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供養をするセイラとディアナを尻目に、アキラは焚き火をお越し、先程捕った魚を焼いていた。彼女等が墓前にて祈りを捧げだして半時ほどたったろうか。
「何やら良い薫りがしますね。」
魚を遠火で焼いていたアキラの後ろから、覗き込むようにしてセイラが声を掛けた。もういいんですか、とは言わず、アキラは何気なく、何も思ってない風にして日常会話をすることにした。
「はい、今時期のセイリュウマスは脂がのってて旨いです。臭みがなくて上品な味なので塩焼きに最適なんですよ。」
「へぇ、セイリュウマスっていうんですかこの魚。私はあまり詳しくはないのですが、初めて見ました。」
セイラはアキラの焼く魚を見詰める。火に炙られながら、魚の皮がパリッと芳ばしく、尚且つその皮の割れ目から脂がじゅわっと漏れる。もうすぐ焼き上がりのセイリュウマスは何とも芳しい薫りを放つ。ディアナも知らず知らずのうちに、その様子を見詰めていた。その時運悪く、間が悪くかもしれないが、彼女のお腹から空腹を伝える低い音が鳴る。
「・・・・・・」
ディアナの顔はみるみるさくらんぼのように紅くなっていった。セイラはそんな彼女を見て微笑んだ。その笑顔には嫌らしさが微塵もない。アキラはというと、彼にも意地悪したいとかそんな気持ちはなかったが何事か言った方が良いのかと思い、
「あ、もうすぐ焼けますので、ちょっと待ってくださいね。」
と声を掛けた。だがその言葉は、いくら近衛騎士筆頭といえども、まだ齢二十歳になったばかりの女性には、耐え難い羞恥であったようで、
「ばっ、バカ者!別に私はそこまで空腹ということではないぞ!たまたま今は腹の虫が癇癪を起こしただけだ!」
と言って、更に顔を真っ赤にした。
「ウフフッ、私もお腹ペコペコです!」
セイラは普段見せないディアナの顔を見れて嬉しかったようで、上機嫌な小悪魔の笑顔でディアナに抱きつきながらそう言った。
「アキラさん、パンと葡萄酒もありますので一緒に召し上がりましょう。」
セイラはディアナが抱えていた鞄から、紙袋と酒瓶を取り出した。まだそんなもの持ってたのかとアキラは思い、この荷物を担ぎながら先程の行軍を実行したディアナは結構すごいのかもしれないと、また思った。
「私、こんな風に枝に刺した魚を丸ごと食べるのは、初めてです。」
そう言いながら、上品に小さく口を開け、セイラが焼き上がったセイリュウマスの塩焼きを頬張る。
「姫様!先ずは私が口にしますともうしましたのに!」
毒味を行う予定だったのか、ディアナが主に形ばかりの抗議をした。そのまま自分も豪快に魚にかぶりつく。
「お、美味しい!こんなに美味しい魚は、今まで食べたことがありません!」
その味に感激したセイラが、興奮しながらアキラに話し掛ける。
「う、うむ。なかなかに旨い魚だな!そしてこの塩加減が絶妙だ。・・・それにこの香り、ハーブか?」
一通り味わい、その旨さに頬を緩ませながら、ディアナが問いかける。
「ええ、まあものが捕れたてですからね。新鮮だし、時期的に一番旨いものだから塩降っただけでこれだけ美味しくなるんです。ハーブは隠し味に使ってみました。それにこの魚は清流、綺麗な水でしか生きれないから、臭みが出ないので有名なんです。」
照れることなどしないが、何か居心地悪くアキラは答えた。二人が自分の思っていたより過剰な反応をしたので彼の方が面食らった状態だ。
彼は十年間、今日の未明まで、氷の中で寝ていた。場所はその墓前にある洞窟だ。彼は眠りにつく前、兵士だった。戦士といってもいい。とある傭兵団の兵士で、そこでは食事当番が日替わりで廻ってくるのだが、彼はそれが嫌いではなかった。主にその傭兵団での食事は、一番人気が団長の料理、二番目がアキラの料理と皆から言われていた。そしてこの料理スキルは団長から直々に教わったものだ。彼にとっては、今はもう絶対に戻ってこない大切なものであった。それを誉められると不思議な気持ちになる。
(もう誰かに何か作るのなんて無いと思ったけど、よりによってこの一族に作るとは思わなかった。まあ、ただ魚焼いただけだが。)
彼女等の賛辞に素直に喜べないのは、その彼の心底も関係しているのかもしれない。
「何やら良い薫りがしますね。」
魚を遠火で焼いていたアキラの後ろから、覗き込むようにしてセイラが声を掛けた。もういいんですか、とは言わず、アキラは何気なく、何も思ってない風にして日常会話をすることにした。
「はい、今時期のセイリュウマスは脂がのってて旨いです。臭みがなくて上品な味なので塩焼きに最適なんですよ。」
「へぇ、セイリュウマスっていうんですかこの魚。私はあまり詳しくはないのですが、初めて見ました。」
セイラはアキラの焼く魚を見詰める。火に炙られながら、魚の皮がパリッと芳ばしく、尚且つその皮の割れ目から脂がじゅわっと漏れる。もうすぐ焼き上がりのセイリュウマスは何とも芳しい薫りを放つ。ディアナも知らず知らずのうちに、その様子を見詰めていた。その時運悪く、間が悪くかもしれないが、彼女のお腹から空腹を伝える低い音が鳴る。
「・・・・・・」
ディアナの顔はみるみるさくらんぼのように紅くなっていった。セイラはそんな彼女を見て微笑んだ。その笑顔には嫌らしさが微塵もない。アキラはというと、彼にも意地悪したいとかそんな気持ちはなかったが何事か言った方が良いのかと思い、
「あ、もうすぐ焼けますので、ちょっと待ってくださいね。」
と声を掛けた。だがその言葉は、いくら近衛騎士筆頭といえども、まだ齢二十歳になったばかりの女性には、耐え難い羞恥であったようで、
「ばっ、バカ者!別に私はそこまで空腹ということではないぞ!たまたま今は腹の虫が癇癪を起こしただけだ!」
と言って、更に顔を真っ赤にした。
「ウフフッ、私もお腹ペコペコです!」
セイラは普段見せないディアナの顔を見れて嬉しかったようで、上機嫌な小悪魔の笑顔でディアナに抱きつきながらそう言った。
「アキラさん、パンと葡萄酒もありますので一緒に召し上がりましょう。」
セイラはディアナが抱えていた鞄から、紙袋と酒瓶を取り出した。まだそんなもの持ってたのかとアキラは思い、この荷物を担ぎながら先程の行軍を実行したディアナは結構すごいのかもしれないと、また思った。
「私、こんな風に枝に刺した魚を丸ごと食べるのは、初めてです。」
そう言いながら、上品に小さく口を開け、セイラが焼き上がったセイリュウマスの塩焼きを頬張る。
「姫様!先ずは私が口にしますともうしましたのに!」
毒味を行う予定だったのか、ディアナが主に形ばかりの抗議をした。そのまま自分も豪快に魚にかぶりつく。
「お、美味しい!こんなに美味しい魚は、今まで食べたことがありません!」
その味に感激したセイラが、興奮しながらアキラに話し掛ける。
「う、うむ。なかなかに旨い魚だな!そしてこの塩加減が絶妙だ。・・・それにこの香り、ハーブか?」
一通り味わい、その旨さに頬を緩ませながら、ディアナが問いかける。
「ええ、まあものが捕れたてですからね。新鮮だし、時期的に一番旨いものだから塩降っただけでこれだけ美味しくなるんです。ハーブは隠し味に使ってみました。それにこの魚は清流、綺麗な水でしか生きれないから、臭みが出ないので有名なんです。」
照れることなどしないが、何か居心地悪くアキラは答えた。二人が自分の思っていたより過剰な反応をしたので彼の方が面食らった状態だ。
彼は十年間、今日の未明まで、氷の中で寝ていた。場所はその墓前にある洞窟だ。彼は眠りにつく前、兵士だった。戦士といってもいい。とある傭兵団の兵士で、そこでは食事当番が日替わりで廻ってくるのだが、彼はそれが嫌いではなかった。主にその傭兵団での食事は、一番人気が団長の料理、二番目がアキラの料理と皆から言われていた。そしてこの料理スキルは団長から直々に教わったものだ。彼にとっては、今はもう絶対に戻ってこない大切なものであった。それを誉められると不思議な気持ちになる。
(もう誰かに何か作るのなんて無いと思ったけど、よりによってこの一族に作るとは思わなかった。まあ、ただ魚焼いただけだが。)
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