幻獣士の王と呼ばれた男

瑠璃垣玲緒

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第6章

苦慮

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結局説得出来ずにダンジョンの入り口まで王太子が付いて来てしまった。
城に留守居していた部下2人を率いているため幻獣達皆んながソワソワして落ち着かない。
「竜神族は高い身体能力があるから大船に乗った気持ちで護衛は任せて欲しい。
その代わりに変異種の事を聞かせてくれ」
「ですから何度も護衛は要りませんと言ってますし、変異種育成計画の正式メンバーになってからじゃないとお茶会の時以上の情報は話せないと」
「我が国はその計画に参加表明して、担当者を派遣するのを正式に決めたのだから構わないだろう?」
「独断で話せる内容は全てお話ししました。
これ以上は加盟が正式に決まるまでは王達との約束がありますし、そもそも情報漏洩の対策なので出来ません」
「私は他の者からではなく、レナード殿から話しを聞きたいのです!」
堂々巡りの会話に終止符が打たれたのは、駆けて来た騎士の大声だった。
「アドルフィト様!」
「…何故お前がここに?」
「ヘンリク様より伝書鷹が来て、幻獣士ギルド長に護衛として無理矢理付いて行ってしまったと聞いて城ではなくこちらへ直行したんです!
さあ帰りますよ」
「しかしレナード殿には護衛が必要だ…」
「王太子付き副官のシャビエルと申します。
レナード様のなされたことや経緯を聞いて深く感銘したせいで、この様な強引な態度を王太子が取りご迷惑をおかけしました。
もし本当に護衛が必要なら手配しますがいかがされますか?」
「いえ、護衛は必要ないと言っているのですが、聞き入れてくれなくてどうしようかと」
「上司が申し訳ありません。迷惑料と言ってはなんですが、万が一の時はこちらをお使い下さい。
このダンジョンでしか使用出来ない物ですが、魔法陣が刻まれている移転石です。
緊急脱出用で地面に叩き付けて発動させる物です」
「ありがとうございます。
それがあれば王太子様も安心出来るでしょうから有難くいただきます」
「どういたしまして。良い探検になります様に」
同行していた部下に両腕を掴まれ渋々といった様子で連行されて行った王太子の一行を見送る。
ようやく慣れない人物が居なくなってホッとしたのか、甘える様に頭を擦り寄せて来る幻獣達を一通り撫でるとダンジョンに進む。
ここは洞窟型のダンジョンで下に行くほど強いモンスターが出る。
基本的にクレドのサポートでソルとルナが率先してモンスターなどを狩っていく。
ソルは風の攻撃魔法を持っていたが、ルナは風と土の探知魔法しか持っていなかった。
土竜系のモンスターに苦戦していたら、土の攻撃魔法を取得していた。
それを目撃したアルバが俄然張り切り出して、狼犬達と一緒に行動し始めた。
元々幻獣のため何らかの能力はあるはずだ
が、幼い頃の強い恐怖心から種族の能力を思い出せず、魔法の発現は身体強化くらいしかなかった。
スティードと討伐された後のアイテムを拾いながら進む。
《皆んな罠に気をつけて、見えない程遠くに行ってはいけないよ》
先を争う様に駆けて行く3匹に念話すると元気良い返事は届くものの、勢いは止まらない。
あくまでも今回はダンジョンの体験だけなので3階層までで戻る予定だった。
強いモンスターや罠が少ないのと、攻撃魔法がソルしかなかったから。
《お腹が空いた》
シャンスが肩で主張をした。
クレドに休憩地に3匹を連れて来る様に指示して、地図を見ながら向かう。
先に入ってウェントゥスを入り口の見張りを頼み幻獣達に魔性果物を用意する。
自分用には出発前に屋台で買ったボアの野菜炒めドックを取り出す。
揃ったところで素早く食事をしつつ休養する。
何もなければあと1階層下を一周して戻るため、夕方には宿の場所を探して休むという段取りだが、マジックバックには万が一のために野営用の装備と食料も備えてある。
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