幻獣士の王と呼ばれた男

瑠璃垣玲緒

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第8章

賑わい

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 ドワーフの祭りは何かあれば開催されるため大掛かりな準備は必要がないらしく、重要な出席者の都合で開催日程も決めるらしい。今回は前夜祭的なものなので主賓の変異種育成計画の関係者が何人か集まれば良いということで、こちらの都合がついた最短の1週間で開催されることになった。
 育成計画事務局からはリベルタ商業ギルド長エドウィンと冒険者ギルド担当窓口のマルタンと魔性植物園職員1名が、幻獣士ギルドから2名、各関係国から2名が主賓として招かれる形となった。冒険者ギルド長オーガスティンも来たがったが、2人共がリベルタを留守にすると、帝国や王国達が変異種計画の関係者を権力や賄賂などで脅して無理矢理受付を受理させ兼ねないので残ってもらった。念のためヘンルーダの副ギルド長コナーを幻獣士ギルドに招いて、冒険者ギルド長を出陣させる事件が起きたらリベルタへ応援に行ける様に手配した。
 幻獣士ギルドの1名はドワーフの王が正式に加盟する前に是非とも会いたいとレナードを指名したため、関係各国の王族も同じ理由で捩じ込んで参加する。

という体裁を整えての開催だ。あくまでも人間の帝国や王国など人間の国々から集まっても、なるべく怪しまれない様にする口実であった。

 開催日前日夕方にレナードとマルタン、魔性植物園の対外担当が馬車で祭りを開催する街に到着した。各国の王族は開催時間前のお昼頃に転送門で移動するという。多忙なエドウィンは飛竜便で明日朝に到着予定だ。
夕食後宿のレナードの部屋で3人と歓談していると来客を告げられ、それが竜人族の王太子アドルフィトが1人だと聞いて青ざめた。宿の人の静止を待たずに部屋まで押し掛け来たが、まともに話しをしない内に前回来た副官シャビエルが迎えに来て連れ出してくれたが、明日もしつこく話かけて来そうで憂鬱だ。
「竜人族の次代はなかなか積極的ですね」
エドウィンの目が冷えた笑顔が怖かった。
「たぶん私にだけ話し掛けて来ると思いますが、念のため会員以外には話せない内容以外は王太子にはしない様にしましょう」
と提案したレナードに全員が良い笑顔で頷いた。

 翌朝朝食後に打ち合わせを兼ねて祭りのメイン会場の広場にある屋敷に移動する。道中の祭りの準備状況は一週間で準備したとは思えない程の有り様だった。ドワーフらしい飲食物の屋台のメニューは酒と、酒に合いそうなメニューが多いが、多種多様の国の名物料理も散見する。飲食のための簡易テーブルや椅子も一定間隔で用意してあり、合間に鍛冶屋や織り物などの細工物の屋台がある。祭りだからか武具類より生活道具が多い様だ。魔道具の屋台もありそうだ。屋台はドワーフだけでなく、エルフや獣人族の姿も見える。
「人間は見た限りいない様だな」
「此処に住む人間は少ないし、労働者が多いからお客としてだろうな」
「混血の中には外見に種族特性が全く現れない者いるから一見しただけでは難しい者もいるだろうが」
 そんな当たり障りのない会話をしながら通りを歩いていく。
 変異種育成計画参加のための祭りだから、変異種と見られる生き物連れもいる様だ。屋台には看板娘(?)として活躍している生き物もいる。その中でも小動物系は知能が高く主人の指示に従って手伝っているから確実に変異種だろう。お金を受け取ったり、器を主人に渡したりと甲斐甲斐しく働く者、注文する客に主人の代わりに返事している者など微笑ましい姿にほっこりする。注文待ちの間に触らせている獣系などもいる。並んだ客の子供達の相手をしている者もいた。
 人間の街では変異種と言えば荷物を運んだり、獲物を追い詰めるなど直接的に使役される仕事をする動物や魔物などばかりだが、人間以外の国々では愛玩するしかない動物達も活躍している。この計画が人間社会の全土に浸透する頃には似たような景色が見られる日が来るのだろうか。
 そういう日が来て欲しい素直にそう思った。
 ドワーフの祭りは凝った催しはほとんどないが、屋台が思いのほか賑わっていて愉しげで良い感じだ。そんな雰囲気を横目に建物の中に入っていく。
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