11 / 25
11
しおりを挟む
氷柱に閉じ込められたアキラは、身動き一つとれない。しかし、その身体には変化が現れる。
まず、炭化して焼け爛れた皮膚が新しいものに張り変わった。みるみるうちに筋肉の繊維が新しく出来上がる様は不気味で、それだけで人ではないということを彷彿とさせる。焼け焦げたその頭には艶やかな銀髪が生える。
彼は僅か一分足らずで元の状態まで回復した。
「・・まさか、信じられない。」
ディアナがその様を見てポツリと呟いた。ソフィーは氷に絶えずオーラを送り続けているため口を開く余裕がない。ディアナの横ではセイラが古のスペルを唱えている。
「だめ、もたないっ、」
ソフィーの口から叫ぶ様な声がした。その瞬間、アキラを封じる氷柱に亀裂が走る。
「・・出ます!」
氷柱の亀裂が無数に入り、氷は音も無く砕け散った。
セイラは砕け散る氷塊を見ながら、自分の祖母の事を思い出していた。
祖母は昔教えてくれた。魔法術のスペル、呪文というものは、精霊に対する契約を現していたり、自らの行使する魔法をイメージする為の暗示だったりすることが多い。
今回は後者だ。今セイラが口にしているスペルはこれから行う術のイメージを言葉にして具現化しやすくしている。
彼女が今から放つ魔法は「光の矢」という魔法だ。祖母から教わった光の属性の基本的な攻撃魔法の一つ。
そのまま放てば中級魔法程度の攻撃力だが、限界まで集中し、力を溜めれば、この光の矢はかなりの威力まで高めることが出来る。その時には「アポロンの矢」という魔法に変わる。
祖母にも滅多なことでは使うなと言われている光の魔法。その中でもアポロンの矢は特に使用を注意されていた。
(今は、使うしかない。)
心中でそう自分に言い聞かせ、セイラは弓矢を振り絞るように引いた自分の右手を解き放った。
目映い光で覆われた光弾が射出され、流星のように飛んでいきアキラの胸に突き刺さる。
それは彼の心臓部。あたかも生命の泉と呼ばれる宝具があるところだ。
アキラは、痛みがないのか自分の胸に突き刺さる光を眺めていた。そしておもむろにその光を手で掴み、引き抜いた。アキラの手の中で矢は光を失い消えていった。セイラはオドを使い果たしたかその場に倒れる。
「姫様!」
慌ててセイラに駆け寄るディアナ。その二人を空虚な瞳で見ていたアキラは、彼女らに向けて掌を開いて向けた。その掌に黒い球体のエネルギーが集まる。明らかに攻撃の魔法だった。
(驚異になるのはこいつだけ。)
彼は薄れゆく意識の中でセイラを一番危険な敵と判断して止めを刺そうとしていた。普段の彼ならこんな選択はしない。だが今は自らの意識に靄がかかったようで深く考えることが出来ない。ただ危険な者は排除するという潜在意識で動いているだけだった。
「くっ、無理だった。もう一度凍らす!」
ぐったりした身体を持ち上げ、ソフィーが再度氷の牢獄を行おうとする。だがさっきのでかなりのオドを使いきっていて、本当は出来るかどうかも分からない。
「いや、十分だ。」
そんな時、ブライが口を開いた。彼は全く焦っていなかった。彼の目には先程のセイラの魔法がアキラの心臓部の生命の泉にダメージを与えたのを確信している。その変化は突然表れた。
「・・・・・?」
セイラを庇って覆い被さっているディアナ、彼女等に向けてアキラが魔法を放とうとしていると、彼の髪が色素を失って白くなり、そのまま元の黒色に戻った。瞳の色も金色から黒に戻った。彼の背中にあった羽のような形に見えていた不気味なオーラも消えた。そして彼が纏っていた圧倒的な存在感が無くなっていく。言うなれば、神や悪魔が霊的に堕ちていき、人間になっていったような印象だ。そのままアキラの掌の球体は消え、彼は両膝を付いて俯せに倒れた。
「止まった・・・・のか?」
ソフィーはアキラに静かに近寄り、彼の呼吸を確認した。規則的な呼吸音に安堵して、自らもその場に尻餅をついた。
「はぁー、やっと終わった。」
深い溜め息が彼女の口から自然と出る。そんな時、丁度良いタイミングで後方から声が掛けられた。
「守護騎士殿!これは一体?」
城壁の無惨な破壊の痕を見て、駆けつけた警備兵達がソフィーに問いかける。彼女が何事か言おうとしたとき、
「何事もない。新しい魔法のテストを行っていた。その途中でセイラ様が御加減を悪くして倒れられた。直ぐに王宮までお連れしろ。」
有無を言わさぬブライの物言いで、狼狽えていた警備兵達は取り敢えずの急務として、セイラを丁重に担架にのせ王宮に向かう。その後に続こうとしたディアナをブライが呼び止めた。
「ディアナ・レイ・グラン近衛騎士長、今日の事は他言無用だ。陛下には私から申し上げる。貴殿はセイラ姫の養生に専念せよ。」
鋭い目付きでブライがディアナに命令した。ブライはこの国の軍事のトップであるので、近衛騎士と言えど当然命令権がある。ディアナは他言無用というのは従うが、どうしても訪ねたいことがあった。
「はっ、本日の事は我が家名に懸けて一切を口外しないことを誓います。ですが守護騎士長閣下、一つお尋ねしても宜しいですか?」
ブライは厳しい眼光のままでディアナを一瞥した。途端、ディアナは背筋に寒気のようなものを感じてしまう。止めた方が良いかと一瞬思うと、
「よかろう、何が聞きたい?」
ブライのほうが了承してくれた。ディアナは背筋を伸ばし、深く御辞儀をする。
「有難うございます。それでは、彼の少年は何者ですか?」
頭をあげて質問するディアナ。昨日知り合った少年は只者でない強さだとは思っていたが、このような所で会うとは思わなかった。彼の魔法はかなり特殊であったし、危険な感じがする。
「別に、私達の昔の連れだ。私の弟弟子というところだ。」
全く平静の声でブライが告げる。
「昔の、と言うことは、武神兵団の方ですか?」
「そうだ、当時は三番隊の隊長であった。」
「三番隊の隊長ということは、確か鬼の、・・・そう、悪鬼羅刹(あっきらせつ)と恐れられていた方ですよね。」
「あー、そんなんあったね。でもあれって敵国が、私達がアキラって読んでるのを聞き間違えて悪鬼羅刹、鬼のような戦士って勝手に言ってたんだけどね。」
ディアナの後ろより、ソフィーが自分の鎧についた埃を払いながら近付いてきて言った。彼女は今まで魔法でアキラを拘束していた。やっと彼が自由に出来ないような術式をかけ終えたのだ。
「私は当時子供でしたが、皆さんの武勇はこの国のみ為らず、諸外国にも雄々と轟いておりました。その噂を聞いては胸を高鳴らせたものです。」
幼い頃、祖国の英雄達に憧れた日々を思い出したのかディアナが少し間をおいて、
「あの少年も、すごい御方だったのですね。」
そう言った。
「いや、」
そこにブライが、
「只の青臭い糞ガキさ。」
苦笑混じりにそう言って、その場は各々解散した。
まず、炭化して焼け爛れた皮膚が新しいものに張り変わった。みるみるうちに筋肉の繊維が新しく出来上がる様は不気味で、それだけで人ではないということを彷彿とさせる。焼け焦げたその頭には艶やかな銀髪が生える。
彼は僅か一分足らずで元の状態まで回復した。
「・・まさか、信じられない。」
ディアナがその様を見てポツリと呟いた。ソフィーは氷に絶えずオーラを送り続けているため口を開く余裕がない。ディアナの横ではセイラが古のスペルを唱えている。
「だめ、もたないっ、」
ソフィーの口から叫ぶ様な声がした。その瞬間、アキラを封じる氷柱に亀裂が走る。
「・・出ます!」
氷柱の亀裂が無数に入り、氷は音も無く砕け散った。
セイラは砕け散る氷塊を見ながら、自分の祖母の事を思い出していた。
祖母は昔教えてくれた。魔法術のスペル、呪文というものは、精霊に対する契約を現していたり、自らの行使する魔法をイメージする為の暗示だったりすることが多い。
今回は後者だ。今セイラが口にしているスペルはこれから行う術のイメージを言葉にして具現化しやすくしている。
彼女が今から放つ魔法は「光の矢」という魔法だ。祖母から教わった光の属性の基本的な攻撃魔法の一つ。
そのまま放てば中級魔法程度の攻撃力だが、限界まで集中し、力を溜めれば、この光の矢はかなりの威力まで高めることが出来る。その時には「アポロンの矢」という魔法に変わる。
祖母にも滅多なことでは使うなと言われている光の魔法。その中でもアポロンの矢は特に使用を注意されていた。
(今は、使うしかない。)
心中でそう自分に言い聞かせ、セイラは弓矢を振り絞るように引いた自分の右手を解き放った。
目映い光で覆われた光弾が射出され、流星のように飛んでいきアキラの胸に突き刺さる。
それは彼の心臓部。あたかも生命の泉と呼ばれる宝具があるところだ。
アキラは、痛みがないのか自分の胸に突き刺さる光を眺めていた。そしておもむろにその光を手で掴み、引き抜いた。アキラの手の中で矢は光を失い消えていった。セイラはオドを使い果たしたかその場に倒れる。
「姫様!」
慌ててセイラに駆け寄るディアナ。その二人を空虚な瞳で見ていたアキラは、彼女らに向けて掌を開いて向けた。その掌に黒い球体のエネルギーが集まる。明らかに攻撃の魔法だった。
(驚異になるのはこいつだけ。)
彼は薄れゆく意識の中でセイラを一番危険な敵と判断して止めを刺そうとしていた。普段の彼ならこんな選択はしない。だが今は自らの意識に靄がかかったようで深く考えることが出来ない。ただ危険な者は排除するという潜在意識で動いているだけだった。
「くっ、無理だった。もう一度凍らす!」
ぐったりした身体を持ち上げ、ソフィーが再度氷の牢獄を行おうとする。だがさっきのでかなりのオドを使いきっていて、本当は出来るかどうかも分からない。
「いや、十分だ。」
そんな時、ブライが口を開いた。彼は全く焦っていなかった。彼の目には先程のセイラの魔法がアキラの心臓部の生命の泉にダメージを与えたのを確信している。その変化は突然表れた。
「・・・・・?」
セイラを庇って覆い被さっているディアナ、彼女等に向けてアキラが魔法を放とうとしていると、彼の髪が色素を失って白くなり、そのまま元の黒色に戻った。瞳の色も金色から黒に戻った。彼の背中にあった羽のような形に見えていた不気味なオーラも消えた。そして彼が纏っていた圧倒的な存在感が無くなっていく。言うなれば、神や悪魔が霊的に堕ちていき、人間になっていったような印象だ。そのままアキラの掌の球体は消え、彼は両膝を付いて俯せに倒れた。
「止まった・・・・のか?」
ソフィーはアキラに静かに近寄り、彼の呼吸を確認した。規則的な呼吸音に安堵して、自らもその場に尻餅をついた。
「はぁー、やっと終わった。」
深い溜め息が彼女の口から自然と出る。そんな時、丁度良いタイミングで後方から声が掛けられた。
「守護騎士殿!これは一体?」
城壁の無惨な破壊の痕を見て、駆けつけた警備兵達がソフィーに問いかける。彼女が何事か言おうとしたとき、
「何事もない。新しい魔法のテストを行っていた。その途中でセイラ様が御加減を悪くして倒れられた。直ぐに王宮までお連れしろ。」
有無を言わさぬブライの物言いで、狼狽えていた警備兵達は取り敢えずの急務として、セイラを丁重に担架にのせ王宮に向かう。その後に続こうとしたディアナをブライが呼び止めた。
「ディアナ・レイ・グラン近衛騎士長、今日の事は他言無用だ。陛下には私から申し上げる。貴殿はセイラ姫の養生に専念せよ。」
鋭い目付きでブライがディアナに命令した。ブライはこの国の軍事のトップであるので、近衛騎士と言えど当然命令権がある。ディアナは他言無用というのは従うが、どうしても訪ねたいことがあった。
「はっ、本日の事は我が家名に懸けて一切を口外しないことを誓います。ですが守護騎士長閣下、一つお尋ねしても宜しいですか?」
ブライは厳しい眼光のままでディアナを一瞥した。途端、ディアナは背筋に寒気のようなものを感じてしまう。止めた方が良いかと一瞬思うと、
「よかろう、何が聞きたい?」
ブライのほうが了承してくれた。ディアナは背筋を伸ばし、深く御辞儀をする。
「有難うございます。それでは、彼の少年は何者ですか?」
頭をあげて質問するディアナ。昨日知り合った少年は只者でない強さだとは思っていたが、このような所で会うとは思わなかった。彼の魔法はかなり特殊であったし、危険な感じがする。
「別に、私達の昔の連れだ。私の弟弟子というところだ。」
全く平静の声でブライが告げる。
「昔の、と言うことは、武神兵団の方ですか?」
「そうだ、当時は三番隊の隊長であった。」
「三番隊の隊長ということは、確か鬼の、・・・そう、悪鬼羅刹(あっきらせつ)と恐れられていた方ですよね。」
「あー、そんなんあったね。でもあれって敵国が、私達がアキラって読んでるのを聞き間違えて悪鬼羅刹、鬼のような戦士って勝手に言ってたんだけどね。」
ディアナの後ろより、ソフィーが自分の鎧についた埃を払いながら近付いてきて言った。彼女は今まで魔法でアキラを拘束していた。やっと彼が自由に出来ないような術式をかけ終えたのだ。
「私は当時子供でしたが、皆さんの武勇はこの国のみ為らず、諸外国にも雄々と轟いておりました。その噂を聞いては胸を高鳴らせたものです。」
幼い頃、祖国の英雄達に憧れた日々を思い出したのかディアナが少し間をおいて、
「あの少年も、すごい御方だったのですね。」
そう言った。
「いや、」
そこにブライが、
「只の青臭い糞ガキさ。」
苦笑混じりにそう言って、その場は各々解散した。
0
あなたにおすすめの小説
ゲーム未登場の性格最悪な悪役令嬢に転生したら推しの妻だったので、人生の恩人である推しには離婚して私以外と結婚してもらいます!
クナリ
ファンタジー
江藤樹里は、かつて画家になることを夢見ていた二十七歳の女性。
ある日気がつくと、彼女は大好きな乙女ゲームであるハイグランド・シンフォニーの世界へ転生していた。
しかし彼女が転生したのは、ヘビーユーザーであるはずの自分さえ知らない、ユーフィニアという女性。
ユーフィニアがどこの誰なのかが分からないまま戸惑う樹里の前に、ユーフィニアに仕えているメイドや、樹里がゲーム内で最も推しているキャラであり、どん底にいたときの自分の心を救ってくれたリルベオラスらが現れる。
そして樹里は、絶世の美貌を持ちながらもハイグラの世界では稀代の悪女とされているユーフィニアの実情を知っていく。
国政にまで影響をもたらすほどの悪名を持つユーフィニアを、最愛の恩人であるリルベオラスの妻でいさせるわけにはいかない。
樹里は、ゲーム未登場ながら圧倒的なアクの強さを持つユーフィニアをリルベオラスから引き離すべく、離婚を目指して動き始めた。
大ッ嫌いな英雄様達に告ぐ
鮭とば
ファンタジー
剣があって、魔法があって、けれども機械はない世界。妖魔族、俗に言う魔族と人間族の、原因は最早誰にもわからない、終わらない小競り合いに、いつからあらわれたのかは皆わからないが、一旦の終止符をねじ込んだ聖女様と、それを守る5人の英雄様。
それが約50年前。
聖女様はそれから2回代替わりをし、数年前に3回目の代替わりをしたばかりで、英雄様は数え切れないぐらい替わってる。
英雄の座は常に5つで、基本的にどこから英雄を選ぶかは決まってる。
俺は、なんとしても、聖女様のすぐ隣に居たい。
でも…英雄は5人もいらないな。
無能妃候補は辞退したい
水綴(ミツヅリ)
ファンタジー
貴族の嗜み・教養がとにかく身に付かず、社交会にも出してもらえない無能侯爵令嬢メイヴィス・ラングラーは、死んだ姉の代わりに15歳で王太子妃候補として王宮へ迎え入れられる。
しかし王太子サイラスには周囲から正妃最有力候補と囁かれる公爵令嬢クリスタがおり、王太子妃候補とは名ばかりの茶番レース。
帰る場所のないメイヴィスは、サイラスとクリスタが正式に婚約を発表する3年後までひっそりと王宮で過ごすことに。
誰もが不出来な自分を見下す中、誰とも関わりたくないメイヴィスはサイラスとも他の王太子妃候補たちとも距離を取るが……。
果たしてメイヴィスは王宮を出られるのか?
誰にも愛されないひとりぼっちの無気力令嬢が愛を得るまでの話。
この作品は「小説家になろう」「カクヨム」にも掲載しています。
冤罪で辺境に幽閉された第4王子
satomi
ファンタジー
主人公・アンドリュート=ラルラは冤罪で辺境に幽閉されることになったわけだが…。
「辺境に幽閉とは、辺境で生きている人間を何だと思っているんだ!辺境は不要な人間を送る場所じゃない!」と、辺境伯は怒っているし当然のことだろう。元から辺境で暮している方々は決して不要な方ではないし、‘辺境に幽閉’というのはなんとも辺境に暮らしている方々にしてみれば、喧嘩売ってんの?となる。
辺境伯の娘さんと婚約という話だから辺境伯の主人公へのあたりも結構なものだけど、娘さんは美人だから万事OK。
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。
遡ったのは君だけじゃない。離縁状を置いて出ていった妻ーー始まりは、そこからだった。
沼野 花
恋愛
私は、夫にも子供にも選ばれなかった。
その事実だけを抱え、離縁を突きつけ、家を出た。
そこで待っていたのは、最悪の出来事――
けれど同時に、人生の扉がひらく瞬間でもあった。
夫は愛人と共に好きに生きればいい。
今さら「本当に愛していたのは君だ」と言われても、裏切ったあなたを許すことはできない。
でも、子供たちの心だけは、必ず取り戻す。
妻にも母にもなれなかった伯爵夫人イネス。
過去を悔いながらも、愛を手に入れることを決めた彼女が辿り着いた先には――
三十年後に届いた白い手紙
RyuChoukan
ファンタジー
三十年前、帝国は一人の少年を裏切り者として処刑した。
彼は最後まで、何も語らなかった。
その罪の真相を知る者は、ただ一人の女性だけだった。
戴冠舞踏会の夜。
公爵令嬢は、一通の白い手紙を手に、皇帝の前に立つ。
それは復讐でも、告発でもない。
三十年間、辺境の郵便局で待ち続けられていた、
「渡されなかった約束」のための手紙だった。
沈黙のまま命を捨てた男と、
三十年、ただ待ち続けた女。
そして、すべてを知った上で扉を開く、次の世代。
これは、
遅れて届いた手紙が、
人生と運命を静かに書き換えていく物語。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる