幻獣士の王と呼ばれた男

瑠璃垣玲緒

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第3章

羨望

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《近くに危険な魔物や魔獣はいないよ》
「トーレさん、休憩地に魔物など危険な生物はいないそうです」
「そんなことが分かるのか?」
「今、クレドこの子に偵察に行ってもらったんですよ。
私は幻獣使いで、仮契約もしているので、だいたいの感情や言葉を交わすことが出来ます。
変異種なら、従魔術などのスキルがなくても、人間こちらの言うことは結構分かるので、魔馬より出来ることが増えると思いますよ」
「ということは従魔術を取得すれば、変異種とある程度の意思疎通が出来るのか?」
「出来ると思います。
漠然とした気持ちとか、片言の短文ならですが」
「魔馬だと漠然とした気持ちしか伝わらないと聞いたことがある。
片言でも分かれば不調も早く気付けるだろうし、無事成体になった時に意思疎通が出来るなら、新しい飼育方法だけでなく、従魔術も覚えたいな」
既に活用する未来を思い描いているのか、遠くを見るような目つきで、休憩地へと馬を進めた。
休憩地には先客がいるようでテントが張ってあったが、見張り役さえ姿が見えない。
とりあえず邪魔にならないように馬車を停める。
馬を車から外し、少量の飼葉と水をトーレが与えていた。
レナードは水だけをクレドとアルバに用意する。
火蜥蜴は寝ていて、精霊は基本的には何も要らないため、見つからずにちょうど良いと黙って馬車の中に置いたままにした。
夕食と言っても時間停止機能のあるマジックバックを持っているトーレが、しまってあった厚切りベーコンと野菜を挟んだ黒パンのサンドと、スープだけの簡素な物だ。
「時間停止機能は小さくても、こんな風に移動しながら商売する行商人には不可欠なアイテムですね」
「そうだな、あるとないとでは、行動範囲や商品の種類に影響するな。
またこれがあるから、魔馬や魔物や魔獣の血の入った役畜じゃないと、盗賊や野党などに襲われる。
その上、変異種で意思疎通が可能になれば、鬼に金棒なんだがな」
「うちは馬から産まれた変異種ですから強さはないですが、旅はたまになので支障はないですが、トーレさんは旅が日常ですから、
魔馬の強さに賢さを兼ね備える可能性があるのは魅力的ですね」
「俺は素材専門の小さな商いだから、どんな場所でも行ける魔馬か、魔物の血が入った驢馬とかだが、扱う商品によちゃあ馬力も速さも断トツの竜車が使えるとありがたいが、あれは大陸規模の大商隊や軍か大貴族じゃなきゃ飼えねぇ」
走竜と人間が呼ぶ竜種は、性格が比較的穏やかで走ることが好きな地竜の一種で、竜尾が短いため竜車としても活躍するが、大食漢であることも有名で、大砲など重い物や沢山の人間を運べる上に馬よりも速いため、軍や大商隊しかほぼ採用しない。
大商隊の半数は大貴族が運営している。
竜馬もいるが数が少ないため、軍でも王族出身者や高位貴族の将軍クラスしか持てない。
「この仔は魔馬の変異種なんだ。
育てば大いに助けになるが、自宅で世話をしてくれてた子供達が全員寮に入っちまって、妻だけでは不調の時に世話がおぼつかないから、断腸の思いで売りに出そうとした。
あれほど弱いと近場すら商売で離れられなくなっちまうからな。
だからこの話しにかけたんだ」
「お子さんの成長は嬉しいでしょうが、愛馬達の仔のことを考えると複雑ですね。
でも希望はありますよ」
話しのキリがついたところで立ち上がり、出立の準備をする。
結局休憩が終わるまで冒険者は誰も帰って来なかった。
レナードとしてはアルバの姿が見られずに済んで良かったと思っていた。
他の子がいればそこまで目立たないが、単独だと目立ち過ぎるから。
町を拠点にしている冒険者は悪い奴は少ないが、拠点がない冒険者の中には犯罪者紛いのことをやる奴も多い。
しかも珍しい種族のアルバは人に恐怖心があるから目撃されない方が良い。
もうすぐ我が家だ。

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