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第8話 突然のカミングアウト(1)
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とある休日の朝。侑人は心地よい温もりを感じながら目を覚ました。
真っ先に視界に入ったのは高山の端正な寝顔。二人して裸のまま同じベッドで眠りについたことを思い出し、朝から妙にドキドキとしてしまう。
(そういや、自分から連れ込んだんだっけ)
昨夜は接待に出ていたのだが、取引先をタクシーで送ったところで、偶然にも同じ境遇の高山と居合わせたのだ。互いに酒が入っていたこともあって、「どちらの家が近いか」といった流れになり――以下割愛。
とにもかくにも、高山を自宅へ連れ帰ったというわけである。
(まさかこんなふうに寝るとは思わなかったけど……得した気分っつーか)
首の下には高山のたくましい腕があった。ずっと腕枕をしてくれていたのだろうか、甘やかされるのが嬉しくて頬が緩んでしまう。
どうせならもう少しこのままでいたいと思い、そっと侑人は胸元に擦り寄った。温かな体温に包まれながら再び瞼を閉じようとする。
「俺も二度寝しよ……」
と、そのとき。非情にもドアチャイムの音が響いた。
時計を見ればまだ朝の八時過ぎだ。宅配便の心当たりはないし、セールスにしては時間帯が微妙な気がする。
ひとまず居留守を決め込むのだが、チャイムは一向に鳴り止まなかった。
「俺が出るから、侑人は寝てろよ」
高山も目を覚ましたらしく、気怠げにベッドから体を起こす。
「え? それなら俺がっ」
「いいから。昨夜は調子乗って無理させちまったし、足腰つらいだろ?」
侑人の頭を軽く撫でると、高山は下だけ履いて部屋を出ていった。
一人残された侑人は気恥ずかしさを覚えながらも、言われたとおり大人しく待つことにする。
「高山さんってば、俺のこと甘やかしすぎ……そんなだといつまでも返しきれないじゃん」
嬉しいけれど、あまりにくすぐったい。照れを隠すようにモゾモゾと布団の中に潜り込む。
ところがそんな穏やかな空気も、玄関から聞こえてきた声によって一変した。
「だ、誰だお前は! ――おい侑人、いるんだろ!?」
突然の怒号は高山のものではない。続けざまにバタバタと部屋に上がってくる音がして、侑人は青ざめた。
「やばっ!」
住まいが共同玄関付きのマンションでないことが悔やまれる。慌ててベッドから飛び起きようとしたものの、勢い余って床に転げ落ちてしまった。
それと同時に、けたたましい音を立てて開かれるドア。
鬼のような形相で飛び込んできたのは、侑人と瓜二つの兄・瀬名恭介だった。
「「あ」」
二人の兄弟の声が重なる。
恭介は侑人の姿を見るなり、わなわなと唇を震わせた。それもそのはず――侑人は全裸で、さらには臀部を突き出すような格好で転んでいたのだから。
「あ、の……兄さん。これは」
なんとか取り繕おうとするが、思わぬ事態に思考が追い付かない。
そうして、朝から兄の甲高い悲鳴が響くこととなったのだった。
真っ先に視界に入ったのは高山の端正な寝顔。二人して裸のまま同じベッドで眠りについたことを思い出し、朝から妙にドキドキとしてしまう。
(そういや、自分から連れ込んだんだっけ)
昨夜は接待に出ていたのだが、取引先をタクシーで送ったところで、偶然にも同じ境遇の高山と居合わせたのだ。互いに酒が入っていたこともあって、「どちらの家が近いか」といった流れになり――以下割愛。
とにもかくにも、高山を自宅へ連れ帰ったというわけである。
(まさかこんなふうに寝るとは思わなかったけど……得した気分っつーか)
首の下には高山のたくましい腕があった。ずっと腕枕をしてくれていたのだろうか、甘やかされるのが嬉しくて頬が緩んでしまう。
どうせならもう少しこのままでいたいと思い、そっと侑人は胸元に擦り寄った。温かな体温に包まれながら再び瞼を閉じようとする。
「俺も二度寝しよ……」
と、そのとき。非情にもドアチャイムの音が響いた。
時計を見ればまだ朝の八時過ぎだ。宅配便の心当たりはないし、セールスにしては時間帯が微妙な気がする。
ひとまず居留守を決め込むのだが、チャイムは一向に鳴り止まなかった。
「俺が出るから、侑人は寝てろよ」
高山も目を覚ましたらしく、気怠げにベッドから体を起こす。
「え? それなら俺がっ」
「いいから。昨夜は調子乗って無理させちまったし、足腰つらいだろ?」
侑人の頭を軽く撫でると、高山は下だけ履いて部屋を出ていった。
一人残された侑人は気恥ずかしさを覚えながらも、言われたとおり大人しく待つことにする。
「高山さんってば、俺のこと甘やかしすぎ……そんなだといつまでも返しきれないじゃん」
嬉しいけれど、あまりにくすぐったい。照れを隠すようにモゾモゾと布団の中に潜り込む。
ところがそんな穏やかな空気も、玄関から聞こえてきた声によって一変した。
「だ、誰だお前は! ――おい侑人、いるんだろ!?」
突然の怒号は高山のものではない。続けざまにバタバタと部屋に上がってくる音がして、侑人は青ざめた。
「やばっ!」
住まいが共同玄関付きのマンションでないことが悔やまれる。慌ててベッドから飛び起きようとしたものの、勢い余って床に転げ落ちてしまった。
それと同時に、けたたましい音を立てて開かれるドア。
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「あ、の……兄さん。これは」
なんとか取り繕おうとするが、思わぬ事態に思考が追い付かない。
そうして、朝から兄の甲高い悲鳴が響くこととなったのだった。
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