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第二部 義弟の闇落ちを防ぎます!!

03.入学式です!早速ゲームの登場人物にお会いしました

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 六年経っても新婚感の抜けない、幸せいっぱいの両親に見送られながら私達は学園へと出発した。

 学園に到着すると、私は言葉を失った。

「わぁ……!!」
(凄い!! めちゃくちゃ『宝石に誓いを』の世界だわ!! 想像していた十倍はきらびやかだし、想像していた百倍は輝いていて眩しい……!)

 学園の大きさは王城に負けず劣らない、とルイス家にあった書物に書いてあったが、まさにその通りだった。横にも縦にも大きな建物は圧巻で、いつまでも眺めていられるほどの存在感だった。

 ただ、乙女ゲームの舞台ということはジョシュアにとっては知る由もないので、必要以上に顔に出さずにただひたすら心の中で興奮していた。そのまま入学式の入口へと向かった。
入学式はクラスごとに着席する形式だったので、会場の入り口で確認をする。

「姉様とクラスが違う……」

 寂しそうな声が耳に届く中、個人的には予想通りだなと感じてしまった。

「そんな気はしていたけど……」
「えっ」
「何となく、姉弟は同じクラスにならない気がして。だって名前を呼ぶ時とか大変じゃない? ルイスさんって呼んで二人返事されたら先生は困るでしょう」
「そう、だね。確かに同じだと先生は名前を呼ぶのか……うん。それなら我慢できるかな」

 寂しそうな声から一転して、どこか納得した笑みをこぼしていた。理解の早いジョシュアを見守ると、早速指定された席へと向かうことにした。

(……とはいえ。ジョシュア、大丈夫かな)

 家族は心中していないし、ルイス家のままなのだが、ジョシュアの友人関係構築には不安が残っていた。

(いわゆる一匹狼のポジションなんだけど……まぁ、ここもゲームとは異なるはず)

 まだ始まったばかりの今気にしても仕方ない。そう言い聞かせながら、自分の椅子に着席するのだった。

 入学式では特に大きな何かが起こることなく、そのまま振り分けられたクラスの教室へと向かうことになった。

(入学式が眠いのはどこも一緒なのね)

 眠気を浮かべながら教室に入ると、興奮で目が覚めるのだった。

(いや、完璧だわ。たかが教室、されど教室よ!)

 ジョシュアがいないのをいいことに、不自然にならない程度に教室をきょろきょろと見回していた。

(座るのは自由席みたい……)

 それに気が付くと、反射的に一番後ろの席の窓際へと向かった。

(窓際なら目立たず静かに過ごせそう……)

 先程はジョシュアの交流関係を心配していた私だが、実は自分も友人がいないのだった。一緒に座る人もいなかったので、気配を消すようにちょこんと隅っこに座る。

(友達……作りたいけど、なんだか既にグループができている雰囲気なのよね)

 教室にそっと足を踏み入れた時から薄々感じていたのは、男女共に既に仲良しのグループが決まっている光景が見られた。

(交流関係を積極的に作ろうとせずに、家から出なかったのは私だからなぁ……今更後悔しても遅い)

 というのにも、しっかりと理由があるのだ。私が十一歳を迎える頃、そろそろ他家の貴族子女と仲を構築しないと思ってお父様に各地のお茶会の参加をしようかと尋ねてみれば「家のためを思っているのなら大丈夫だ。それよりも好きなことをして伸び伸びと過ごしてほしい」と言われてしまった。

 私が実はお父様に似て人見知りなのを見抜かれていたのか、その配慮の言葉に甘えた結果友人が一人もいない状況に至る。

(……さすがに自分から話しかける勇気はない)

 こっそり教室内を観察していれば、突然声をかけられた。

「お隣、座ってもよろしいかしら?」
「!!」

 その声に反応して顔を確認すれば、それは良く知る人だった。

(エリーザ様……!!)

 赤髪かつ縦ロールが特徴的な、公爵令嬢のエリーザ・アプリコット様。彼女は『宝石に誓いを』で何度もお目にかかった、いわゆる王子ルートの悪役令嬢なのだ。さらに凄いのは、悪役令嬢を務めるのは一つのルートだけでなく、ご自身の一つ上の兄であるアプリコット公爵子息のルートの分も務める偉大なお方である。

 悪役令嬢、というからにはもちろんヒロインをいじめ抜く立ち位置であり、私もヒロインとしてプレイする時は何度も対立することがあった。この背景があるからこそ、少しエリーザ様に声をかけられた瞬間、背筋がピンと伸びてしまった。

「ど、どうぞ……!」

 今にも消え入りそうな声で、頷けばエリーザ様は優雅に着席した。さすがは公爵令嬢。一つ一つの動きが洗練されている。

(あ、あまり見すぎると不快になるだろうから空気になろう)

 そう意気込んだ矢先、エリーザ様から再び声をかけられてしまった。

「わたくし、エリーザ・アプリコットですわ」
「…………」

 まさか自己紹介をされるとは思いもしなかったので、一瞬思考が固まってしまった。

「……あ、貴女は?」

 返ってくると思っていた自己紹介が沈黙だったので、エリーザ様はどこか困惑しながら、少し恥ずかしそうにそう尋ねた。

「あっ……私はイヴェット・ルイスです。よろしくお願いいたします、アプリコット様」
「…………」

 背筋を伸ばしてぴしっとお辞儀をして顔を上げれば、エリーザ様はしっかりとこちらを見て答えてくれた。

「……よろしくお願いしますわ、ルイス嬢」

 基本的な挨拶だろう、そう思って体を前に戻そうとすれば、今度は耳を疑うような言葉が飛んできた。

「そ、それで。ルイス嬢のお好きな食べ物は何かしら?」
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