幻獣士の王と呼ばれた男

瑠璃垣玲緒

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第1章

旅立ち

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水豹の母獣がなんとか幻獣舎の外まで歩けるようになった。
それで最後に1度だけ魔石を使わない回復魔法をかけて、レナードからの治療は終了した。
その次の日からは森へ幻獣達とは別に、親子だけを連れて出かけた。
水豹はレナードに子供達を預けて何度か森の奥に1匹で向かい、小さな動物を狩れるまで何日か挑戦した。
まだ万全とはいえないが、狩りが出来るようになり、水豹の顔付きも変わって来た。
元々水豹の親子は森に戻すために、なるべく冒険者が狩って来た血抜きせずに持って来てもらったものや、血抜きだけした解体してない獣肉を与えていた。
母獣が子供達に分け与えるのとなるべく変わらないようにするために。
起き上がるようになってからは、母獣に与えて、子供達に分け与えるようにして、森に戻るための生活に出来る限り近付けた。

ある日大きな獲物を仕留めたのか、血だらけのままレナードのところに戻って来た。
水豹の子供達は3匹で絡まり合うように遊んでいたが、母獣に気付くと駆け寄っていった。
水豹の母獣はジッとレナードを見つめる。
《森に帰るのかい》
《ソウダ、セワニナッタ》
《そうか、またここで会えたら顔を見せてくれ》

大きくひと鳴きすると子供達を連れて森の奥へ消えて行った。
もう二度と人族に子供達が狙われないようにと願いながらレナードは旅立ちを見送った。
今までは特に思うところはなく、無事役目を果たしたとホッと一息付くところなのだが、幻獣の家族が出来たからなのか、ほんの少し淋しさを感じた。

一人で帰って来たレナードを見て騒いだのは仔犬達だけだった。
老グリフォンはそろそろだろうと感じていたようで、一瞬淋しげな表情をしただけだった。
幼体は銀狼シルバーウルフとの別れを体験して日が浅いので、また別れが来たのだと悟っていた。
子馬にとっては捕食者とは仲良くなれなかったから気にしてなかった。

老グリフォンの治療は水豹より少し前に治療は終えていた。
ただ治療は終えてもリハビリに時間がかかっていた。
怪我をする前のように人を乗せて高く飛ぶことは出来ないだろう。
見た目の上では治っているが、怪我が大きかった上に年をとっているため自然治癒力が弱く、羽根を動かすための神経や魔力回路が鈍くなっているからだ。
現役を引退させられたことも治療へのモチベーションを引くしていた要因でもあった。
身体には怪我がなかったため、飛ぶこと以外に支障がなかったのもあった。
でも水豹親子が居なくなった後、日に日に力強くなっていく狼犬の仔犬達が勢い余ってぶつかることが増えた。

ところがクレドと同じ羽根があるグリフォンを羨ましがって、動かして欲しいと熱望され仕方なく動かすが、上手く動かせなかった。
それを残念がる仔犬達に思うところがあったのか、子供達と違い毎日森に食事に行く訳ではないので、居ない間に練習をしていたらしい。
仔犬達の応援もあって、羽根が綺麗に動くようになった。
その頃から幼体もグリフォンを応援するようになり、ついに身体を少しだけ浮かせられるようになった。
そのことをモルガン氏に魔電報で伝えたところ、3日後に訪ねて来た。

「良かったよ、また飛べることが出来て」
泣きながらグリフォンの背中を撫でていた。
《良かったらこれから命ある限り、私の孫娘のところで余生を過ごさないか?
まだ産まれたばかりで、孫の子守り件ボディガードをしてくれないか?》
《シゴトヲクレルノカ》
《あぁ、ここで幻獣の子供達と楽しそうにしているお前を見て、人間の子供相手の仕事なら出来ると思って娘を説得した》
《シゴトナラヤッテモイイ》
《そうか、引き受けてくれるか!》
準備があるからと言って、1週間後に迎えに来ると嬉しそうに帰っていった。

そしてグリフォンもレナードのところから、新たな居場所へ旅立った。

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