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第五十話 家に投函される嫌がらせ
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大学生のKさんは彼女とアパートに同棲していた。
平和かつ怠惰な日々を送っていたと本人は言うが、その生活を台無しにするようなことが起き始めた。
アパートの部屋の新聞入れや、入口の郵便受けにものが投げ込まれるのである。
食べ残しなどのゴミや新聞紙の切れ端などが入っていることが多かったが、あるときから明らかに放り込まれるものが異質になった。
呪符、なのである。
お札のような紙に爪楊枝か何かで線が描かれている。Kさんは何を表わすのかわからない図形が残されていた。
雪の結晶の下半分に、どこかの学校の校章をくっつけたような図形だったとKさんは言った。
これが1枚、郵便受けや新聞入れに入っているのだ。
お寺や神社に相談すべきだったのかもしれないが、お札1枚ならばなんとなくゴミを入れられるよりマシと判断し、Kさんと彼女はそれを家の中に無造作に放っておいた。
「確か、5、6枚はたまったと思います」
しばらくの間、ゴミは投函されずに呪符ばかりが入れられる日が続いた。
あるときKさんは法則を見出す。
「郵便受けの方はいつ来ていたのかわかりませんが、新聞入れの方は火曜日、木曜日、土曜日の深夜に入れられていることがわかったんです」
そしてKさんは深夜に新聞入れ、つまり玄関の前で待機することにした。
呪符が入れられた瞬間にドアを開け、入れた犯人を突き止めようと考えたのである。
木曜日の夜。
「ねえ、危ないからやめた方がいいよ」
彼女は心配してKさんに呼びかけるが、すでにこのときのために前々日から睡眠時間を調整していたKさんである。やめる気になれなかった。
「いいから、お前は寝てろよ。朝になったらどんな奴が来てたのか教えるから」
彼女に先に寝てもらい、Kさんは護身用のバットを携えて玄関前に座り込んだ。新聞入れが少しでも開けば、飛び出していくつもりだった。
すでに日付が変わった。あくびをかみ殺しながらKさんは待ち続ける。スマホと新聞入れを交互に見るだけの時間が過ぎていく。
そして異変が起きた。
新聞受けがスッと外から開けられ、1枚の呪符が滑り込むように入った。
「来た、来たぞ……」
Kさんは興奮を抑えながらバットを持ち、そっと立ち上がった。
一気にドアの近くまで寄り、開け放つ。
しかし、廊下には誰もいなかった。
サンダルを履いて部屋の外に出て、辺りをキョロキョロと見回すが誰もいない。
この短い時間で、呪符を入れてすぐにアパートの外まで出たのだろうか。
Kさんもそれに続けとばかりにアパートを出る。しかし時間は深夜。人っ子一人いなかった。
あまりに不可解。Kさんは納得のいかない気持ちで部屋に戻ることにした。
部屋の前まで来て、ドアを開けっぱなしにしていたことに気づいた。
さすがに夜中なので、他の住人に気づかれなかっただろう。彼女も起きてきた気配はない。
「結局、無駄骨だったか」
ぽつりと呟いてKさんは中に入り、ドアを閉める。
部屋の中に目をやると、そこに何かがいた。
白い存在であった。
シャツが白いのではない。全体が白い。
人間のような輪郭をしているが、全身が白くもやがかかったような物体だった。
いや、全身というのは正確ではない。その存在には、首から上がなかった。
そして、歩くような動きで部屋の奥に向かっていく。そちらにはちょうど彼女が寝ているはずの寝室がある。
Kさんはパニックを起こしながらも、彼女のことが気にかかって白いものの後を追った。
ところがKさんが近づくと、白いものはかき消えてしまったのである。
「俺がドアを開けてたから、入ってきたのか?」
背筋が寒くなったKさん。しかしそれよりも彼女が心配だった。
慌てて寝室へ向かう。白いものはもういないようだった。
布団の中の彼女の顔を見てKさんは凍り付いた。
彼女は、苦悶の表情を浮かべて亡くなっていた。
心臓発作だった。
首には苦しさのあまりに自分の手でかきむしったような跡があったという。
彼女の死は事件性なしということで処理された。
Kさんはこの後、彼女の葬儀を終えて引っ越したそうだ。
平和かつ怠惰な日々を送っていたと本人は言うが、その生活を台無しにするようなことが起き始めた。
アパートの部屋の新聞入れや、入口の郵便受けにものが投げ込まれるのである。
食べ残しなどのゴミや新聞紙の切れ端などが入っていることが多かったが、あるときから明らかに放り込まれるものが異質になった。
呪符、なのである。
お札のような紙に爪楊枝か何かで線が描かれている。Kさんは何を表わすのかわからない図形が残されていた。
雪の結晶の下半分に、どこかの学校の校章をくっつけたような図形だったとKさんは言った。
これが1枚、郵便受けや新聞入れに入っているのだ。
お寺や神社に相談すべきだったのかもしれないが、お札1枚ならばなんとなくゴミを入れられるよりマシと判断し、Kさんと彼女はそれを家の中に無造作に放っておいた。
「確か、5、6枚はたまったと思います」
しばらくの間、ゴミは投函されずに呪符ばかりが入れられる日が続いた。
あるときKさんは法則を見出す。
「郵便受けの方はいつ来ていたのかわかりませんが、新聞入れの方は火曜日、木曜日、土曜日の深夜に入れられていることがわかったんです」
そしてKさんは深夜に新聞入れ、つまり玄関の前で待機することにした。
呪符が入れられた瞬間にドアを開け、入れた犯人を突き止めようと考えたのである。
木曜日の夜。
「ねえ、危ないからやめた方がいいよ」
彼女は心配してKさんに呼びかけるが、すでにこのときのために前々日から睡眠時間を調整していたKさんである。やめる気になれなかった。
「いいから、お前は寝てろよ。朝になったらどんな奴が来てたのか教えるから」
彼女に先に寝てもらい、Kさんは護身用のバットを携えて玄関前に座り込んだ。新聞入れが少しでも開けば、飛び出していくつもりだった。
すでに日付が変わった。あくびをかみ殺しながらKさんは待ち続ける。スマホと新聞入れを交互に見るだけの時間が過ぎていく。
そして異変が起きた。
新聞受けがスッと外から開けられ、1枚の呪符が滑り込むように入った。
「来た、来たぞ……」
Kさんは興奮を抑えながらバットを持ち、そっと立ち上がった。
一気にドアの近くまで寄り、開け放つ。
しかし、廊下には誰もいなかった。
サンダルを履いて部屋の外に出て、辺りをキョロキョロと見回すが誰もいない。
この短い時間で、呪符を入れてすぐにアパートの外まで出たのだろうか。
Kさんもそれに続けとばかりにアパートを出る。しかし時間は深夜。人っ子一人いなかった。
あまりに不可解。Kさんは納得のいかない気持ちで部屋に戻ることにした。
部屋の前まで来て、ドアを開けっぱなしにしていたことに気づいた。
さすがに夜中なので、他の住人に気づかれなかっただろう。彼女も起きてきた気配はない。
「結局、無駄骨だったか」
ぽつりと呟いてKさんは中に入り、ドアを閉める。
部屋の中に目をやると、そこに何かがいた。
白い存在であった。
シャツが白いのではない。全体が白い。
人間のような輪郭をしているが、全身が白くもやがかかったような物体だった。
いや、全身というのは正確ではない。その存在には、首から上がなかった。
そして、歩くような動きで部屋の奥に向かっていく。そちらにはちょうど彼女が寝ているはずの寝室がある。
Kさんはパニックを起こしながらも、彼女のことが気にかかって白いものの後を追った。
ところがKさんが近づくと、白いものはかき消えてしまったのである。
「俺がドアを開けてたから、入ってきたのか?」
背筋が寒くなったKさん。しかしそれよりも彼女が心配だった。
慌てて寝室へ向かう。白いものはもういないようだった。
布団の中の彼女の顔を見てKさんは凍り付いた。
彼女は、苦悶の表情を浮かべて亡くなっていた。
心臓発作だった。
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