【完結】人魚と同棲始めました~海の秘密と愛の絆~

花城カイ

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同棲の始まり

悪夢

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 悪い夢だと思った。
 死んだと聞かされただけでも気分が悪いのに、ただ生き返ったのではなく、フィンによって生かされているだなんて。

 途端に、ルカは顔色を失くす。
 何か得体の知れないものが、自分の身体を支配している気がした。

「フザけんなっっ!お前、人の身体を何、勝手に――っっ!!」
 思わず、立ち上がってそう叫んだルカを、フィンは不思議そうに眺めた。
「どうして怒るんだ?」
「当たり前だろうがっ!大体、お前、何のために――、何でオレにそんな事したんだ?!」
「ルカが、あんまり綺麗な“赤”だったから。」
「は?何、言ってんだ?意味わかんねぇ・・・。」
「オレも、お前がそんなに怒る理由がわからない。せっかく生き返ったのに、何が不満なんだ?お前はあのまま死にたかったのか?」

 首をかしげるフィンを、怒りでワナワナと震えてルカは見ていた。

 ――何が不満かって、そんな事もわからねぇのかよ?!

 別にルカだって、死にたかったのではない。
 単純に命を救ってくれただけなら、感謝の気持ちだってある。

 けれど、これは普通じゃない。
 ルカの命は、一週間前に終わるはずだったのだ。
 それを、このフィンという人魚が興味本位で中途半端に蘇らせた。
 ルカには、そうとしか思えなかった。

「ようやく状況が飲み込めて来たぜ?要するに、オレが今、生き存えているのは、お前の気まぐれで。お前の気分次第で、オレの命なんか、どうにでもなるって事なんだな?!」
 皮肉たっぷりに言ってやれば、フィンも心外そうな顔をして。
「そんなつもりはない。」
「信用できるかよ。どっちにしたって、オレの心臓を握ってるのはお前って事だろ?」

 それが真実だからか、フィンは何も言い返そうとはいなかった。
 ただ少し、気落ちしたように俯くだけで。
 一方、ルカは怒りが収まらず、ただ感情のままに声を荒げるしかない。

「何なんだよ、お前? 何がしたいんだよ?!」
「・・・ルカ。」

 不意にフィンの手が、ルカへと伸ばされて。
 けれども、ルカはその手をパンと叩き落とした。

「触るな!もう、お前、出てけよ!!」
 ギッと強く睨みつければ、フィンも大人しく手を引いて、青い目を伏せる。

「すまない。お前を怒らせるつもりはなかった。ただオレは――。生きているお前が見たかっただけなんだ。確かに、オレは勝手なマネをしたのかもしれない。けど、あの時、お前は死んでいたし、お前の気持ちを聞いてやる事はできなかった。」
「お前、オレのせいだって言いたいのか?!」

 低く唸ったルカに、フィンは首を横に振るとその目に真剣な光を宿して。

「そうじゃない。だから、今度はお前が決めろ。」
「・・・は?」

 一方的に出された提案に、ルカは怪訝な顔をした。
 涼しげな青の瞳が真っ直ぐにルカを映す。

「このまま生きたいのか、それとも死にたいのか。お前が好きな方を選べ。深夜0時、灯台の対岸にある岩場まで来い。そこで答えを聞く。」
「ちょ・・・いきなり、何、言って――」

 すると、フィンの腕が伸び、ルカの腕をぐっと強引に引き寄せる。

 息が触れ合う程の至近距離。
 ルカに抵抗する間も与えない。

「――ルカ。お前が生きたいと言うなら、オレが生かしてやる。オレだけがお前を生かしてやれる事を忘れるな。」
「・・・じゃ、じゃあ、死にたいって言ったら、どうなるんだよ?」
「そうだな。このまま放っておいても七日後には死ぬが、そこまで待つ必要もない。今夜、オレが海へ引きずり込んでやる。」

 まるで唄うような声でフィンが言う。
 何か恐ろしいものでも見るように、ルカは呆然とフィンを見つめていた。
 そうして、フィンは穏やかな笑みを浮かべて、ルカの部屋を去っていく。

「ルカ、お前の好きにすればいい。」

 そう一言だけ残して。

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