幻獣士の王と呼ばれた男

瑠璃垣玲緒

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第3章

回復

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魔性果実を最後に採取して、皆んなの待つ場所へ戻った。
魔馬の子は来た時とは違い、ルナにもたれていたものの目は覚めていた。
見守り組に魔性果実を適当な大きさにカットして、それぞれのお皿に乗せて目の前に置いた。
しかし心配なのか、妖精と精霊以外は手をつけようとしなかった。
レナードは魔馬の仔の全身を撫でるように触り、異常がないか探った。
熱もなく他の異常も特に見当たらない。《調子はどうだい?》
《アサヨリラク》
《それは良かった》
動物用の味のポーションを手早く作る。
時間を短縮するため量は作れないが、1匹分なので充分だろう。
最後に布に包んで絞る。
器1杯分だけ絞り、2つ器を出してその1つに乗せた。
空いた器に少量だけ入れて魔馬の仔の前に置く。
《飲めたら飲んでごらん。
元気が出る薬だよ》
一口だけ舐めたが、そのあとは続かない。
《味が濃かったかなぁ。薄くしたら飲めそう?》
《…タブン》
半分くらいに薄め、魔性果実の絞り汁も数滴入れてみた。
《今度はどうかな?》
《ノメル》
《じゃあ全部飲んでごらん》
魔馬の仔が飲んだのを見て安心したのか、皆んなも果実を口にした。
ヨロヨロしながらも立ち上がった。
《歩けるだけ歩いて帰ろうか》
《ガンバル》
《皆んな倒れた時に支えられるように考えて配置について》
全員の力強い返事が届く。
クレドには安全確認のために周囲を警戒してもらう。
左にスティード、右がアルバ、前にソル、後ろにルナという配置になっていた。
最初は頑張っていたソルだが、森の生き物達の気配や大きな音に反応して立ち止まったりして危ないので、ルナと一緒に周囲の動物や魔獣達を周囲から追い払う役目を与え、レナードが魔馬の仔の後ろを歩く。
時間はかかったし、時々ふらつきスティードやアルバに助けられながら荷車まで辿り着いた。
帰りはアルバが轢きたがったので森の外まではお願いして、そこからはスティードに代わった。
荷台の上の魔馬の仔は疲れた感じはあっても、今朝のように苦痛そうな表情ではなくレナードは安堵した。

翌朝には魔馬の仔は元気いっぱいとはいかないまでも、起き上がってはいた。
朝は魔性果実の絞り汁入りのミルクを、夕方には昨日のポーションの絞りかすを混ぜた柔らかい牧草を食べさせた。
しっかり搾らなかったのでポーションの効果が残っていると思ったからだ。
その日は皆んな庭で過ごして、レナードはポーションや薬作りに励んだ。
3日ほど朝だけ同じメニューにして、それ以外は我が家の牛達に餌場に連れて行ってもらったり、ルゼ達と庭で自由に草や虫達を食べていた。
狼犬兄弟の運動不足解消のため4、5日に1度は森に行く。
クレドと兄弟だけ先に行き、他のメンバーは魔馬の仔に合わせてゆっくりと向かう。
念のため出発前に魔馬の仔だけに魔性果実を少量だが食べさせた。
結局2週間ほど預かった。
なんでもヘンルーダの研修中の職員の代わりに、リベルタの職員を派遣することになったため、受け入れ体制が少しは整ったらしい。
初の他の地域の合同検証ということで、モデルケースとして今後の課題がないかという意味での検証もすることになったということだ。
「長い時間預かってもらって悪かったな。この子が無事育つ前提で従魔術を習うか、従魔士を雇うと言ったら息子達が反応してね、親子で誰が一番先に習得出来るか競争しようということになったよ」
と嬉しそうに話しながら魔馬の仔を撫でている。
「トーレさん達が帰った翌日に体調を崩していたので、今日の内に魔性植物か、果実を食べさせた方がいいかもしれません。
まだ確証は取れてないですが、疲れやストレスが溜まりそうなことがありそうな時は魔素を取り込んでおくと、最悪な状態は防げるような気がします。
と言っても意識のない状態が、意識はある状態になるくらいの差ですが」
ところがそれを言ったら凄く喜んで
「帰ったら必ず与えます!
量だとか他の注意点は?」
と引くくらいの勢いで聞かれた。
メモに書いて渡すと帰って行った。

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