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第1章
準備
しおりを挟む「お話しは分かりました。現在捜索依頼は小動物のみで幻獣はありません。
卵に関しては在庫もありますが、ちょうどコッコの引き取り手を探していたので、卵ではなくコッコでの引き渡しも可能です」
「コッコはペアも可能ですか?メスのみですか?
出来れば2ペアは欲しいです。毎回卵があるか気にしなくても良くなるので」
「もちろん可能です。気になる個体があれば全て引き取っていただいても構いませんよ」
と受付嬢はにっこり笑って立ち上がった。レナードは目を見張って驚く。
「ご案内しますので、奥にどうぞ」
見事にスルーされてカウンターの奥から倉庫などの設備のある建物へと案内された。
「こちらになります。」
「さっきの言葉は…冗談ではなかったんだな」
「ええ、残念ながら」
「それにしても若い個体が多いですね。しかも1匹は…あれもコッコ?」
一際目立つ堂々とこちらを見ている個体がいる。通常コッコは鶏より何倍も大きい家畜化出来る魔物だが、人族の言葉を多少は理解出来るのだが、会話は仮契約しないと成立しない。
よって人間が近づいたとしても、各々好き勝手に動き回り落ち着かないことが多い。
しかしその個体は真っ直ぐ人間達を向いている。
まるでこちらの様子を伺うかのように。
「そうです、間違いなくコッコの番いの1ペアから産まれました。見ての通り変異種ですが」
なるほど変異種か、要するにギルドはこいつを引き取って欲しい訳なんだな。
レナードは受付嬢の意味深な言葉を理解した。雌の変異種から産まれたと思われる足元にいるひよこも引き取ってくれると助かるってことか。
「そこの足元に雛がいる変異種と番い以外に、ペアはいるのか?」
「たぶん雌が何匹かいたからいると思うわ」
コッコの雌の蹴りの射程外ギリギリまで近づいた。
《ニンゲンカ》
《私は食べるための卵を産んでくれるコッコの番いを欲しくて来たんだ。君は来てくれるかな?》
従魔術で話しかけた。
《ワガコモイッショナラバ》
《君さえ良ければ契約して子ども達も引き取るよ、どうかな?》
《ケイヤクシテモヨイ》
《ありがとう》
「この親子と番い、それに若鶏もう1ペアを連れて行きたいのですが。」
「構いません、では契約書を用意して来ますので、もう一ペアが決まったら職員に伝えて下さい」
受付嬢が本館の建物へ戻って行く。
しばらく若鶏を観察して、番いだと思われるペアを選び職員に告げて受付嬢の元へ向かう。
「お疲れ様でした。引き取っていただけて助かりました。変異種はなかなか引き受け先が見つからなくて。その代わりひよこの分はサービスとさせていただきますので」
「こちらこそサービスしてもらい助かります。確かに養鶏業者などは引き取ってはくれませんからね」
「そうなんです。では、内容を確認してサインを」
「はい、大丈夫です。代金は預り金からで」
「かしこまりました」
契約書を鞄にしまい、裏手に荷馬車を預けて他に必要な物を買いにギルドを後にした。
牛舎の扉を開け荷車を外すと、牛は勝手に牛舎ヘ戻って行く。コッコ達の輸送用の柵を開ける。
《寝床を用意するまで柵の中で自由にしててくれ》
《ワカッタ》
幻獣用の小屋の一角に寝床用の藁を敷き詰める。変異種に用意出来たと場所を告げると、ひと鳴きして集めると小屋に入ってくれた。牛舎と幻獣舎の水と餌を用意して母屋へ戻る。
契約は明日することで話しがついている。
幼獣の様子を見に奥の部屋の扉を静かに開く。出て行った時とは盛り上がった位置が変わっているものの、相変わらず毛布に潜り込んでいた。
ミルクを入れて、暖炉に薪を追加しておく。
「とりあえず卵はこれでいつでも手に入れられるし、魔石も追加したし、回復効果のある果物も手に入れた。あとは警戒心を早く取ってくれると良いのだが」
藁を持ち込み幻獣の毛皮を敷き、その上にシーツをかけて仮のベットを幼獣の様子が見れる位置に離して設置する。警戒心がある程度取れるまではここがベットだ。
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