幻獣士の王と呼ばれた男

第５章

見習い

幻獣士ギルドは従魔士ギルドや召喚士ギルドと同じで兼業を推奨している。
更に従魔士との兼業も認めている。
幻獣士と従魔士は違いが幻獣と交流出来るかどうかしか違いがなくなったからだ。
レナードの様に薬師が本業で、幻獣使いという者が一般的だったが、今回の幻獣士の制度で専業職も誕生することも可能になった。
幻獣士専業は迷いの森のみの素材採取だけを行う者でギルド開設１年目は誰も居なかった。
今までの幻獣使いは契約期間によって職業が異なることが多かった。
職業に必要な能力の幻獣を仮契約することが一般的で、再契約をする者は行商や採取メインの冒険者が多かった。
一番多かったのは短期の契約で幻獣や変異種の能力が必要なあらゆる職業があった。
幻獣士の挑戦を断念した者やまだ幻獣士になる勇気のない者は今まで通り幻獣使いとして活躍したが、今までと違うのは幻獣士ギルドにも登録することが義務化されたことだ。
幻獣使いでも幻獣への扱いが悪い者は、幻獣王が契約の解除が出来るようにするためだ。
周知するのに時間がかかるため、しばらくは罰則は登録者のみに限定されているが、友好的なギルドでの周知がある程度されたら、故意に登録をしない者などに警告後に罰則の適用を予定している。

見習い期間の内１ヵ月はギルド本部内か併設する宿舎に寝泊まりして、主に能力を把握することに努める。
アイシャとフィンリーはギルド内の宿舎に、チェレスティーナは鳥類や猛禽類専用の宿舎に滞在する。
相棒がいた者は同じ事が出来るかの確認と、今の職業に使える能力があるかを確認する。
幻獣の能力によっては専業の職業が出来ないことがあり、変更する必要が出るからだ。
相棒が居なかった者は２週間は互いの意思疎通を半日、残りを能力把握が把握に努める。
そしてその期間内はなんらかのギルドの業務の手伝いをすることで１ヵ月分の宿泊費と２食を保証される。
最初の見習いである３人は以下の仕事が割り当てられた。
アイシャは薬師見習いのため、幻獣士ギルドで販売されることになった幻獣にも効く傷薬の調合の手伝いを毎日３時間を担当。
フィンリーは行商人見習いのため、幻獣士ギルドでの販売や買取り業務の手伝いを一番忙しい夕方の３時間を担当。
チェレスティーナは戦士職ということで、幻獣士ギルドや保護エリアなどの周辺の警備の当番に組み込まれた。
そして彼女だけ幻獣と一緒に任務に就くので実施訓練の一環にもなるため、休憩１時間を含む６時間を担当する。
この様に見習いは幻獣士ギルドで本業に関係する仕事をすることで、見習い明けに本業に支障が出にくい様に配慮している。
アイシャは白豹 パールの能力把握のため午前中は幻獣士用入口から試練の森に入る。
アルビノは光属性を必ず持っているため、初級の疲労回復は確実にある。
それ以外にどの属性があるかなどでアイシャの装備や今後習得する能力などに影響するためだ。
薬師の必須能力に探索 サーチまたは鑑定のどちらかがある事が求められる。
この２つはどちらかをスキル判定式までに持っていないと習得が難しく、習得出来ても精度が低い場合が多いため、高価な魔道具が必要になる。
一生見習いか、一生弟子で終わることになるため代々薬師の家系など以外では敬遠されるのだ。
アイシャは鑑定は初級と低いが、サーチを産まれた時から持っていた様で６才の誕生月の判定式でサーチがあったので、薬師を目指すと決めてから修練を重ねて中級までになっている。
《パールさんは何が得意？》
《そうね、風壁 ウィンドウォールかしら？》
《えっ、じゃあ攻撃魔法が使えるんですか？》
《攻撃魔法ではないわ。足場程度しか使えないからね。
攻撃魔法はアンテッドにしか使えない弱い光刃ライトカッターだけね》
《弱くても攻撃魔法や防御魔法が使えるなんてパールさんって凄いんですね！》
あまりの素直な掛け値なしの賞賛に照れたパールはプイッと横を向いたが、尻尾が嬉しさを表す様に揺れていた。