幻獣士の王と呼ばれた男

瑠璃垣玲緒

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第5章

お友達

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サナの思念に集まった変異種や幻獣達も、そのほとんどが鼠型や栗鼠型などの知能があまり高くない種族が多いため、最初こそ警戒していたがサナが夢中になって木々を駆け回るのを見て釣られて駆け回り始めた。
一部はそれを見て興味本意で加わった。
大好きな木の実を見つけたサナは口に咥えて、アーウィンの元に駆け戻り手の上に落とした。
《サナのおやつに取っておくのかい?》
《うん》
《分かった、しまっておこう。お友達のは要らないのかい?》
《あ!》
慌てて探しに駆けて行った。
アーウィンはサナを見て、やっぱり途中で友達探しは忘れたんだなと思いながら、戻って来たサナを労う様に撫でた。
ふと周りを見渡すと木の実を持ってサナが最初に登った木の根元付近に集まっている動物達が居た。
サナが木の実を集めるのを見ていて手伝ってくれたらしい。
《皆んな、サナのためにありがとう》
そうアーウィンが念話すると木の実を置いてほとんどが木の上に走り去った。
《サナ、皆んながくれたみたいだ。良かったね》
キュッ!
と嬉しいそうにサナが鳴いた。
残ったのはサナと同じ様に見える鼠型と、栗鼠型、針鼠型、小型の猿型だった。
猿型からはただ人間アーウィンに興味があって近くに来た様に感じるが、他はサナに興味があって降りて来たようだ。
《サナ、どの子と一緒に帰りたいか話し合っておいで。1人じゃなくても良いからね》
アーウィンはサナやピスティ達に話しかける時には人と同じ様に扱い、1匹や1頭ではなく、1人と呼んでいる。
針鼠型と猿型以外は数匹居て、サナと内緒話をするかの様に鳴いていた。
猿型はアーウィンをジッと見ていた。
アーウィンはサナ以外にあげるために用意した果実を取り出して手のひらに乗せて猿に見せた。
《食べるかい?》
キキッ!
『欲しい』と鳴いたので猿に向かって放り投げた。
器用に受け取って食べた。
美味しかったのだろう、先程より近付いて来た。
もう1つ投げると受け取って一声鳴くと走り去った。
家族にあげるのだろうか。
それぞれと話し合いをしたらしく、アーウィンが容れ物に他の子用のおやつを入れた物を手を伸ばした先に置いて念のために少し下がると、地面に居た者が近付いて各々が手に取った。
そして一声鳴いて木に駆け上がる者と残って食べる者と分かれた。
残ったのは針鼠型と2匹の栗鼠型だった。
《君達が俺とサナに付いて来てくれるのかい?》
返事の代わりに差し出した手のひらの側まで走り寄って来た栗鼠型と、警戒しながらあと少しで手が届く場所まで来てくれた針鼠型。
それを見たサナはアーウィンの肩まで駆け上がった。
キュッ!
サナが鳴くと栗鼠型達は反対側の肩に駆け上がって来た。
針鼠型はアーウィンの手の上に乗ってくれた。
《じゃあ幻獣王様のところへ行って、家に帰ろうか》
針鼠型は変異種でハリーと。
栗鼠型は幻獣の番いで雄をマロン、雌をショコラにした。
サナの時は色々考えて付けたが、今度の子達は来てくれるかも数も分からなかったので直感で付けた。
アーウィンはリベルタで庭付きの1軒屋に住んでいる。
ピスティ達白狼の群れを引き取った時に引っ越したからだ。
サナのために木も植えた。
マロンとショコラのために木の実がなる木を追加しよう。
4人の新たな小屋を作るか、部屋の1つを幻獣部屋にするか、帰ったら全員で相談しないとな。
そんなことを考えつつ、帰るまでに3匹の好物と、おもちゃになりそうな物を集めつつ、鉱物などを少し持ち帰る。
本部でハリー用のキャリーと3匹の巣箱を購入するために。
サナの寿命が尽きる前に小さなお友達を迎えることが出来て良かったとアーウィンは心で呟いた。
幻獣と言えど小型種は同じ種の動物の倍は生きることが出来るが、あと1年も経たない内に老いの症状が出て来るのではないかと危惧していた。
でもこれで留守の間も家で4匹仲良く待ってもらうことも出来るようになって良かった。
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