幻獣士の王と呼ばれた男

瑠璃垣玲緒

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第3章

来客

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せっかくだからと着いて早々に牛舎やコッコ小屋を案内した。
魔馬は幻獣舎へ連れて行く。
普通の馬ならば牛舎なのだが、中の牛達より強い生き物は人間以外入れないからだ。
コッコ小屋に近付くとルゼがやって来た。
《また新しいのか?》
《違うよ。今晩泊まるお客様のだよ》
《あの子の雰囲気が変わったか?》
《そうだね、本契約をしたからかな》
《本契約か、良かったな》
後ろに付いて来ていたアルバに向かって言ったらしい。
《うん、皆んなみたいに繋がったよ》
「トーレさん、このコッコも変異種なんですよ」
「お前さんのところは変異種がどれだけいるんだ?」
「コッコ、鷹、馬、狼犬2匹ですね」
「…やけに多くないか?」
「多いですね、1羽のはずが色々あって増えてしまいましたが、おかげで保護していたこの子が淋しい思いをしなくて良くなりました」
レナードはそう言って側に呼び寄せたアルバの頭を撫でた。
「私が幻獣の薬も作ることと、こんな環境に1人で住んでいることで、検証という名で私のことを心配してくれている方々からの贈り物だと思っています。
狼犬の兄弟は将来的に植物園に引き取られる可能性がありますが、他の子は既に家族になりましたね」
《ソルとルナは家族じゃないの?》
《うちか、植物園かという話し合いの時に、成体になった時点で植物園向こうが受け入れ出来ない場合に、正式な家族になるという約束で、今は仮の家族なんだよ》
《そんなのヤダ!》
《ほう、そんな約束があったのか。
だが、ソルとルナアイツらがここ以外で暮らせるのか?》
《ルゼもそう思うか?
アルバ、私も一度引き受けた以上、ずっと一緒に居たいんだよ》
《もうすぐ成体になるはずだが、日に日に元気が有り余って駆け回っている気がするゾ》
《植物園がまだ受け入れ体制が整っていない事を願っているが、今の2匹を見ると心配しなくても良い気がするよ》
トーレがすぐに言葉を発する前に念話でこのようなやり取りがあり、コッコ小屋を出た。
事実、植物園ではこれだけの運動量を確保することは出来ないだろうと思われる。
「なるほど、贈り物ですか。
それだけのことをあなたがしているって言うことなんだな」
「いえ、私のわがままでこんな人里離れた場所に住んでいるだけで、余計な心配をかけているだけですよ。
でも野生の動物や幻獣達を治療するには、ここが人の住めるギリギリの位置なんですよ」
「そんな理由でこのような場所に住んでいるのか?
それは心配する人もいるだろう」
「私は薬師ですが、動物も助けたくて話しが出来るようにと幻獣使いになったんですが、この子が来るまでは治療の時だけの一時的な契約だったんです」
「奇特な方だ。
よし、俺も協力するから、何かあったら声かけてくれ。
もちろんこちらもあの仔を含め、今後産まれてくる変異種育成のことで相談するからよろしく頼むな」
「はい、正式に許可されたらいつでも協力します。
相談相手としても、私の行けない地域の素材集めとか、頼らせていただきます。
こちらこそよろしく」
母屋の客室にトーレを案内しながら会話をした。
トーレは明日の朝、テュラーの知り合いの家に寄ってリベルタの商業ギルドへ行き、ヘンルーダの職員と合流して、変異種育成計画の参加資格を得るための面接を受ける。
面接の後のメンバーに寄る協議で決定するため、翌日の午後に本人に通知されるらしい。
それ以上の詳しいことは知らないが、無事審査に合格すると育成方法のレクチャーとなる。
レナードは半日ほどトーレと過ごしてみて、口調こそぶっきらぼうだったり、粗野のようだが、なめられないようにそうしてるだけで、懐に入れば根は面倒見の良い、おおらかな人物だと見ている。
だから帰りにここに寄ったとしたら、育成検証仲間として挨拶して行くだろうと思った。

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