219 / 220
第9章
苦悩
しおりを挟む
王国は豊かで偉大で尊い一族が統治する素晴らしい国だと教師や母親の宮殿以外の侍従や侍女は言い、母親の宮殿の者は実家の評価などや王を敬う様にとしか言われていなかった。他宮では封建制度における格差に基づく発言や態度により、平民を下に見下すことがあったが、母の宮殿では民がいるからこそ所領が繁栄するという実家の考えから、平民を必要以上に見下すことはなかった。但し領内や宮殿内だけでのことであり、外では周りに合わせつつも理不尽な体罰や罵倒だけは避けて過ごしていた。
上の王子は学園に上がってから環境が一変した。平民をあからさまに侮辱する発言や行為や王族や上級貴族だけが真の支配であり尊い人間であって、人間以外の人族は役に立つ能力がなければ人外の奴隷の様に扱う。その事を憤慨して口を挟もうとしたら、自分の学院内の専属侍従になった者に嗜められた。『これは母親の宮殿以外の日常で常識です』だから見て見ぬふりをして下さいと。
入学当初は何度かその繰り返しで人気のない場所で憤慨していたが、最近では表立って感情を爆発させることなく静観出来るようになった。ご自分が理不尽な事で下級貴族や平民に罰したり、罵倒しなければ良いのです。他の王族や上級貴族とは距離を置き中立の立場として振る舞えば良いと。
いつしか阿る者や礼節を弁えない者には厳しく、身分や地位に応じた者へは親しく接し、同じ王族や力のある上級貴族には敬意を持って接し、人畜無害の中立派として受け入れられた。
それでも四六時中学園で生活していくと段々学園内のルールや雰囲気に染まっていく。後ろ盾のない王族は学園内の上級貴族の寮に個室を与えられる。当然有力な公爵や侯爵の上級生が仕切っているためだ。
今回の慰問ですっかり忘れていた入学当初の気持ちが思い起こされた。あれ以上にひどい環境にいる者達が居るのだろうか?という疑問も生まれた。学園は平等と謳っているのに食堂は別だったり、王侯貴族には寮に侍従または侍女を認めていたり、授業内容も一部違ったり、選択科目が違ったりしているのに。
もう少し国のことを知りたいと幼いながらに思うものの、それほど裕福ではない母の実家の侯爵家では、市中にお忍びで出かけるための充分な警護を用意出来ないため、宰相など王の側近のいずれが認める視察以外は出来ない。つまり知りたい情報とは距離的にも環境的にも離れた場所しか出かけることが出来ないのだ。
母親の宮殿にいる者も王族としては低級使用人と蔑まれる身分ではあるが、最低でも上級市民である商人や一代貴族の末裔だったりで、下級市民の事は孤児院や修道院など限られた施設や噂か、奴隷の存在しか知らない。
王国の主な都市は魔物や魔獣が多い地域の無骨で頑丈な城壁程ではないが、下級市民でも最下層の者を排除したり、住民が容易に逃げ出さない様に塀で囲まれている。表向きは盗賊などから市民を守るためという理屈で。
王族の理想的な在り方と現実の乖離に戸惑うが、まだ学園の事を知らない弟や幼い妹に話せる内容でもなく、ましてや使用人に話せる訳もなく。母親か母親の実家の祖父母か、伯父叔母達としか話せない内容だ。そんな機会はある程度の長い休暇か、王宮行事の一部だけ。
何が正しく、何が間違っているかも分からず、何をしたらいいか途方に暮れていた。
そんな葛藤の最中に王国内の綻びを更に大きくするきっかけになる事件が起こる。
母親の実家の侯爵家が冤罪で領地転地された公爵家を擁護し、冤罪の可能性があると言う発言をしたとして裁判にかけられる事になった。もちろんその発言は公式の場でした訳ではなく自身の邸内での会話であり、本来なら誰にも耳にする筈のない会話である。何故それが裁判沙汰に発展したのか?
それは侯爵が偶然に冤罪の証拠に繋がることを聞いてしまい、その場で本人は認識していなかったのに、相手に知られてしまい侯爵家の家人を1人を買収して潜り込ませ、探らせていたからだった。
上の王子は学園に上がってから環境が一変した。平民をあからさまに侮辱する発言や行為や王族や上級貴族だけが真の支配であり尊い人間であって、人間以外の人族は役に立つ能力がなければ人外の奴隷の様に扱う。その事を憤慨して口を挟もうとしたら、自分の学院内の専属侍従になった者に嗜められた。『これは母親の宮殿以外の日常で常識です』だから見て見ぬふりをして下さいと。
入学当初は何度かその繰り返しで人気のない場所で憤慨していたが、最近では表立って感情を爆発させることなく静観出来るようになった。ご自分が理不尽な事で下級貴族や平民に罰したり、罵倒しなければ良いのです。他の王族や上級貴族とは距離を置き中立の立場として振る舞えば良いと。
いつしか阿る者や礼節を弁えない者には厳しく、身分や地位に応じた者へは親しく接し、同じ王族や力のある上級貴族には敬意を持って接し、人畜無害の中立派として受け入れられた。
それでも四六時中学園で生活していくと段々学園内のルールや雰囲気に染まっていく。後ろ盾のない王族は学園内の上級貴族の寮に個室を与えられる。当然有力な公爵や侯爵の上級生が仕切っているためだ。
今回の慰問ですっかり忘れていた入学当初の気持ちが思い起こされた。あれ以上にひどい環境にいる者達が居るのだろうか?という疑問も生まれた。学園は平等と謳っているのに食堂は別だったり、王侯貴族には寮に侍従または侍女を認めていたり、授業内容も一部違ったり、選択科目が違ったりしているのに。
もう少し国のことを知りたいと幼いながらに思うものの、それほど裕福ではない母の実家の侯爵家では、市中にお忍びで出かけるための充分な警護を用意出来ないため、宰相など王の側近のいずれが認める視察以外は出来ない。つまり知りたい情報とは距離的にも環境的にも離れた場所しか出かけることが出来ないのだ。
母親の宮殿にいる者も王族としては低級使用人と蔑まれる身分ではあるが、最低でも上級市民である商人や一代貴族の末裔だったりで、下級市民の事は孤児院や修道院など限られた施設や噂か、奴隷の存在しか知らない。
王国の主な都市は魔物や魔獣が多い地域の無骨で頑丈な城壁程ではないが、下級市民でも最下層の者を排除したり、住民が容易に逃げ出さない様に塀で囲まれている。表向きは盗賊などから市民を守るためという理屈で。
王族の理想的な在り方と現実の乖離に戸惑うが、まだ学園の事を知らない弟や幼い妹に話せる内容でもなく、ましてや使用人に話せる訳もなく。母親か母親の実家の祖父母か、伯父叔母達としか話せない内容だ。そんな機会はある程度の長い休暇か、王宮行事の一部だけ。
何が正しく、何が間違っているかも分からず、何をしたらいいか途方に暮れていた。
そんな葛藤の最中に王国内の綻びを更に大きくするきっかけになる事件が起こる。
母親の実家の侯爵家が冤罪で領地転地された公爵家を擁護し、冤罪の可能性があると言う発言をしたとして裁判にかけられる事になった。もちろんその発言は公式の場でした訳ではなく自身の邸内での会話であり、本来なら誰にも耳にする筈のない会話である。何故それが裁判沙汰に発展したのか?
それは侯爵が偶然に冤罪の証拠に繋がることを聞いてしまい、その場で本人は認識していなかったのに、相手に知られてしまい侯爵家の家人を1人を買収して潜り込ませ、探らせていたからだった。
0
あなたにおすすめの小説
転生ちびっ子の魔物研究所〜ほのぼの家族に溢れんばかりの愛情を受けスローライフを送っていたら規格外の子どもに育っていました〜
幸運寺大大吉丸◎ 書籍発売中
ファンタジー
高校生の涼太は交通事故で死んでしまったところを優しい神様達に助けられて、異世界に転生させて貰える事になった。
辺境伯家の末っ子のアクシアに転生した彼は色々な人に愛されながら、そこに住む色々な魔物や植物に興味を抱き、研究する気ままな生活を送る事になる。
元・神獣の世話係 ~神獣さえいればいいと解雇されたけど、心優しいもふもふ神獣は私についてくるようです!~
草乃葉オウル ◆ 書籍発売中
ファンタジー
黒き狼の神獣ガルーと契約を交わし、魔人との戦争を勝利に導いた勇者が天寿をまっとうした。
勇者の養女セフィラは悲しみに暮れつつも、婚約者である王国の王子と幸せに生きていくことを誓う。
だが、王子にとってセフィラは勇者に取り入るための道具でしかなかった。
勇者亡き今、王子はセフィラとの婚約を破棄し、新たな神獣の契約者となって力による国民の支配を目論む。
しかし、ガルーと契約を交わしていたのは最初から勇者ではなくセフィラだったのだ!
真実を知って今さら媚びてくる王子に別れを告げ、セフィラはガルーの背に乗ってお城を飛び出す。
これは少女と世話焼き神獣の癒しに満ちた気ままな旅の物語!
猫好きのぼっちおじさん、招かれた異世界で気ままに【亜空間倉庫】で移動販売を始める
遥風 かずら
ファンタジー
【HOTランキング1位作品(9月2週目)】
猫好きを公言する独身おじさん麦山湯治(49)は商売で使っているキッチンカーを車検に出し、常連カードの更新も兼ねていつもの猫カフェに来ていた。猫カフェの一番人気かつ美人トラ猫のコムギに特に好かれており、湯治が声をかけなくても、自発的に膝に乗ってきては抱っこを要求されるほどの猫好き上級者でもあった。
そんないつものもふもふタイム中、スタッフに信頼されている湯治は他の客がいないこともあって、数分ほど猫たちの見守りを頼まれる。二つ返事で猫たちに温かい眼差しを向ける湯治。そんな時、コムギに手招きをされた湯治は細長い廊下をついて歩く。おかしいと感じながら延々と続く長い廊下を進んだ湯治だったが、コムギが突然湯治の顔をめがけて引き返してくる。怒ることのない湯治がコムギを顔から離して目を開けると、そこは猫カフェではなくのどかな厩舎の中。
まるで招かれるように異世界に降り立った湯治は、好きな猫と一緒に生きることを目指して外に向かうのだった。
アイテムボックスの最も冴えた使い方~チュートリアル1億回で最強になったが、実力隠してアイテムボックス内でスローライフしつつ駄竜とたわむれる~
うみ
ファンタジー
「アイテムボックス発動 収納 自分自身!」
これしかないと思った!
自宅で休んでいたら突然異世界に拉致され、邪蒼竜と名乗る強大なドラゴンを前にして絶対絶命のピンチに陥っていたのだから。
奴に言われるがままステータスと叫んだら、アイテムボックスというスキルを持っていることが分かった。
得た能力を使って何とかピンチを逃れようとし、思いついたアイデアを咄嗟に実行に移したんだ。
直後、俺の体はアイテムボックスの中に入り、難を逃れることができた。
このまま戻っても捻りつぶされるだけだ。
そこで、アイテムボックスの中は時間が流れないことを利用し、チュートリアルバトルを繰り返すこと1億回。ついにレベルがカンストする。
アイテムボックスの外に出た俺はドラゴンの角を折り、危機を脱する。
助けた竜の巫女と共に彼女の村へ向かうことになった俺だったが――。
家族転生 ~父、勇者 母、大魔導師 兄、宰相 姉、公爵夫人 弟、S級暗殺者 妹、宮廷薬師 ……俺、門番~
北条新九郎
ファンタジー
三好家は一家揃って全滅し、そして一家揃って異世界転生を果たしていた。
父は勇者として、母は大魔導師として異世界で名声を博し、現地人の期待に応えて魔王討伐に旅立つ。またその子供たちも兄は宰相、姉は公爵夫人、弟はS級暗殺者、妹は宮廷薬師として異世界を謳歌していた。
ただ、三好家第三子の神太郎だけは異世界において冴えない立場だった。
彼の職業は………………ただの門番である。
そして、そんな彼の目的はスローライフを送りつつ、異世界ハーレムを作ることだった。
二月から週二回更新になります。お気に入り・感想、宜しくお願いします。
クラス転移したら種族が変化してたけどとりあえず生きる
アルカス
ファンタジー
16歳になったばかりの高校2年の主人公。
でも、主人公は昔から体が弱くなかなか学校に通えなかった。
でも学校には、行っても俺に声をかけてくれる親友はいた。
その日も体の調子が良くなり、親友と久しぶりの学校に行きHRが終わり先生が出ていったとき、クラスが眩しい光に包まれた。
そして僕は一人、違う場所に飛ばされいた。
転生能無し少女のゆるっとチートな異世界交流
犬社護
ファンタジー
10歳の祝福の儀で、イリア・ランスロット伯爵令嬢は、神様からギフトを貰えなかった。その日以降、家族から【能無し・役立たず】と罵られる日々が続くも、彼女はめげることなく、3年間懸命に努力し続ける。
しかし、13歳の誕生日を迎えても、取得魔法は1個、スキルに至ってはゼロという始末。
遂に我慢の限界を超えた家族から、王都追放処分を受けてしまう。
彼女は悲しみに暮れるも一念発起し、家族から最後の餞別として貰ったお金を使い、隣国行きの列車に乗るも、今度は山間部での落雷による脱線事故が起きてしまい、その衝撃で車外へ放り出され、列車もろとも崖下へと転落していく。
転落中、彼女は前世日本人-七瀬彩奈で、12歳で水難事故に巻き込まれ死んでしまったことを思い出し、現世13歳までの記憶が走馬灯として駆け巡りながら、絶望の淵に達したところで気絶してしまう。
そんな窮地のところをランクS冒険者ベイツに助けられると、神様からギフト《異世界交流》とスキル《アニマルセラピー》を貰っていることに気づかされ、そこから神鳥ルウリと知り合い、日本の家族とも交流できたことで、人生の転機を迎えることとなる。
人は、娯楽で癒されます。
動物や従魔たちには、何もありません。
私が異世界にいる家族と交流して、動物や従魔たちに癒しを与えましょう!
田舎農家の俺、拾ったトカゲが『始祖竜』だった件〜女神がくれたスキル【絶対飼育】で育てたら、魔王がコスメ欲しさに竜王が胃薬借りに通い詰めだした
月神世一
ファンタジー
「くそっ、魔王はまたトカゲの抜け殻を美容液にしようとしてるし、女神は酒のつまみばかり要求してくる! 俺はただ静かに農業がしたいだけなのに!」
ブラック企業で過労死した日本人、カイト。
彼の願いはただ一つ、「誰にも邪魔されない静かな場所で農業をすること」。
女神ルチアナからチートスキル【絶対飼育】を貰い、異世界マンルシア大陸の辺境で念願の農場を開いたカイトだったが、ある日、庭から虹色の卵を発掘してしまう。
孵化したのは、可愛らしいトカゲ……ではなく、神話の時代に世界を滅亡させた『始祖竜』の幼体だった!
しかし、カイトはスキル【絶対飼育】のおかげで、その破壊神を「ポチ」と名付けたペットとして完璧に飼い慣らしてしまう。
ポチのくしゃみ一発で、敵の軍勢は老衰で塵に!?
ポチの抜け殻は、魔王が喉から手が出るほど欲しがる究極の美容成分に!?
世界を滅ぼすほどの力を持つポチと、その魔素を浴びて育った規格外の農作物を求め、理知的で美人の魔王、疲労困憊の竜王、いい加減な女神が次々にカイトの家に押しかけてくる!
「世界の管理者」すら手が出せない最強の農場主、カイト。
これは、世界の運命と、美味しい野菜と、ペットの散歩に追われる、史上最も騒がしいスローライフ物語である!
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる