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第5節 女子高生(おっさん)の日常と、いとも愛しい夏休み

おまけ.女子高生(おっさん)の残夏~『アオクと世界線』③

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-2004/08/23 22:13-
-2004/08/23 23:25-
-2004/08/24 00:00- 
-〈多世界code『luck0085536995443』→→→→→『unl03612445891445652』〉-
-junction-
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…………〈connect〉

 微睡(まどろ)み夢見心地の感覚に陥ると、暗闇の視界の中にまるでマトリ●クスの世界のような……グリーンモニターに様々な緑文字のコマンドプロトコルが流れ出す画面へと移った。
 随分と現実的だな……と、はっきりとしていながらもふわふわと漂っているような意識の中でそれを眺めていた瞬間──爆ぜるような目映(まばゆ)い光と共に景色がホワイトアウトしていく。

〈connect〉
〈connect〉
〈connect……………〉

────【2000/8/16 波澄阿修羅】────

(──ここは………)

 次に瞳に写ったのは……同じ部屋だった。
 いや、微妙に違う。
 今の部屋よりも若干家具などが新しく……壁紙も白さを増している。
 ブラウン管テレビ、初めて持ったガラケー、買い換える前の古いエアコン。

 直ぐには脳が理解できなかったが……間違いない。
 アシュナの時代よりも少しだけ時を遡(さかのぼ)っている。

「……しかも……これ……」

 体にも違和感を覚え、手を伸ばしてみると──視線に映ったのは美白で華奢(きゃしゃ)とは違った意味での不健康な細腕だった。

 男(アシュラ)に戻っていた。
 かつて30年来を共にした、大嫌いながらも愛着がある自分の体に。
 夢の中なのに現実に引き戻されたような矛盾した感覚も相まってなんとも形容し難い気持ちになる。

「いや……でも……」

 辺りを見回したのちにふと違和感に気付く。
 自分の視点がのだ。

 一つは──元の、この部屋の住人の視点……つまり、波澄阿修羅(おれ)だ。
 そして、

 一人称視点と三人称視点とを同時に見ているような奇妙な感覚。夢特有の……自分の体でありながら、それを俯瞰(ふかん)しているような感覚のそれだと何となく脳が理解した。

「なるほど……だからVRであり、夢なのか……」

 本当にこれが『違う世界線の俺』──もとい、タイムリープする以前の世界なのかはわからないが……とりあえず何かしらのアクションを起こそうとすると内から声が届いた。

──『ここが……おじさんのいた違う世界……夢を見てるような変な感覚ですね……』

──{ほっほっ、どうやら上手くいったようじゃな}

 阿修凪ちゃんもどうやら別世界へのジャンクションに成功したようだ。そして何故かキヨちゃんもついてきていた。

──{初回のみのサービス仕様じゃ。不明な点があれば聞くが良いぞ}

「不明な点しかないけど……とりあえず俺は元に戻ったってことでいいの?」

──{戻ったのではないわい。あくまで一時的な憑依──この世界での阿修羅の精神を強制的に眠らせ、その間のみに体を動かせるだけじゃ。阿修羅が目を覚ませば強制的に追い出される}

「なるほど……」

──『でも、これはおじさんの過去……なんですよね?変な事をしたら未来が変わってしまうのでは……』

──{そうはならん。お主らの認識しておるタイムパラドクスというのは実際には存在せん。ここでどんな行動をしようが、だけ……つまり、分岐した世界に移行する。中年のお主の人格が形成される世界線はもう確定されておるのでなにかに左右される事はない}

 じゃあ仮にここで俺が死んでも……『俺がいない世界』が創られるだけで今の俺に影響はないわけだ。
 まぁ、滅多な事をするつもりはなかったけどね。なにかあったら怖いから。

「じゃあ早速……」

──『……えっ……? きゃぁぁぁぁぁっ!?』

 俺の起こした行動に、阿修凪ちゃんが悲鳴をあげた。

 男に戻ったら真っ先にやりたかった事……『亡き息子』を『愛でる』ことだ。
 言っておくが、これはセクハラではない。
『亡き息子』を『愛でる』だけなのだから。
 その光景を目撃しているのは『神様』と『自分』だけだし……約一年ぶりの解禁とあっては神様もお赦(ゆる)しになってくれるだろう。

──{いや……まぁ……好きにすればよいが……}

──『久しぶりに体に戻って最初にすることがそれなんですかっ!!? てっきり【アオク】を聴くようになったきっかけとか見れると思ってたのにぃっ!』

「いや、今は体験(おまけ)の時(はなし)だから……それはいずれ本編で……」

──『なにわけのわからない事言ってっ…………それっ……しまってくださっ…………………!!』

──{指の隙間から食い入るように見とるではないか。世界が違ってもやはり阿修羅じゃのう……}

──『ちっ……違っ……!!』

「残念、その反応でさらに捗(はかど)る」

──『もうっ……おじさんのえっち!!』

 結局、愛で終わったら俺(アシュラ)が目覚めてしまい……記念すべき初世界線移動はそれだけで終わってしまったが、今までのどの日よりもスッキリとした朝を迎えた。
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