国助く禍津剣

dada

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 「・・・うまい。・・」
 日も落ち、夕食を食べ出した一同。今は教会の中で焚き火をしながらアキラが造った鍋を囲んでいる。
 野鳥の肉を小枝の串を打って塩焼きにしたものや、アキラが持参していたバケットのパンが皆の傍らに配られている。
 今日のメインは言うまでもなく様々な食材を突っ込んだ鍋だ。材料は森で採れた山菜と根芋、川で捕れた魚。それらを豪快に切り分けたアキラは悉く鍋に放り込んでいき、グツグツと煮込んだ。途中、調味料で味付けはしていたがそれ以外は特に目立った調理はしていない。出てきたあくを掬うぐらいだろうか。
 ほぼ煮込んだだけの鍋ではあったが、それを食べる皆にはかなり好評だった。
 「美味しい!これは何というお料理なんですか?アルバート王国の伝統料理か何かでしょうか?」
 興奮した様子でアイリスはアキラに話し掛けた。彼女の隣のレイアは無言で何度も匙を口に運んでいる。どうやら彼女にも気に入られたようだ。
 「ただ材料を突っ込んで煮込んだだけです。」
 アキラの言い分はこうだ。でもそれは本当の事である。
 基になる出し汁はぶつ切りにした魚の頭や骨から勝手に出る。それに芋、山菜の順で入れて火が入ったら味付けをするだけだ。武神兵団御用達の豆を発行させた調味料等も使ったが、ただそれだけ。
 「旨い。このこくのある調味料、これがスープを上質な味に纏めあげている。」
 舌鼓を打ちながら、ウィルが真面目な顔で評論家のような事を言っていたが、アキラとしてはまあ、いつもどおりの出来だ。
 その後も和やかに食事は進み、皆満腹になって休むことになった。(食事の途中、鳥のモモ肉にかぶり付くアイリスを見てレイアがあたふたしていたのは面白かった)
 
 翌朝、皆身支度を早々に整え、目的地の塔に向かった。塔までは馬で約二時間の距離だ。道中は特にアクシデントも無く、無事に辿り着いた。
 
 「やっぱり結界があるね。どうする?」
 ソフィーが、塔の入り口の巨大な門に設置されている結界をどうするか確認した。これは並大抵の力ではびくともしない強力な結界だ。これのせいで塔の中の魔物達は外に出ることができず、魔物同士で殺し合いをさせられているはず。
 当然それはロラン王国の者達も知っていることだ。
 「我が国より、結界破壊の宝具を持参しています。それを使いましょう。」
  そう言いながらウィルは自分の荷物からキラキラと輝くクリスタルを取り出した。
 「いや、大丈夫です。これぐらいは」
 そう言ってアキラはスッと前に出ると、両腰に差してある短刀を抜いた。と思ったらそのまま元の鞘に戻す。
 「・・?・・えっと?」
 アイリスが意味がわからず戸惑い、隣のウィルに聞いてみようと顔を向けると、彼は唖然とした顔をしていた。
 「速い、ほぼ見えませんでした。」
 声を先に出したのはレイアだ。ウィルはまだ声を発することができない。絶句しているといっていい。
 「エレイン、塔の周りに新しいの頼む。」
 アキラは何事もないように言って、眼前の扉を軽く蹴飛ばす。すると扉は無数に切れ目が入り、がらがらと崩れ落ちた。鋼鉄の扉は厚さが十センチはある重厚な造りだったようだ。その重たい瓦礫の山を埃でも払うかのようにアキラが足で端っこに寄せている。
 「・・・一体、どのような身体の造りをしているのだ?・・」
 アキラの常識を越えた力を見て、ウィルは思わず自問自答するように小さな声で呟いていた。直ぐにハッとして周りを見たが、幸運な事に誰にも聞こえていなかったらしい。
 「まったく、壊す方は簡単でいいよ、・・・新しく張るのは結構疲れるんだから。」
 エレインはぶつくさ文句を言いながらまさにあっという間に新しく以前より強力な結界を張り直した。
 これは先程まであったものと同じ、術者が許す者しか通ることが出来ない結界だ。先にあったものは古代の術士が張った結界で魔物やアキラ達は一切通ることが出来ない。恐らくその本人しか通れないような作りであった筈だ。
 「すごい!武神兵団の方達はやはり英雄と呼ばれるような方ばかりなのですね!」
  アキラとエレインを見てアイリスは率直な称賛を述べる。
 「ふっふっふ。まあ、うちではこれぐらいは普通です。」
 二人ではなく何故かソフィーが仰け反って鼻高々に答えた。
 「中に入ります。皆気を付けて進みましょう。」
 そんな彼女を無視してアキラは皆を扇動し塔に入って行った。
 
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