幻獣士の王と呼ばれた男

瑠璃垣玲緒

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第1章

戸惑い

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幼体は悩んでいるようだった。
たぶん皆と一緒が良いという気持ちと、自由がなくなる恐怖と、未知の出来事に対する不安などが入り混じっているのだろう。
《不安などがあるなら無理しなくていい、今日はもう寝なさい。皆んなもおやすみ》
幼体の頭を軽く撫でながら告げた。
子馬を連れて幻獣舎を出て牛舎へ。
寂しいと素直に甘えて来る他の子供達に比べ、遠慮がちな幼体には仮契約はまだ難しいだろうと思っていたが、目の前で見せつけるようにしてしまったことは反省していた。

翌朝の治療の時に僅かだが魔力量が上がったようだった。
もしかしたらまだ意識して魔法を使えないから、信頼関係がないと影響力がないのかも知れない。
それに弱い変異種の種族でも、成体は上がった量が実感が湧く量なのでそれと比べたら上がらないのに等しい。
魔石で増強しないと満足な治療が出来ないからこそ気付けた、そんな僅かな違いだから上がらないと思われたのだろう。
魔法はイメージも大切で、弱くてもレナードの治療が有効なのは、幻獣術で会話して目視出来ない部分や痛みを当獣達から聞くことで具体的にイメージ出来るから。
今回の水豹はレナードより強い中級の回復魔法を使用したため、目に見える部分は傷痕しかないが、打撲の部分の一部が骨にヒビが入っていて、最初は食事が辛そうだった。
そこで魔性果物をジュースにし、ルゼの卵を加えて流動食にして飲ませつつ、痛む場所を聞きながら1箇所ずつ治した。
野生の魔物や幻獣は治し過ぎてもいけないので見極めが難しい。
その点レナードは弱いが故に、魔石を使用しなければ、自然治療に近い状態で治療が出来る。
今まではそれで良かったが、これからは幻獣達かぞくが増えたからもう少し治療力を上げたいと思っていて、変異種の幼獣達との繋がりで僅かでも上がったことは嬉しいことだった。

幼体以外と繋がったことで、敷地内の範囲くらいならある程度の感情が把握出来るようになった。
その分だけ幼体に神経を集中して観察が出来る。
疎外感を少しでも無くすように気を付けて行動しなければと幻獣舎に向かった。
繋がったことでレナードが来ることが分かった仔犬達は、治療ゾーンの前に座って待っていた。
苦笑しつつ、頭をわしゃわしゃと撫でてやる。
幼体の側に行き、頭を優しく撫でながら話しかける
《おはよう、ちゃんと眠れたかな?》
《ネレナカッタ》
《じゃあ今日は森の君がお気に入りの場所に行ってお昼寝をしようか》
《…イイノ?》
《もちろんだよ。君も家族なんだから遠慮しなくても良いんだ》
《ウン》
少し元気になったようだ。

幼体のお気に入りの場所で何故かクレド以外がお昼寝している。
スティードはレナードの肩に顎を乗せ、残りの3匹は足の間に丸まっていた。
幼体を安心させるために撫でていたのを3匹に見つかって、レナード争奪戦が勃発して、疲れ果てて寝落ちした感じだ。
これで仲良くなってくれるなら良いなと思いながら。
ここは森の中でも少し開けていて、上もぽっかりと空が見えるため陽が当たってぽかぽかしている。
森で長い時間寝ているのは危険なので、スティードが起きてしばらくしてから3匹を起こして家に帰る
森では大人しくしている幼体とスティードも、森から出て自宅に戻るまでの道では4匹で駆けて行っては戻って来るのを繰り返して運動をしている。
幻獣舎に戻る前にも庭で自由に駆け回っている。
今日は水豹の子供達が幻獣舎から顔出していた。
母獣が元気になって来て少し安心したせいか、子供本来の好奇心が疼いて来たのだろう。
ただ慣れない場所だから遠慮しているのか中々出て来ない。
レナードは幻獣舎に向かい、水豹の子供達に念話をした。
《お母さんを治すから安心してお外に行っておいで》

ガゥ
母獣からも何か言われ、おっかなびっくりな感じで外に出る水豹の子供達。
その目の前を駆けっこでもしているのか通り過ぎるソルと後を追うルナ。
びっくりした後、刺激されたのかようやく元気に駆け回り始めたのを確認して、レナードは中に入った。


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