49 / 101
第四十九話 煽り運転の果てに
しおりを挟む
Bさんが助手席に妻を乗せて山道を車で運転しているときに、後ろから煽られたという。
日中に森林浴をして、その帰宅途中のことだった。
相手の車は車間距離を必要以上に詰め、パッシングライトを連発してくる。
Bさんがまこうとして急に曲がっても、すぐ後ろを着いてきて引き離すことができない。
路肩に停車したら相手の車も停まる。割と大きめのセダンだ。
どうも乗っているのは中年男性のようだった。眼鏡をかけ、髪が薄い。
「ねえ、あれやばいよ」
妻が怯えたような声を出す。Bさん自身も少し恐怖を感じ始めた。
「うーん、もう少し行くと確か車を停められるスペースがあったと思う。そこであいつも停まったら文句言ってやろう」
わずかな記憶を頼りにそこへ急ぐことにする。
後ろの車は離れずに着いてくる。
薄暮の時間帯で明かりも乏しい山道。煽られながらそこそこのスピードが出ているため、見つけたらすぐに入る必要があった。
そして前方左側に駐車スペースが見えた。
「よし、あそこに入ろう」
慌てて左折する。後ろの車の動きをちらりと見ると、向こうも追随して駐車スペースに入ってきた。
「来たな、停まったら俺は降りて話してくるから、警察に通報する準備だけはしといてくれ」
「う、うん、わかった」
妻に伝えてBさんはシートベルトを外し、降りる準備をする。
相手の車は白線のラインの中に入らず、入口付近でそのまま停まっている。
「なんで、あんなところで……俺が向かっていったら逃げるつもりか」
相手が入ってこないのは自分を驚異に感じているからだと解釈した。俄然強気になったBさんは相手の車に歩み寄る。
「あ?」
運転席には誰の姿もなかった。
ここに来るまでに相手の運転席をバックミラー越しに見ていた。そこには中年の男性の姿が映っていたはずだった。
それが今は跡形もない。Bさんが車を停めている間に、自分は車を置いてどこかに逃げたのだろうか。
Bさんはふと気がついた。
後部座席に何かある。ブルーシートにくるまれている何かが。
ちょうど後部座席に寝ている人をシートでくるむと、このようになるだろうという大きさだ。
嫌な予感がしながらも、Bさんは車の後部座席のドアに手をかけた。
そして引く。
開いた。
鍵がかかっていなかったのだ。
ドアが開き、むっとするような臭いがBさんの鼻を襲う。
それでも気になる気持ちは抑えられなかった。
Bさんはブルーシートに手をかけ、引っ張った。
「わあっ!」
中から出てきたのは、焼け焦げた人間の遺体だった。
全身が黒く焦げ、肉がほとんど残っていない。骨が崩れていないために人間の形を保っていた。
Bさんが見られたのはそこまでだった。
脱兎のごとくドアをそのままにして自分の車に逃げ戻る。
「どうしたの、あの人はいなかったの」
妻は慌てた様子のBさんに問いかけるが、Bさんは答えずに車を出発させた。
あまりにわけがわからなかったため、Bさんは警察にも通報しなかった。
その後も、山道で車から遺体が見つかったというニュースは聴かれなかったという。
日中に森林浴をして、その帰宅途中のことだった。
相手の車は車間距離を必要以上に詰め、パッシングライトを連発してくる。
Bさんがまこうとして急に曲がっても、すぐ後ろを着いてきて引き離すことができない。
路肩に停車したら相手の車も停まる。割と大きめのセダンだ。
どうも乗っているのは中年男性のようだった。眼鏡をかけ、髪が薄い。
「ねえ、あれやばいよ」
妻が怯えたような声を出す。Bさん自身も少し恐怖を感じ始めた。
「うーん、もう少し行くと確か車を停められるスペースがあったと思う。そこであいつも停まったら文句言ってやろう」
わずかな記憶を頼りにそこへ急ぐことにする。
後ろの車は離れずに着いてくる。
薄暮の時間帯で明かりも乏しい山道。煽られながらそこそこのスピードが出ているため、見つけたらすぐに入る必要があった。
そして前方左側に駐車スペースが見えた。
「よし、あそこに入ろう」
慌てて左折する。後ろの車の動きをちらりと見ると、向こうも追随して駐車スペースに入ってきた。
「来たな、停まったら俺は降りて話してくるから、警察に通報する準備だけはしといてくれ」
「う、うん、わかった」
妻に伝えてBさんはシートベルトを外し、降りる準備をする。
相手の車は白線のラインの中に入らず、入口付近でそのまま停まっている。
「なんで、あんなところで……俺が向かっていったら逃げるつもりか」
相手が入ってこないのは自分を驚異に感じているからだと解釈した。俄然強気になったBさんは相手の車に歩み寄る。
「あ?」
運転席には誰の姿もなかった。
ここに来るまでに相手の運転席をバックミラー越しに見ていた。そこには中年の男性の姿が映っていたはずだった。
それが今は跡形もない。Bさんが車を停めている間に、自分は車を置いてどこかに逃げたのだろうか。
Bさんはふと気がついた。
後部座席に何かある。ブルーシートにくるまれている何かが。
ちょうど後部座席に寝ている人をシートでくるむと、このようになるだろうという大きさだ。
嫌な予感がしながらも、Bさんは車の後部座席のドアに手をかけた。
そして引く。
開いた。
鍵がかかっていなかったのだ。
ドアが開き、むっとするような臭いがBさんの鼻を襲う。
それでも気になる気持ちは抑えられなかった。
Bさんはブルーシートに手をかけ、引っ張った。
「わあっ!」
中から出てきたのは、焼け焦げた人間の遺体だった。
全身が黒く焦げ、肉がほとんど残っていない。骨が崩れていないために人間の形を保っていた。
Bさんが見られたのはそこまでだった。
脱兎のごとくドアをそのままにして自分の車に逃げ戻る。
「どうしたの、あの人はいなかったの」
妻は慌てた様子のBさんに問いかけるが、Bさんは答えずに車を出発させた。
あまりにわけがわからなかったため、Bさんは警察にも通報しなかった。
その後も、山道で車から遺体が見つかったというニュースは聴かれなかったという。
0
あなたにおすすめの小説
意味が分かると怖い話(解説付き)
彦彦炎
ホラー
一見普通のよくある話ですが、矛盾に気づけばゾッとするはずです
読みながら話に潜む違和感を探してみてください
最後に解説も載せていますので、是非読んでみてください
実話も混ざっております
【電子書籍化】ホラー短編集・ある怖い話の記録~旧 2ch 洒落にならない怖い話風 現代ホラー~
榊シロ
ホラー
【1~4話で完結する、語り口調の短編ホラー集】
ジャパニーズホラー、じわ怖、身近にありそうな怖い話など。
八尺様 や リアルなど、2chの 傑作ホラー の雰囲気を目指しています。現在 150話 越え。
===
エブリスタ・小説家になろう・カクヨムに同時掲載中
【総文字数 800,000字 超え 文庫本 約8冊分 のボリュームです】
【怖さレベル】
★☆☆ 微ホラー・ほんのり程度
★★☆ ふつうに怖い話
★★★ 旧2ch 洒落怖くらいの話
※8/2 Kindleにて電子書籍化しました
『9/27 名称変更→旧:ある雑誌記者の記録』
意味がわかると怖い話
邪神 白猫
ホラー
【意味がわかると怖い話】解説付き
基本的には読めば誰でも分かるお話になっていますが、たまに激ムズが混ざっています。
※完結としますが、追加次第随時更新※
YouTubeにて、朗読始めました(*'ω'*)
お休み前や何かの作業のお供に、耳から読書はいかがですか?📕
https://youtube.com/@yuachanRio
それなりに怖い話。
只野誠
ホラー
これは創作です。
実際に起きた出来事はございません。創作です。事実ではございません。創作です創作です創作です。
本当に、実際に起きた話ではございません。
なので、安心して読むことができます。
オムニバス形式なので、どの章から読んでも問題ありません。
不定期に章を追加していきます。
2026/2/6:『きんようび』の章を追加。2026/2/13の朝頃より公開開始予定。
2026/2/5:『かれー』の章を追加。2026/2/12の朝頃より公開開始予定。
2026/2/4:『あくむ』の章を追加。2026/2/11の朝頃より公開開始予定。
2026/2/3:『つりいと』の章を追加。2026/2/10の朝頃より公開開始予定。
2026/2/2:『おばあちゃん』の章を追加。2026/2/9の朝頃より公開開始予定。
2026/2/1:『かんしかめら』の章を追加。2026/2/8の朝頃より公開開始予定。
2026/1/31:『うしろ』の章を追加。2026/2/7の朝頃より公開開始予定。
※こちらの作品は、小説家になろう、カクヨム、アルファポリスで同時に掲載しています。
(ほぼ)1分で読める怖い話
涼宮さん
ホラー
ほぼ1分で読める怖い話!
【ホラー・ミステリーでTOP10入りありがとうございます!】
1分で読めないのもあるけどね
主人公はそれぞれ別という設定です
フィクションの話やノンフィクションの話も…。
サクサク読めて楽しい!(矛盾してる)
⚠︎この物語で出てくる場所は実在する場所とは全く関係御座いません
⚠︎他の人の作品と酷似している場合はお知らせください
怪蒐師
糸世朔
ホラー
第8回ホラー•ミステリー大賞で優秀賞を受賞しました。ありがとうございました!
●あらすじ
『階段をのぼるだけで一万円』
大学二年生の間宮は、同じ学部にも関わらず一度も話したことすらない三ツ橋に怪しげなアルバイトを紹介される。
三ツ橋に連れて行かれたテナントビルの事務所で出迎えたのは、イスルギと名乗る男だった。
男は言った。
ーー君の「階段をのぼるという体験」を買いたいんだ。
ーーもちろん、ただの階段じゃない。
イスルギは怪異の体験を売り買いする奇妙な男だった。
《目次》
第一話「十三階段」
第二話「忌み地」
第三話「凶宅」
第四話「呪詛箱」
第五話「肉人さん」
第六話「悪夢」
最終話「触穢」
※他サイトでも公開しています。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる