幻獣士の王と呼ばれた男

瑠璃垣玲緒

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第8章

隠し部屋

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 今からの打合せというのはカモフラージュで王達との会合だ。案内された部屋が隠し部屋の入り口になっているという。
 入って来た扉の奥にある扉へ行くエイドゥルに続く。扉が閉じた後に手で止まる様に合図され、暖炉の中に手を入れて何やら操作すると右側の本棚が動き入り口が現れ、奥行きの狭い小部屋がありそこに入って行く。扉が閉じると足元に光がつき、進行方向に階段がありそこを降って行く。一度曲がったがその先の扉を開いて入って行くので続く。人族以外の王族は頻繁に非公式の会談を人間が知らない方法で行っており、隠し部屋や王族のプライベート庭園などで行うらしい。
 今回は昨夜の内に護衛や交渉担当部署の役人など数人が、今朝早くに王族の一部が移転の魔法陣で到着し、午後に公式に残りの者達が転送門で到着した時に合流、あたかも一緒に到着した様に見せかける手筈だそうだ。
 ちなみに昨夜の竜人族の王太子は1人用の移転陣を使用して突撃していた様だったが。
 成体と成体間近の鸚鵡は別に用意された部屋で休憩している。幼体達は全員離れたくないとレナードの体のあちこちに陣取っていた。
 既に全員が揃っており、レナード達が最後の様だった。それぞれが簡単に挨拶を終えると話しかけて来たのはエルフ代表の1人アグラレスだった。
「精霊様方も着いて来られたのですね」
以前と話し方が違うのは崇拝する精霊に向けたものか。自分達が話題にされて嬉しいのか、6色の光が王達の周りをふよふよと飛んでいる。
「すみません、ジャコウ鸚鵡以外の幼体がどうしてもついて来たいというので」
「構わん、寧ろ大歓迎じゃ!のぅ皆の者」
エイドゥルの呼びかけにその場にいた全員が肯首する。火蜥蜴以外はレナードの体から離れて気に入った者の頭など好きな場所におさまった。選ばれた者達は歓喜して表情が崩れていたが、レナードは見なかった事にして視線をそらした。
「ところで幻獣の事で我々に相談があると聞いたがどういったことだ?」
ヴォロンウェエルフ代表が話題を振ってくれた。
「実はダンジョンで行方不明になったアルバは、光と闇の精霊様方の人間不信が高じて招いたものでした。なんとかだいたいの誤解は解けて返してもらえました。ただアルバを保護していたと言われた場所に居た者達の中に特殊な能力の幻獣や特異体がおり、アルバが私の事を話して幻獣士に興味を持たれてしまい、パートナーになりたいと言い出したそうです」
「ほぉ特異体のぅ」
「今回は問題ある能力の幻獣達の扱いについての相談です。特異体もそうですが、特殊能力の幻獣を受け入れるならどうすれば良いかを」
「そんなに特殊なのか?」
「薬草や毒草を食べて濃縮出来る能力を持つ種族で昆虫類もいます。特異体には病気を治せる小型の猿と、解毒液を生成出来る蛇がいます」
「!」
全員あまりの内容に声が出ない様だった。
最初に立ち直ったのは竜人族国王バルタサールだった。
「濃縮と解毒とは…」
「帝国や人間の王族がどんな手段を使っても手に入れたがり独占したがるであろうな」
「犯罪組織や富に目が眩んだ貴族や大商人、教会なども欲しがるだろう」
「我々エルフでさえ魅力的なのだ、当然だろうな」
「そういう事が即座に思いついたので秘密裏にご相談し、悪用する者の手に渡らないルールなどを決めたいと思ったんです。あと濃縮に関しては薬師ギルドにも情報を伝えた方が良いとは思いますが、解毒液は薬師かあるいは治療師かどちらかなのか、どちらかも伝えた方がいいのかと判断出来なかったので」
「今更ですが、精霊王様達が絡むと事が大きくなりますね。本来なら何年もかけて話し合うべき案件ですが、早々に決めないと何が起こるかわからないのでそれぞれの希望含めた原案を2、3出すという感じで進めるのはいかがでしょう?」と素早く話しをまとめ提案するエドウィンに全員一致で賛同した。
 流石にこの場にいる者だけで即答出来る問題ではないため、国や里の信頼出来る者の意見を聞いてそれぞれの案を出し、翌日早朝にもう一度集まることとなったが、時間ギリギリまで種族ごとで話し合いをしていたのだった。

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