37 / 101
第三十七話 ドアノック
しおりを挟む
事務職のFさんは地方で行われた友人の結婚式に出席した。
披露宴の後の二次会では少しテンションが上がりすぎ、だいぶ酔っ払ってしまった。
幸いなことに二次会自体はホテル内の宴会場で行われ、飲んだ後はそのまま新郎新婦が予約してくれたホテルの部屋で泊まることができる。
「あー、酔っ払っちゃった……」
友人はそこそこの旦那を捕まえたというのに、自分は前の彼氏と別れてもう数年になる。自分だけが取り残されたような気がして、寂しくなって二次会で飲み過ぎてしまった。
歩くのもおぼつかなくなってきていたため、一緒に来ていたもう1人の友人のRさんの肩を借りて、ホテルの自室まで連れてきてもらったのだ。
Rさんが隣の部屋だったので助かった。
化粧を落として、この日のためにおめかしした服も脱いで、というところまではまだできたが、それ以降はもう限界だった。
ほとんど下着姿でベッドに横たわる。
へべれけに酔っていたので眠りがすぐ訪れるだろうと思っていた。
ところが、音がする。
コンコンコンッ、コンッ!
ドアをノックする音だ。
「ええ? 何なのよ……」
アルコールが全く抜けていないFさんだが渋々ベッドを降り、ホテルの部屋に備え付けのガウンを羽織ってドアの方へ向かった。
ドアを少しだけ開けて外の様子をうかがうが、廊下には誰もいない。
酔っ払いが、部屋を間違えたのか? Fさんは自分を棚に上げてそう思った。
ともかく、誰もいないのならば寝よう。
そう思って再びベッドに入る。
しかしまた音がする。
コンコンコンッ、コンッ!
3回と1回の組み合わせのノックだ。
あまり聞いたことがないノックのリズムを何人もの人がやっているとも思えない。そもそも深夜である。
異常に気がつかずにFさんはノックを無視して寝ようと思った。
しかし少し時間が経つと、またノックの音がする。
コンコンコンッ、コンッ!
リズムが同じなので、間違いなく同じ人がやっている。
そう思ったら腹が立ってきて、Fさんは再びベッドから出てドアへ向かった。
今度はドアスコープから外を見ても誰もいない。
「どういうこと、そんなに暇な奴が……」
ベッドに潜り込んだFさんだが、さすがに普通の人間がやっていることとは考えづらくなってきた。
眠気はピークに達しつつあったが、頭のわずかに働いている部分でFさんは考えた。
これは前に都市伝説か何かで聞いた、ノックする幽霊の話ではないか?
詳細は忘れたが、部屋の外から霊がノックしているのかと思っていたら、実は霊がすでに中にいて、中から外に向かってノックしていたという内容だったと思う。
まさかこの霊も、すでに中にいて、中からノックしているのでは?
そう考えてFさんは戦慄を覚えないでもなかったが、このとき眠気の方が勝っていた。
安眠を妨害されたくない。その一心でFさんはドアの方へ向かう。
そして鍵を開け、チェーンも外した。
「どうぞご自由に、出て行ってください。私は気にしません」
いるかわからない霊に対して宣言し、Fさんは今度こそベッドに入った。誰が入ってこようが関係なかった。
その大胆さが功を奏したのか、Fさんが次に目を覚ましたときには朝になっていた。
酔いも抜けて思ったより爽やかに起きられたFさん。朝食をホテルバイキングで取ろうとしていると、隣の部屋のRさんに会った。
見ると目の下にクマができている。
「どうしたの、なんか、調子悪そうだけど」
「うん……なんか、眠れなくって」
Rさんが眠れなかった理由が気にならないでもないが、Fさんはあえて尋ねなかった。
「あのとき鍵を開けておいてよかったです。閉めたままだとどうなっていたかわかりませんから」
この話をしてくれたときもFさんは爽やかな顔をしていた。ただ、彼氏は相変わらずできていないらしい。
披露宴の後の二次会では少しテンションが上がりすぎ、だいぶ酔っ払ってしまった。
幸いなことに二次会自体はホテル内の宴会場で行われ、飲んだ後はそのまま新郎新婦が予約してくれたホテルの部屋で泊まることができる。
「あー、酔っ払っちゃった……」
友人はそこそこの旦那を捕まえたというのに、自分は前の彼氏と別れてもう数年になる。自分だけが取り残されたような気がして、寂しくなって二次会で飲み過ぎてしまった。
歩くのもおぼつかなくなってきていたため、一緒に来ていたもう1人の友人のRさんの肩を借りて、ホテルの自室まで連れてきてもらったのだ。
Rさんが隣の部屋だったので助かった。
化粧を落として、この日のためにおめかしした服も脱いで、というところまではまだできたが、それ以降はもう限界だった。
ほとんど下着姿でベッドに横たわる。
へべれけに酔っていたので眠りがすぐ訪れるだろうと思っていた。
ところが、音がする。
コンコンコンッ、コンッ!
ドアをノックする音だ。
「ええ? 何なのよ……」
アルコールが全く抜けていないFさんだが渋々ベッドを降り、ホテルの部屋に備え付けのガウンを羽織ってドアの方へ向かった。
ドアを少しだけ開けて外の様子をうかがうが、廊下には誰もいない。
酔っ払いが、部屋を間違えたのか? Fさんは自分を棚に上げてそう思った。
ともかく、誰もいないのならば寝よう。
そう思って再びベッドに入る。
しかしまた音がする。
コンコンコンッ、コンッ!
3回と1回の組み合わせのノックだ。
あまり聞いたことがないノックのリズムを何人もの人がやっているとも思えない。そもそも深夜である。
異常に気がつかずにFさんはノックを無視して寝ようと思った。
しかし少し時間が経つと、またノックの音がする。
コンコンコンッ、コンッ!
リズムが同じなので、間違いなく同じ人がやっている。
そう思ったら腹が立ってきて、Fさんは再びベッドから出てドアへ向かった。
今度はドアスコープから外を見ても誰もいない。
「どういうこと、そんなに暇な奴が……」
ベッドに潜り込んだFさんだが、さすがに普通の人間がやっていることとは考えづらくなってきた。
眠気はピークに達しつつあったが、頭のわずかに働いている部分でFさんは考えた。
これは前に都市伝説か何かで聞いた、ノックする幽霊の話ではないか?
詳細は忘れたが、部屋の外から霊がノックしているのかと思っていたら、実は霊がすでに中にいて、中から外に向かってノックしていたという内容だったと思う。
まさかこの霊も、すでに中にいて、中からノックしているのでは?
そう考えてFさんは戦慄を覚えないでもなかったが、このとき眠気の方が勝っていた。
安眠を妨害されたくない。その一心でFさんはドアの方へ向かう。
そして鍵を開け、チェーンも外した。
「どうぞご自由に、出て行ってください。私は気にしません」
いるかわからない霊に対して宣言し、Fさんは今度こそベッドに入った。誰が入ってこようが関係なかった。
その大胆さが功を奏したのか、Fさんが次に目を覚ましたときには朝になっていた。
酔いも抜けて思ったより爽やかに起きられたFさん。朝食をホテルバイキングで取ろうとしていると、隣の部屋のRさんに会った。
見ると目の下にクマができている。
「どうしたの、なんか、調子悪そうだけど」
「うん……なんか、眠れなくって」
Rさんが眠れなかった理由が気にならないでもないが、Fさんはあえて尋ねなかった。
「あのとき鍵を開けておいてよかったです。閉めたままだとどうなっていたかわかりませんから」
この話をしてくれたときもFさんは爽やかな顔をしていた。ただ、彼氏は相変わらずできていないらしい。
0
あなたにおすすめの小説
意味が分かると怖い話(解説付き)
彦彦炎
ホラー
一見普通のよくある話ですが、矛盾に気づけばゾッとするはずです
読みながら話に潜む違和感を探してみてください
最後に解説も載せていますので、是非読んでみてください
実話も混ざっております
【⁉】意味がわかると怖い話【解説あり】
絢郷水沙
ホラー
普通に読めばそうでもないけど、よく考えてみたらゾクッとする、そんな怖い話です。基本1ページ完結。
下にスクロールするとヒントと解説があります。何が怖いのか、ぜひ推理しながら読み進めてみてください。
※全話オリジナル作品です。
【電子書籍化】ホラー短編集・ある怖い話の記録~旧 2ch 洒落にならない怖い話風 現代ホラー~
榊シロ
ホラー
【1~4話で完結する、語り口調の短編ホラー集】
ジャパニーズホラー、じわ怖、身近にありそうな怖い話など。
八尺様 や リアルなど、2chの 傑作ホラー の雰囲気を目指しています。現在 150話 越え。
===
エブリスタ・小説家になろう・カクヨムに同時掲載中
【総文字数 800,000字 超え 文庫本 約8冊分 のボリュームです】
【怖さレベル】
★☆☆ 微ホラー・ほんのり程度
★★☆ ふつうに怖い話
★★★ 旧2ch 洒落怖くらいの話
※8/2 Kindleにて電子書籍化しました
『9/27 名称変更→旧:ある雑誌記者の記録』
それなりに怖い話。
只野誠
ホラー
これは創作です。
実際に起きた出来事はございません。創作です。事実ではございません。創作です創作です創作です。
本当に、実際に起きた話ではございません。
なので、安心して読むことができます。
オムニバス形式なので、どの章から読んでも問題ありません。
不定期に章を追加していきます。
2026/2/6:『きんようび』の章を追加。2026/2/13の朝頃より公開開始予定。
2026/2/5:『かれー』の章を追加。2026/2/12の朝頃より公開開始予定。
2026/2/4:『あくむ』の章を追加。2026/2/11の朝頃より公開開始予定。
2026/2/3:『つりいと』の章を追加。2026/2/10の朝頃より公開開始予定。
2026/2/2:『おばあちゃん』の章を追加。2026/2/9の朝頃より公開開始予定。
2026/2/1:『かんしかめら』の章を追加。2026/2/8の朝頃より公開開始予定。
2026/1/31:『うしろ』の章を追加。2026/2/7の朝頃より公開開始予定。
※こちらの作品は、小説家になろう、カクヨム、アルファポリスで同時に掲載しています。
(ほぼ)1分で読める怖い話
涼宮さん
ホラー
ほぼ1分で読める怖い話!
【ホラー・ミステリーでTOP10入りありがとうございます!】
1分で読めないのもあるけどね
主人公はそれぞれ別という設定です
フィクションの話やノンフィクションの話も…。
サクサク読めて楽しい!(矛盾してる)
⚠︎この物語で出てくる場所は実在する場所とは全く関係御座いません
⚠︎他の人の作品と酷似している場合はお知らせください
皆さんは呪われました
禰津エソラ
ホラー
あなたは呪いたい相手はいますか?
お勧めの呪いがありますよ。
効果は絶大です。
ぜひ、試してみてください……
その呪いの因果は果てしなく絡みつく。呪いは誰のものになるのか。
最後に残るのは誰だ……
ヴァルプルギスの夜~ライター月島楓の事件簿
加来 史吾兎
ホラー
K県華月町(かげつちょう)の外れで、白装束を着させられた女子高生の首吊り死体が発見された。
フリーライターの月島楓(つきしまかえで)は、ひょんなことからこの事件の取材を任され、華月町出身で大手出版社の編集者である小野瀬崇彦(おのせたかひこ)と共に、山奥にある華月町へ向かう。
華月町には魔女を信仰するという宗教団体《サバト》の本拠地があり、事件への関与が噂されていたが警察の捜査は難航していた。
そんな矢先、華月町にまつわる伝承を調べていた女子大生が行方不明になってしまう。
そして魔の手は楓の身にも迫っていた──。
果たして楓と小野瀬は小さな町で巻き起こる事件の真相に辿り着くことができるのだろうか。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる