ただ、抱きしめて。

橘 アコ

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18話 メッセージ

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【side:千景】


年明け、実家へ久しぶりに帰省した。

兄貴の家族も来ていたので、一歳半の甥っ子の拓真とも久しぶりに会う。


「拓真、大きくなったなー!覚えてるか?ちーにぃちゃんだぞー」

一歳半の拓真はまだしゃべれないけど、俺のことは覚えていたらしく、奥さんの千里さんの腕の中から両手を伸ばしている。


拓真が可愛くて、自然と笑顔になってしまう。

小さな拓真を抱っこすると……

「ちー」

「え?!俺の名前しゃべれんの?!可愛いー!」

すぐ隣にいた兄貴の尚人にも、
「顔がデレデレだぞー」と、言われた。


「いや、これは仕方ないだろ!くそー。拓真、マジ可愛いいなー!」


今日は、母親が住んでいる実家へ皆んなで集まった。

うちの両親は幼い頃に離婚しているから、父親の方へは別日に行くことになっている。

それぞれの家に行けるくらいには良い関係を築けている。




──久しぶりの家族の再会。

夕食も食べ終わり、奥さんの千里さんが、拓真を寝かしつけに部屋を出た。

兄貴と一緒にソファに座りながらビールを飲んでいたときに「まだ飲むの?」と、母に聞かれた。


「兄貴、どうする?まだ飲む?」

「そうだなー、もう少し飲むか」

「俺たち、まだ起きてるわー」

「はいはい、じゃあ軽く片付けておいてね」


そう言って母親は部屋を出た。


何となく付いているテレビの音の中、久しぶりに兄貴と酒を飲む。

特に会話も無く、缶の飲み口に口を付けながらただボーっとしていた。

程よく酔いが回り、最近の出来事と、昔の記憶が交互に短くフラッシュバックする。

──その全ては、ツキでいっぱいだった。


「……なぁ兄貴」

「ん?どした?」

「……俺、都希くんに会ったわ……」

少し間を開けてから「……いつ?」と、聞かれた。

「あいつ、元気にしてた?」

「うん。変わってなかったよ」

「そっか……」


兄貴の顔を見なくても、その返事の声色から表情が分かってしまう。

けど、兄貴が今、都希くんに対してどんな気持ちでいるのかは分からない。


「もし、また会うことがあったら宜しく言っといてよ」

「……わかった」

兄貴からは、過去を懐かしむような声がした。

(「兄貴がよろしくって言ってたよ……」なんて、言えるはずも無い。……だって、俺が弟だってことすら言えてないんだから……)

「わかった」何て言ったくせに、本当のことを言えない現実に胸がザワついた。


……それ以上、兄貴とは都希くんの話をしなかった。




久しぶりに、実家の自分のベッドで眠る。

ツキに……無性に会いたくなった。


スマホを手に取り、アプリを開くとすぐに出て来る『ツキ』の名前をタップする。

今までのメッセージのやり取りを眺めた。

(全部、返事みじかっ)

素っ気ないツキからの返信が、今更ながら笑えた。


0時も回り、遅い時間だと分かっていたけど、新年の挨拶をまだ送っていなかったことをダシに《今年もよろしく》とだけ送った。

すると、すぐに既読が付いた。

予想外のことに驚いていると、可愛い祈願新年のスタンプの後に、同じように《よろしく》と返信が来た。


たったそれだけのことなのに、酔いが回っているせいなのか、唐突に涙が溢れそうになった。

《次はいつ会える?》

そう送ると《今日》と返事が来た。

《夜そっち行く》

《分かった》

すぐに会う約束が出来たことが幸せで、早く時間が過ぎ去って、明るくなって、すぐに暗くなって欲しくなった。

──ツキに会える。

それだけで、胸が焼けるように熱くなった。



朝になり、「俺が拓真見てるからたまにはデートしてこいよ!」と兄貴達に声を掛けて甥っ子の拓真と家で遊んだ。

(都希くんの子どもだったら絶対に溺愛しちゃうな……まあ、産めないけど)

そんな不可能な妄想をしてしまうくらい、夜が楽しみで仕方なかった。




お昼寝の時間、拓真は兄貴達がいないことを寂しがって愚図ってしまい、母親に手伝ってもらいながら、なんとか寝かしつけた。

(俺って無力だ。ちびっこ一人でこんなに大変なのに、ツキは保育園で働いてるのすげーな)

拓真の寝顔を見ながら、ツキのことばかり考えてしまっていた。


《拓真ねたよー》

兄貴にメッセージを送る。

《ありがとな》
すぐに返事が来た。




「俺、用事出来たから帰るよ!」

「随分急ね。またゴールデンウィークにでも顔見せなさいね」と言われた。

「はいはい、気が向いたらね」


帰り際、「千景くん、拓真と遊んでくれてありがと!」

「千景、またな」

兄貴と千里さんに声をかけてもらい、兄貴に抱っこされながら拓真も手を振ってくれた。

あの頃と変わらない兄貴の笑顔が見える。

拓真とバイバイのタッチをしてから「じゃ、またな」と言って玄関のドアを閉め、大好きな人の元へと急いだ。

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