おっさんの俺が美少女になって高校生からやり直したら人生クッソチョロかった件

司真 緋水銀

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第5節 女子高生(おっさん)の日常と、いとも愛しい夏休み

168.女子高生(おっさん)と陽キャ達と肝だめし

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『肝だめし』

 それは夏定番の陽キャ達の遊戯──男が女に勇敢なところを見せるべく、吊り橋効果を狙い、いい感じになる目的のためだけに行われるイベント。
 何が楽しいのかと問われると、やった事がないのでそれ位しか思い浮かばない。ていうか、どんなに頭を捻(ひね)ってもそれ以上の解答は得られないだろう。

 何故ならその解答が真理だからだ。

 そんな単純明快なイベントに、例の如く、何も考えていない陽(あか)るい男共に誘われたわけだが……そんな真理を手に取るようにわかっていたおっさんは、先手をとって集合場所へと赴(おもむ)いた。

「やっほー姐さん久しぶ……げっ…………ミナミさんアユミさん……? どうして姐さんと一緒に……?」
「こないだのビリヤードみたいな事があったからねぇ~、アシュナと連絡が取り合ってたんだよ~……アタシらは男だけで集まるって聞いてたのにおかしいなぁ~?」

 案の定、アキラら陽キャ軍団は彼女に内緒で……男4人おっさん1人という大胆な編成での肝だめしを目論んでいやがった。
 リア充の姫状態にして乱交でもするつもりだったのかこの野郎共……当然、そんなの御免なおっさんは彼女のミナミ達を同行させていたのだ。




〈県内 某トンネル〉

 ここは地元でホラースポットとして有名な観光地近くにあるトンネル。
 以前からその存在は知っていたが、特に用があるわけなし……訪れるのは勿論初めてだ。車通りから少し離れた場所にポツンと空いた穴はまるで黄泉へと誘う亡者蠢(うごめ)く深淵の闇。
 近寄ると……なるほど、これは確かに出てもおかしくないと思えるような不気味な雰囲気に包まれていた。

 そんなトンネルを前にして、男女の修羅場が巻き起こっているとは幽霊達も驚きだろう。

 アキラらはワンチャン狙いの男共は彼女達に詰め寄られ、シバかれていた。
『生きている人間の方が恐い』とはまさしくよく言ったものだ──特に、本気を出した女の子の怖さは幽霊など裸足で逃げ出してしまうだろう。

「ごめんねアシュナー、アタシらこいつらにみっちり言いたい事があるからさ。来てもらって悪いんだけどお開きってことで……」
「あ、私はせっかくだから中に入ってみるよ。先に帰ってて」
「……ええええっ!??」

 全員が一斉に同じ表情をして驚嘆する。
 ここまで来てそのまま帰るのも味気ないし、せっかく来たんだから入ってみるのも乙なものだろう。

「ちょっ……アシュナやめときなって……もうじき暗くなるしバスも無くなっちゃうし……」
「ちょっと入るだけだから大丈夫だよ、一回どんなもんか見てみたかったんだ」

 そう言って、俺は暗闇へと足を踏み入れる。
 実はおっさんはホラー耐性を持っている。と、いうより歳を重ねて幽霊に対する恐怖心など若い時分に置いてきてしまったのだ。
 一説によると……そういったものが見える感性や第六感的なものは20歳頃をピークに衰え、無くなっていくという。
 そして40近くにもなると、現実に対する処理能力に全ての力を割いているため──もはや、いてもそれどころではない存在と化しているのだ。
 幽霊なぞより、将来への不安や悲観にしか目がいかない……そんな現実を前に、いるかいないかわからない存在など無に等しいのだ。

 つまり中年ともなると、お化け屋敷や肝だめしなどは娘でもいない限り決して行く事はなく──自然と疎遠となる。おっさん同士でそんな場所に行くやつは頭がイカれているやつしかいないだろう(※偏見です)

 ただ一つだけ──そんな中年が肝だめしに行く理由があるとするなら……冒頭で述べた『女の子に対する見栄(マウント)』のみ。怖がりな女の子が隣にいれば、それだけが肝だめしに入る理由となりえよう。

 でも、おっさん一人じゃんと思った方──ことを忘れるなかれ。

──『いやぁぁぁっ……!! 嫌です嫌です帰りましょうよー!!』──

 幽霊からすれば、この娘の方が不可思議な存在だろう──怖がりの自分(アシュナちゃん)との楽しい肝だめしの始まりだ。
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