国助く禍津剣

dada

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 アルバート王国の北東に目的の塔がある。直径百メートル程の円筒状の塔で、高さはかなりあるようだが確かな所は分からない。そこから三キロ程離れたところに魔物の被害に遭った村があった。
 その村の入り口でロラン王国の使者が数人、難しい顔で話し合っている。
 「・・・ウィル、村の中はどうでした?」
 フードを被った女が銀髪の青年に話し掛ける。
 「駄目です。生き残りはおりません。」
 「・・・・そうですか、遺体の方はなるべく急ぎ供養しましょう。」
 そう言ってフードの女は村に入ろうとした。
 「いけません!死体は所々腐敗が進んでおり、とてもお見せできません。」
 襲われたのは三日前。今は初夏で気温がそこそこ高くなる。村人の遺体にも当然変化は生じる。彼女等は村の入り口付近にいるが、確かに微かな腐臭がしていた。
 「私は大丈夫です。それに私の魔法ならお墓をたてるのも早く出来ます。レイア、手伝ってください。」
 フードの女はそう言い、横に控える銀髪の女に指示した。銀髪の女は頷き、丁寧な手付きで彼女のフードとマントを脱がせ、折り畳んだ。
 マントとフードを取り払った女の顔は、少し幼さは残るがかなりの美形であった。普通の人間ではこうはいかない。長く流れるように美しい金髪の髪は絹のように滑らかで、太陽の光を受けてキラキラと輝いている。目は大きく切れ長でしなやかな美を醸し出す。瞳の色は優美な碧色、歳は十代中ごろぐらいか。
 物腰は柔らかく、その歩き姿一つとっても高貴な生まれだと分かる。
 お供として付き従う二人の男女も彼女ほどではないとしてもかなりの美男美女と言っても差し障り無いと言える。
 それに彼等は同じ人種だと直ぐに分かる特徴をしていた。すらりとした体躯に整った目鼻立ち、そして何より普通の人間と明らかに違うとがった耳。
 彼女達は、エルフと言われる種族だった。ロラン王国はエルフ属の国なのだ。
 だが同じエルフ属でも一人の少女と、二人の青年(女性含む)は彼等の国の中でも身分が違うようであった。
 二人の男女は護衛を主とした立ち居振舞いだ。常に周囲に気を配りながら、警戒を緩めていない。全く隙がないその仕草それだけでも、この二人がかなりの手練れであることは分かる。
 そしてもう一人の少女は高い地位を有しているようだが、偉そうな素振りは無い。ただ淑女足る教育をされているであろうことは、雰囲気で伝わってくる。更に自ら死者を弔おうとするその瞳には哀悼と使命感の混ざった強い意思が感じられた。
 暫く話し合ったが、主の説得が無理だと分かった青年は、渋々といった体で村の中に二人を案内した。
 村の中では凄惨な光景が拡がっていた。
 建物は殆ど崩れ破壊されている。その所々に夥しい量の血の痕。もう地面や壁にこびりついて固まっているようだ。そして同じようにあちこちに倒れている人の身体。道端には手や足の一部が時々落ちている。中には臓物もあった。彼女等はそれらを一ヶ所に集め、枯れ木を積んで火をくべた。村の広場であった所に、大きな弔いの焔が灯される。
 三人はその炎を静かに見ていた。自国の民でないとはいえ、一般人が無慈悲に蹂躙されるのは、彼等としても許せることではない。
 「アイリス様、お洋服が汚れています。近くの泉で洗い流しませんか?」  
 護衛の女が主の少女に話し掛けた。三人の服や鎧は遺体の血で汚れていた。それに、遺体は腐敗も進んでいたので少し鼻につく臭いがする。
 「・・・そうですね。まだアルバート王国の方々も当分来ないでしょうし、水場で少し拭ってきます。」 
 自分の服を見てあらためてひどく汚れていることに気がついたアイリスは、洗い流すことにした。
 「かしこまりました。・・ウィルは火の番をしていなさい。」 
 女は隣の青年に言った。言い方が少しきついような気もする。
 「はいはい、わかってますよ姉さん。」       
 どうやら青年と女は姉弟らしい。二人とも美男美女なので分かりにくいが、そういわれれば何処と無く顔立ちが似ているかもしれない。
 「すいません、ウィル。レイアを暫くお借りしますね。」  
 少女にそう言われると、ウィルは先程とは打って変わって背筋をピント伸ばし、畏まった表情になった。
 「いえ!愚姉ではありますが、どうぞご自由にお使いください!時間も気になさらず結構です。」
 そう言って愚姉といわれて冷たい目を向けてくる姉を無視して、アイリスを送り出したウィルだった。          
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