──もう一人いることを忘れるなかれ。
──『いやぁぁぁっ……!! 嫌です嫌です帰りましょうよー!!』──
幽霊からすれば、この娘の方が不可思議な存在だろう──怖がりの自分(アシュナちゃん)との楽しい肝だめしの始まりだ。
0
あなたにおすすめの小説
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。
旧校舎の地下室
守 秀斗
恋愛
高校のクラスでハブられている俺。この高校に友人はいない。そして、俺はクラスの美人女子高生の京野弘美に興味を持っていた。と言うか好きなんだけどな。でも、京野は美人なのに人気が無く、俺と同様ハブられていた。そして、ある日の放課後、京野に俺の恥ずかしい行為を見られてしまった。すると、京野はその事をバラさないかわりに、俺を旧校舎の地下室へ連れて行く。そこで、おかしなことを始めるのだったのだが……。
あるフィギュアスケーターの性事情
蔵屋
恋愛
この小説はフィクションです。
しかし、そのようなことが現実にあったかもしれません。
何故ならどんな人間も、悪魔や邪神や悪神に憑依された偽善者なのですから。
この物語は浅岡結衣(16才)とそのコーチ(25才)の恋の物語。
そのコーチの名前は高木文哉(25才)という。
この物語はフィクションです。
実在の人物、団体等とは、一切関係がありません。
JKメイドはご主人様のオモチャ 命令ひとつで脱がされて、触られて、好きにされて――
のぞみ
恋愛
「今日から、お前は俺のメイドだ。ベッドの上でもな」
高校二年生の蒼井ひなたは、借金に追われた家族の代わりに、ある大富豪の家で住み込みメイドとして働くことに。
そこは、まるでおとぎ話に出てきそうな大きな洋館。
でも、そこで待っていたのは、同じ高校に通うちょっと有名な男の子――完璧だけど性格が超ドSな御曹司、天城 蓮だった。
昼間は生徒会長、夜は…ご主人様?
しかも、彼の命令はちょっと普通じゃない。
「掃除だけじゃダメだろ? ご主人様の癒しも、メイドの大事な仕事だろ?」
手を握られるたび、耳元で囁かれるたび、心臓がバクバクする。
なのに、ひなたの体はどんどん反応してしまって…。
怒ったり照れたりしながらも、次第に蓮に惹かれていくひなた。
だけど、彼にはまだ知られていない秘密があって――
「…ほんとは、ずっと前から、私…」
ただのメイドなんかじゃ終わりたくない。
恋と欲望が交差する、ちょっぴり危険な主従ラブストーリー。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる