幻獣士の王と呼ばれた男

瑠璃垣玲緒

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第6章

見解

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「複数の科の演習を見学させて頂いた結果、幻獣士科の廃案は妥当な判断と思います。
現状の教育方法は学科と実技に、応用として演習があると聞きました。
それでは幻獣使いだと術のみの習得で、演習内容からすると職種が限られていると推察しました」
「現状は騎士や護衛などか、冒険者が大半ではある。他は行商人など自衛が必要な職種の者だ」
「幻獣は知能の高い生き物です。ですが、演習を拝見して感じたことは、失礼ながら幻獣達を道具として扱っている様に見受けられました」
「そんなことは…」
「本当にそうですか?
人工的に作ったゴーレムに命令して攻撃させているのと大差ない扱いだと見えましたが、違うと仰るのですか?」
否定の言葉も肯定の言葉も発せられなかった。
「私は幻獣の治療に必要だと幻獣術を取得しました。人族の薬は時には動物や幻獣には毒になると知ったからです。
治療以外で仮契約をしたのは、瀕死の幻獣の幼体を保護してからで、それまで自分で採取する時は己の力だけで自衛してました」
何人かがハッとした表情をした。
「幻獣使いも幻獣士も、幻獣を相棒 パートナーとして扱うことが大切です。
多くの方が勘違いをされていますが、知能が高い幻獣が人族の命令を聞くのは、対等に扱ってくれるとからに過ぎないのです」
「まさか!
命令を聞かないとか、段々と能力が落ちる事があるのは」
「たぶん幻獣が主人が自分を下に見ていると感じたからでしょう」
全員が何かを考え込むようだったので一拍置いた。
「幻獣は知能の低い鼠系でさえ、愛情を注げば役立とうと努力します。
ましてや人族の言葉を理解出来る種族ならば、信頼に応えようと切磋琢磨することでしょう。
こちらの演習内容では、行動するための連携を強化する意図しか感じませんでした。
信頼関係を築くための時間が全くなかった」
「あの時の質問は…」
「そうです。訓練内容が幻獣のためではなく、主人のための訓練しかなかったからです。人族も適正に左右されるものの、一定以上の努力を重ねるとスキルを身に付けることが出来ますが、幻獣もほぼ同じで得意な分野を伸ばす様な訓練や遊びをすることで能力が上がります。
幻獣使いでは結び付きが弱いために実感が少ないので気付かない人が多いですが、幻獣士になれた人達は『慣れ』以上の能力の向上を感じることがあったのでは?」
「種族特性と思っていたが違うのか?」
「私は個体差の範囲内だと」
など幻獣士から戸惑いがちの声が聞こえた。
「副ギルド長の鼠種は隙間や小さな穴の探し物が得意になりましたが、偏に彼が良く観察していて、得意なことで仕事をさせて褒めまくった結果ですし、私自身も変異種の兄弟犬を鼻の効く子を探索に、足が速い子を狩りにと仕事を分けたら能力差が出ました。
そんな風に褒めながら仕事をさせたら、今では誰かに仕事を頼むと、他の子も仕事を欲しがる様になりました」
言われたことを理解した人々が騒めいた。
「幻獣の授業内容を全て確認した訳ではないので断定は出来ませんが、従魔士も召喚士も幻獣使いも、幻獣や魔獣、魔物達のための授業をした方が職業の幅も、出来る仕事も増えると思います。
幻獣士に関しては幻獣のための授業と、幻獣の特性を探すための授業が考案出来れば、『幻獣士科』の許可出来ませんが、『幻獣士養成講座』ならば可能でしょうか」
「なるほど、主人との連携や指示の訓練しかして来ませんでした。
是非検討させていただきます」
「原種が人の言葉をある程度理解出来る種族ならば、変異種や幻獣達は念話で会話が出来ます。知能がより高ければ理解力は上がると考えて下さい。
私は自分の家族のつもりで変異種達に接していますし、副ギルド長のアーウィンは幻獣達を1人として扱ってます。
これから一部の地域で変異種の育成に関して近い考えで育てる人々が増えるはずです。
この学園から主人のいる幻獣や変異種達の正しい扱いを拡めて欲しいと願っています」
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