魁!断筆姉さん!!

西洋司

文字の大きさ
93 / 128

12 国王瀬田良平に謁見する_02

しおりを挟む
   *          *

 斎木さんの運転する車両は、商業街区で混雑した中をのろのろと進んでいく。

 その斎木さんは、こちらから見て、特に表情を出している感じでもなく、……。
 おやぁ? と、私(英子)は思った。

 だって、以前トラヴィス伯爵の領都で、住人達が集まってきたら、斎木さん、かなり苛ついていた感じだったのに。

 でも、今はそんなでもなく、……。カーラジオのCDで流しているフリージャズの音楽に、軽く興じている感じだったから。

「斎木さん、……。もしかして、王都にきて、結構ご機嫌だったりします?」

「……、まぁそうですな! 王都はいいですよ!」

「やはり、ここが日本の生命線だからですかね?」

 ちょっと、深掘りした質問を入れてみた。
 何というか、このまま表面的な関係、綺麗ごとだけで終わってはいけないと思ったから。

「おやぁ? 英子さんも、なかなか仰るようになりましたな?」

「はぁい。私にとっても、ここが生命線ですから!」

「……、なるほど」

「はいっ!」

「……」

 すると、斎木さんはそこからしばらくの間、黙ってしまった。
 こちらとしては、特に気マズいワケでもなく、これがデフォルトだったので、……。

 特段、気にするでもなく、夕暮れ時の喧騒の街の風景を、フリージャズの音楽に沁みながら、しばらくぼんやりと眺めていた。

「先ずは、無事英子さんを王都まで連れてくることができました」

 えっ!? 今、斎木さん何て言ったの?
 斎木さんの方にしばらく意識を向けていなかったから、聞き漏らしてしまった。

「今、何か仰いましたか?」

 こちらから訊ね返すと、斎木さんは少しだけ眉間に皺を寄せて、……。

「英子さん、これからあなたが向かうのは王宮だ。王宮では様々な言葉が行き交い、その多くが耳に障る内容のものだったりします。でもね、これまでのように聞き漏らしたことで、大きな損失を被ることもあり得るのです。それだけは、覚悟して下さいね!」

「……、はい」

 おそらく、これまで斎木さんが貴族達のところに寄ってきたのは、私に実地でこの世界の権力者達に触れさせる意味があったのではないか?

 もしかすると、私の不備で命すら落としかねない事態すら発生するのではないだろうか?

 斎木さんは、この世界の案内人であると同時に、私のメンターだ。
 そんな斎木さんが、私をこうして心配してくれるのは、たぶんここまでだろう。

 私が失敗すれば、そこで切り捨てて、……。しばらく後に、新しいクリエーターをここに連れてくる。

 何だろう。松本零士の『銀河鉄道999』のメーテルが、星野鉄郎のような有意な若者を母星まで連れていく話と、どこか似ている気がする、……。

 私はふと、ラジオを切った。斎木さんは、特に何も言わない、……。

 商業街区を進んでいくと、まだ戦後復興期とのことなので、あちこちの建築中の建物からノミや槌の音が聞こえてくる。

「今は、職人を確保するだけでも大変な状況なんですな!」

「……、そうでしたか」

 そんな街中を抜けて閑静なエリアになると、大きな公園があり、……。
 そして、その先に目指す王宮があった。
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

3歳で捨てられた件

玲羅
恋愛
前世の記憶を持つ者が1000人に1人は居る時代。 それゆえに変わった子供扱いをされ、疎まれて捨てられた少女、キャプシーヌ。拾ったのは宰相を務めるフェルナー侯爵。 キャプシーヌの運命が再度変わったのは貴族学院入学後だった。

レクサス転生――ローン付きSUVで始める異世界物流革命

しばたろう
ファンタジー
「馬車では一日かかる。だが、この鉄の馬なら二時間だ」 ローン残高を抱えたまま異世界に転移した新卒社会人・タカセ。 唯一の武器は、レクサスSUVと物流設計の知識。 命を救い、 盗賊を退け、 馬車組合と交渉し、 サスペンションとコンテナ規格で街を変える。 レクサス一台から始まる、リアル成り上がり。 これはチート無双ではない。 仕組みで勝つ物語だ。

異世界に転移したら、孤児院でごはん係になりました

雪月夜狐
ファンタジー
ある日突然、異世界に転移してしまったユウ。 気がつけば、そこは辺境にある小さな孤児院だった。 剣も魔法も使えないユウにできるのは、 子供たちのごはんを作り、洗濯をして、寝かしつけをすることだけ。 ……のはずが、なぜか料理や家事といった 日常のことだけが、やたらとうまくいく。 無口な男の子、甘えん坊の女の子、元気いっぱいな年長組。 個性豊かな子供たちに囲まれて、 ユウは孤児院の「ごはん係」として、毎日を過ごしていく。 やがて、かつてこの孤児院で育った冒険者や商人たちも顔を出し、 孤児院は少しずつ、人が集まる場所になっていく。 戦わない、争わない。 ただ、ごはんを作って、今日をちゃんと暮らすだけ。 ほんわか天然な世話係と子供たちの日常を描く、 やさしい異世界孤児院ファンタジー。

私と母のサバイバル

だましだまし
ファンタジー
侯爵家の庶子だが唯一の直系の子として育てられた令嬢シェリー。 しかしある日、母と共に魔物が出る森に捨てられてしまった。 希望を諦めず森を進もう。 そう決意するシェリーに異変が起きた。 「私、別世界の前世があるみたい」 前世の知識を駆使し、二人は無事森を抜けられるのだろうか…?

異世界に落ちて、溺愛されました。

恋愛
満月の月明かりの中、自宅への帰り道に、穴に落ちた私。 落ちた先は異世界。そこで、私を番と話す人に溺愛されました。

最弱白竜ですが、なぜか学園最強の銀竜に番認定されました

斉藤めめめ
恋愛
竜の血を引く者だけが貴族になれるこの世界で、白竜は最も格の低い竜の証。 白竜の男爵令嬢リーゼロッテは、特待生として国内最高峰の王立竜騎学園に入学する。待っていたのは上位貴族からの蔑みと、学園を支配する四人の御曹司「四竜」。 その筆頭、銀竜公爵家の嫡男ルシアンに初日から啖呵を切ったリーゼは、いじめと嫉妬の嵐に巻き込まれていく。 それでも彼女は媚びない、逃げない、折れない。 やがてルシアンはリーゼから目が離せなくなり―― 白竜の少女が、学園と王国の運命を変える。 身分差×竜×学園ラブファンタジー、開幕。

異世界カントリーライフ ~妖精たちと季節を楽しむ日々~

楠富 つかさ
ファンタジー
 都会で忙しさに追われる日々を送っていた主人公は、ふと目を覚ますと異世界の田舎にいた。小さな家と畑、そして妖精たちに囲まれ、四季折々の自然に癒されるスローライフが始まる。時間に縛られず、野菜を育てたり、見知らぬスパイスで料理に挑戦したりと、心温まる日々を満喫する主人公。現代では得られなかった安らぎを感じながら、妖精たちと共に暮らす異世界で、新しい自分を見つける物語。

アイテムボックスの最も冴えた使い方~チュートリアル1億回で最強になったが、実力隠してアイテムボックス内でスローライフしつつ駄竜とたわむれる~

うみ
ファンタジー
「アイテムボックス発動 収納 自分自身!」  これしかないと思った!   自宅で休んでいたら突然異世界に拉致され、邪蒼竜と名乗る強大なドラゴンを前にして絶対絶命のピンチに陥っていたのだから。  奴に言われるがままステータスと叫んだら、アイテムボックスというスキルを持っていることが分かった。  得た能力を使って何とかピンチを逃れようとし、思いついたアイデアを咄嗟に実行に移したんだ。  直後、俺の体はアイテムボックスの中に入り、難を逃れることができた。  このまま戻っても捻りつぶされるだけだ。  そこで、アイテムボックスの中は時間が流れないことを利用し、チュートリアルバトルを繰り返すこと1億回。ついにレベルがカンストする。  アイテムボックスの外に出た俺はドラゴンの角を折り、危機を脱する。  助けた竜の巫女と共に彼女の村へ向かうことになった俺だったが――。

処理中です...