幻獣士の王と呼ばれた男

瑠璃垣玲緒

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第1章

模索

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 翌朝居間の様子を少しだけ扉を開けて覗いて見ると、寝ている銀狼のお腹の辺りに抱かれて眠る幼体の姿があった。

 ルゼの希望を叶えるために今週分の残りのポーションを納品しがてら、魔道具の注文と調整にリベルタに行く。
 牛舎の予備の結界魔道具を、名付けした仮契約の幻獣を追加が出来ないか相談した。鑑定しないと強さは分からないし、仮契約した幻獣と指定すると、銀狼も当てはまってしまうから。
それとは別にコッコ小屋用の結界魔導具も新たに注文した。こちらは変異種を含む種族の『コッコ』に指定にした。
ついでに数軒先の大工にコッコ用の小屋の建築を依頼する。
 魔道具の調整を待つ間に先ずは薬師ギルドに寄り、来週は町には来る用事がない限りは納品に来ないこと、保護した幼獣の一時的な養い親に銀狼を森から連れて来たこと、念のためしばらくの訪問は控えて欲しいと頼んだ。
同様に冒険者ギルドにも報告し、どうしても訪問する必要がある時は、ギルドから魔電信の開封通知付きで連絡してから来て欲しいと頼んだ。
「はぁ、よりによって銀狼なんて。幻獣の中でも出産率が低い方で子煩悩な種族だから有り得るということなんですよね。
しかも初産ならば余計に。わかりました、直行で保護依頼をしないように通達しておきます」
「頼みます」
ギルドを出ると市場に向かい、魔性果物を銀狼の非常食にいくつかと、魔物の肉を購入した。

 帰宅後は先ずは全ての小屋の扉を開け放ち、次いで自宅の玄関の扉も開けておく。居間の扉を静かに開けると銀狼がこちらに顔を向けてきた。
幼獣は出かける前と変わらずお腹のところで寝ていた。
《今から包帯を外して回復魔法をかける。その子が目覚めたら、この前の小屋の中に移動して欲しい》
《これからはあちらで寝起きするのか?》
《そうだ。あと必要なら魔物の肉も、魔性果物も用意してあるから言って欲しい》
《この仔の怪我が癒えるまではそこで過ごせば良いのだったな》
《あぁ、その後はあの仔次第だが、ここでも森に戻ってもどちらでも構わない》
《そうだな、あの仔の親が探しているかも知れないしな》

起きないように慎重に近づき眠りの魔法をかけ素早く包帯を外す。
全体に水の治療魔法をかけて銀狼のお腹の上に戻すと、皿と寝床の布と毛布を持って居間を出て幻獣舎へ置く。
 次に牛舎に行き、魔道具を調整済みのと取り替えた。なんとかルゼも入れたようで一安心した。
ルゼ達に銀狼が幻獣小屋に移動する前に餌を食べに行ったらどうかと勧めたが、ルゼ以外は怖がって出て来ない。
仕方なく薬草採取用の籠を持って来て成鶏3匹を入れ、コッコ用の畑にはなす。もう一往復してひよこ達を入れ、ルゼを従えて畑へ行く。
銀狼が小屋に入ったら迎えに来るからと言い、餌を探し出す様子を確認して幻獣小屋に。
 コッコ達の寝床の藁を牛舎の空いている房に移し替える。
コッコの小屋をどこに建てるのか考えながら作業する。
幻獣舎と牛舎は母屋の東側に建っている。
玄関から出てすぐが幻獣舎で、直ぐに世話が出来るようにというのと、預かった時や保護した幻獣を他の人が見せれるようにと考えたから。
裏手に少し離して牛舎がある。
母屋の裏口は畑に面していて、西南の位置にある。
南東の一角は草食動物や魔獣用の庭になっており、母屋の南側は南東を除いて畑になっている。
コッコ達の小屋を幻獣小屋と牛舎の間に建てようかと考えていたが、この様子だと無理そうだ。
 コッコ用の畑は柵沿いで森に近い場所にある。それは森から来る昆虫類が一番豊富だから。
コッコは雑食だから虫なども食べてくれる。
もちろん作物に付いている害虫だけは、畑中どこでも良いと許可してあるが、益虫や野菜そのものはコッコ用のもの以外には食べないように言ってある。
たぶん畑に近い場所に小屋を作ることになりそうだなとレナードは思った。
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