百物語 厄災

嵐山ノキ

文字の大きさ
85 / 101

第八十四話 動画で恐怖体験

しおりを挟む
 動画配信者のFさんの話である。
 妻と2人組で動画をネットに投稿して広告収入を得ているということで、そのためにいろいろな企画を立てて挑戦しているそうだ。
 このときは妻に、ネット配信されている投稿系ホラー番組の中の一本を見せてその反応を撮影、ネット投稿する予定であった。

「ちょ、これ、嫌なんだけど」

「まあまあ、俺一回通しで観たけどそんなに怖くなかったよ」

 怖がる妻に対してFさんはそう言うが、実は嘘であった。詳細は差し控えるが、ホラーDVD好きのFさんがこれまでに視聴してきた中でもこれは最恐クラスの動画だ。ネット上でも評判がいい。
 廃墟探検の動画である。夜に撮影者がわずかな手元の明かりだけを頼りに、殺人事件があったという廃屋の中を探索していく。
 投稿動画が流される最中にバックでおどろおどろしいBGMが入っている辺りは脚色もあるが、うまい具合に恐怖感を煽っている。
 いよいよ問題のシーンに近づいてきた。Fさんはほくそ笑む。
 この投稿動画のキモは、廃墟に幽霊が出現するという出方ではないところにある。
 およそ脈絡がない話だが画面にノイズが走り出し、ついにはそれが画面いっぱいに広がってしまう。無数の線が画面に広がったと思った瞬間、真っ暗な背景に突然女の顔が画面いっぱいに映し出されるのだ。
 そしてその瞬間が来た。
 ノイズが走り、女の顔が画面にでかでかと出た。

「きゃああっ!」

 妻が大声を上げて驚く。
 なかなかいい反応だ。そう思ったFさんだったが、同時にひどい頭痛がした。

「うっ、ぐうっ……」

 片目だけを開き、妻が映るカメラの映像と動画が流れているモニターの様子を交互に見る。
 口元に手を当てて驚きながら動画の続きを見ている妻。
 そして問題の動画だが、こちらには異常が起きていた。女が画面に登場した瞬間のまま、フリーズしているようだ。
 記憶では数秒の間だけ女を映したところで動画が終わり、リプレイへと進むはずだった。しかし女の顔が出たまま止まっている。

「いて、頭、ぐっ」

 頭を抱えたままFさんは撮影を止め、モニターの方の動画を止めてくれるよう妻に頼もうとした。
 その瞬間、画面の女の目だけが動き、Fさんと目が合った。

「ひっ」

 心臓に強い痛みを感じた。
 Fさんはその場でもんどり打って倒れる。

「えっ、ちょっと、大丈夫!」

 妻がようやくFさんの様子に気づき、席を立つ。
 しばらく横になっていたFさんだったが、しばらくして呼吸を整えて起き上がった。しかし頭の痛みが続いており、耳の辺りに違和感がある。

「ごめん、ちょっと、動画を止めてもらえるか」

 そう言うFさんだったが、すでにモニター画面は真っ暗になっていた。後から確認すると異常終了していたらしい。

「いて、いてえ、耳が……」

 耳の違和感が次第に痛みとなってきた。

「ねえ、これ、どうしたの?」

 妻がFさんの耳に手をやる。そして何かを掴むようにして、自分の方に引き寄せた。
 長い黒髪が、Fさんの耳からずるずると出てきた。

「うわあっ、なんだこりゃ、気持ち悪っ!」

 出てきた髪の毛は10本以上に及んだが、妻の協力でそれらを全部出したところでFさんの頭と耳の痛みは治まった。
「撮影できた動画は自分のところで使うよりも、動画投稿DVDへの採用を目指していくつかの映像制作会社に送ってます。そこで自分のチャンネルの宣伝もできればと」

 Fさんはしたたかに言った。問題の投稿動画については、内緒にされてしまったのが惜しまれる。
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

意味が分かると怖い話(解説付き)

彦彦炎
ホラー
一見普通のよくある話ですが、矛盾に気づけばゾッとするはずです 読みながら話に潜む違和感を探してみてください 最後に解説も載せていますので、是非読んでみてください 実話も混ざっております

【電子書籍化】ホラー短編集・ある怖い話の記録~旧 2ch 洒落にならない怖い話風 現代ホラー~

榊シロ
ホラー
【1~4話で完結する、語り口調の短編ホラー集】 ジャパニーズホラー、じわ怖、身近にありそうな怖い話など。 八尺様 や リアルなど、2chの 傑作ホラー の雰囲気を目指しています。現在 150話 越え。 === エブリスタ・小説家になろう・カクヨムに同時掲載中 【総文字数 800,000字 超え 文庫本 約8冊分 のボリュームです】 【怖さレベル】 ★☆☆ 微ホラー・ほんのり程度 ★★☆ ふつうに怖い話 ★★★ 旧2ch 洒落怖くらいの話 ※8/2 Kindleにて電子書籍化しました 『9/27 名称変更→旧:ある雑誌記者の記録』

奇談

hyui
ホラー
真相はわからないけれど、よく考えると怖い話…。 そんな話を、体験談も含めて気ままに投稿するホラー短編集。

それなりに怖い話。

只野誠
ホラー
これは創作です。 実際に起きた出来事はございません。創作です。事実ではございません。創作です創作です創作です。 本当に、実際に起きた話ではございません。 なので、安心して読むことができます。 オムニバス形式なので、どの章から読んでも問題ありません。 不定期に章を追加していきます。 2026/2/6:『きんようび』の章を追加。2026/2/13の朝頃より公開開始予定。 2026/2/5:『かれー』の章を追加。2026/2/12の朝頃より公開開始予定。 2026/2/4:『あくむ』の章を追加。2026/2/11の朝頃より公開開始予定。 2026/2/3:『つりいと』の章を追加。2026/2/10の朝頃より公開開始予定。 2026/2/2:『おばあちゃん』の章を追加。2026/2/9の朝頃より公開開始予定。 2026/2/1:『かんしかめら』の章を追加。2026/2/8の朝頃より公開開始予定。 2026/1/31:『うしろ』の章を追加。2026/2/7の朝頃より公開開始予定。 ※こちらの作品は、小説家になろう、カクヨム、アルファポリスで同時に掲載しています。

(ほぼ)1分で読める怖い話

涼宮さん
ホラー
ほぼ1分で読める怖い話! 【ホラー・ミステリーでTOP10入りありがとうございます!】 1分で読めないのもあるけどね 主人公はそれぞれ別という設定です フィクションの話やノンフィクションの話も…。 サクサク読めて楽しい!(矛盾してる) ⚠︎この物語で出てくる場所は実在する場所とは全く関係御座いません ⚠︎他の人の作品と酷似している場合はお知らせください

怪蒐師

糸世朔
ホラー
第8回ホラー•ミステリー大賞で優秀賞を受賞しました。ありがとうございました! ●あらすじ 『階段をのぼるだけで一万円』 大学二年生の間宮は、同じ学部にも関わらず一度も話したことすらない三ツ橋に怪しげなアルバイトを紹介される。 三ツ橋に連れて行かれたテナントビルの事務所で出迎えたのは、イスルギと名乗る男だった。 男は言った。 ーー君の「階段をのぼるという体験」を買いたいんだ。 ーーもちろん、ただの階段じゃない。 イスルギは怪異の体験を売り買いする奇妙な男だった。 《目次》 第一話「十三階段」 第二話「忌み地」 第三話「凶宅」 第四話「呪詛箱」 第五話「肉人さん」 第六話「悪夢」 最終話「触穢」 ※他サイトでも公開しています。

皆さんは呪われました

禰津エソラ
ホラー
あなたは呪いたい相手はいますか? お勧めの呪いがありますよ。 効果は絶大です。 ぜひ、試してみてください…… その呪いの因果は果てしなく絡みつく。呪いは誰のものになるのか。 最後に残るのは誰だ……

(ほぼ)5分で読める怖い話

涼宮さん
ホラー
ほぼ5分で読める怖い話。 フィクションから実話まで。

処理中です...