184 / 268
第5節 女子高生(おっさん)の日常と、いとも愛しい夏休み
172.女子高生(おっさん)とギャルと委員長と地下ドルと養護教諭とネズミの国③
しおりを挟むその後、パーク内のあらゆるアトラクションを見たり乗ったりして回った。
食わず嫌いをしていたが……これが意外と楽しかった。中でも園内で売っていたチュロスと肉棒の美味さは筆舌に尽くしがたかった。
──『食べ物の感想じゃないですか……あと肉棒って言わないでっ』
(でも楽しいのは本当だよ、待ち時間と人混みさえなければ20年に一度くらいは来てもいいかも知れない)
──『皆既日食だってもう少し頻繁に来ますよ……』
「アシュナっち元気だねー、さすがにあたしもバテてきたよ。つーか暑すぎだよね」
「師匠は汗一つかいてませんしずっといい匂いですねー、流石っス」
懸念していた真夏の試練にも指摘されてから気づく。どうやらいつだったかキヨちゃんから貰ったギフト『自浄作用』の効果により、紫外線やらの乙女の天敵らしいものや暑さは感じても身体に害を及ぼさないようだ。意外と便利かもしれない。
「まぁでも、もう直に涼しくなってくるわよ。夕方だしね、煌花ちゃん大丈夫?」
「はいっ、ウチこんな楽しいの初めてですっ! 誘ってくれておおきにね、アシュナっ!」
「うふふ、私も久しぶりに年甲斐もなくはしゃいじゃったわ……恥ずかしいところを見せたわね」
「クラハセンセってまだ20前半っしょ? むしろアリ寄りのアリじゃん?」
「そうですよっ、自信もってください!」
「そこまで悲観したつもりもないんだけれど……そんな悪いこと言う娘はお仕置きしちゃうわよー?」
「ちがっ、励ましただけですよっ! 師匠助けて犯されるーっ!」
みんなも最初こそはぎこちなかったものの、性質的には陽寄りなメンバーはすっかり打ち解け合っていた。
そんな中で、浮かない──というか浮いているような表情をしていたのは……もはや一人だけだった。
「……いいの? 来なくて……過程はどうであれ、キミが今この風景を作ったんだよ?自分(おっさん)とばかり喋って初ディィゥ●ゥィィヌゥィーを終わらせるつもり?」
──『……でも……私…………まだ……皆さんと普通に喋れる自信が無くて……』
「少しずつでいいんだよ、駄目そうだったらすぐに交代すればいい。じゃ、代わるよ」
──『えっ!? まっ──』
………
……………『ほら、代われた。さっきみたいに拒否反応をだしてないってことは……『代わってみたい』って少なからず思ってたって事だ』
「……で……でも……ま………まだっ……心の準備がっ……」
入れ替わると、阿修凪ちゃんの焦燥──心の動悸がめちゃくちゃ速くなるのがおっさんに伝わってきた。
焦り、混乱、恐怖……逃げたいという気持ちがひしひしと流れ込んでくる──どうやら『中』に入ると『外』を司(つかさど)る主人格の感情や感覚がまるで液体のように注入されてくるらしい。
マジで『おS●X』みたいである。
どうやら『中』側の心の内は『外』側人格に伝わらないようでいやらしい事を考えても阿修凪ちゃんは反応しなかった。
──『あぁ……阿修凪ちゃんの中、あったかいなりぃ……』
「………」
セクハラにも反応しない、どうやら相当に追い込まれているらしい。
昔の自分を見ているようで少し罪悪感を覚えるが──これから先の未来を考えれば、彼女とここで交代するわけにはいかない。
──『阿修凪ちゃん、俺がおっさんになって唯一得た教訓を一つ、教えてあげよう』
「な……なんですか……?」
──『将来の自分に嫌な事を押し付けない方がいい──マジで後悔する、いや、後悔しかしない。おっさんも同じだった……学生時代に逃げた事や後回しにした事が何十倍の苦労にもなっておっさんにまわってきて──その結果、おっさんみたいな哀しきモンスターが産まれてしまったのだ』
これ程の説得力をもつ言葉は他にあるまい、別世界だけど……未来の哀れな姿による自分からの助言だ。
何年後かの自分に責を押し付ければ、確かに今は楽になるだろう。
しかし、それは本当に先延ばしにしかならず……やはり問題は手遅れになる前にクリアしなければ後々に肥大化して襲いかかってくる──骨身に沁(し)みて理解できたおっさんの体験談だ。
「………………………」
それを聞いても、阿修凪ちゃんは固い表情を崩さない。だが……彼女の心は隠しようもなく、おっさんへと伝わってくる──その感情は……
「……おじさん、そんなダメなおじさんからのアドバイスで……私が変われると思いますか?」
静かな──それでいて、とても熱い『決意』だった。
「──だから、私は変わります。証明してみせます。おじさんのいた未来のことは私はわかりませんけど………私はおじさんがダメな人だなんて思いませんから。だから変わって見せます。そうすれば……おじさんも自分がそんなにダメな人間じゃないって思えますよね?」
阿修凪ちゃんはそう言って、ミクミク達のつくる輪の中へと足を踏み出した。
0
あなたにおすすめの小説
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。
旧校舎の地下室
守 秀斗
恋愛
高校のクラスでハブられている俺。この高校に友人はいない。そして、俺はクラスの美人女子高生の京野弘美に興味を持っていた。と言うか好きなんだけどな。でも、京野は美人なのに人気が無く、俺と同様ハブられていた。そして、ある日の放課後、京野に俺の恥ずかしい行為を見られてしまった。すると、京野はその事をバラさないかわりに、俺を旧校舎の地下室へ連れて行く。そこで、おかしなことを始めるのだったのだが……。
あるフィギュアスケーターの性事情
蔵屋
恋愛
この小説はフィクションです。
しかし、そのようなことが現実にあったかもしれません。
何故ならどんな人間も、悪魔や邪神や悪神に憑依された偽善者なのですから。
この物語は浅岡結衣(16才)とそのコーチ(25才)の恋の物語。
そのコーチの名前は高木文哉(25才)という。
この物語はフィクションです。
実在の人物、団体等とは、一切関係がありません。
JKメイドはご主人様のオモチャ 命令ひとつで脱がされて、触られて、好きにされて――
のぞみ
恋愛
「今日から、お前は俺のメイドだ。ベッドの上でもな」
高校二年生の蒼井ひなたは、借金に追われた家族の代わりに、ある大富豪の家で住み込みメイドとして働くことに。
そこは、まるでおとぎ話に出てきそうな大きな洋館。
でも、そこで待っていたのは、同じ高校に通うちょっと有名な男の子――完璧だけど性格が超ドSな御曹司、天城 蓮だった。
昼間は生徒会長、夜は…ご主人様?
しかも、彼の命令はちょっと普通じゃない。
「掃除だけじゃダメだろ? ご主人様の癒しも、メイドの大事な仕事だろ?」
手を握られるたび、耳元で囁かれるたび、心臓がバクバクする。
なのに、ひなたの体はどんどん反応してしまって…。
怒ったり照れたりしながらも、次第に蓮に惹かれていくひなた。
だけど、彼にはまだ知られていない秘密があって――
「…ほんとは、ずっと前から、私…」
ただのメイドなんかじゃ終わりたくない。
恋と欲望が交差する、ちょっぴり危険な主従ラブストーリー。
隣に住んでいる後輩の『彼女』面がガチすぎて、オレの知ってるラブコメとはかなり違う気がする
夕姫
青春
【『白石夏帆』こいつには何を言っても無駄なようだ……】
主人公の神原秋人は、高校二年生。特別なことなど何もない、静かな一人暮らしを愛する少年だった。東京の私立高校に通い、誰とも深く関わらずただ平凡に過ごす日々。
そんな彼の日常は、ある春の日、突如現れた隣人によって塗り替えられる。後輩の白石夏帆。そしてとんでもないことを言い出したのだ。
「え?私たち、付き合ってますよね?」
なぜ?どうして?全く身に覚えのない主張に秋人は混乱し激しく否定する。だが、夏帆はまるで聞いていないかのように、秋人に猛烈に迫ってくる。何を言っても、どんな態度をとっても、その鋼のような意思は揺るがない。
「付き合っている」という謎の確信を持つ夏帆と、彼女に振り回されながらも憎めない(?)と思ってしまう秋人。これは、一人の後輩による一方的な「好き」が、平凡な先輩の日常を侵略する、予測不能な押しかけラブコメディ。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる