幻獣士の王と呼ばれた男

瑠璃垣玲緒

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第9章

締結

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「今居るメンバーで相談した結果、仕事の内容としての反対はなかった。だが契約内容次第では協力は出来ない」
「こちらとしても精霊王や幻獣王達の承認もいるため直ぐにとは言わない。互いが妥協出来る契約が出来ればと考えているが如何か?」
「今こちらからの条件をリスト化している」
「幻獣士ギルドとしての絶対条件は2つ。1つは幻獣に関わる者は非戦闘員であっても全員従魔術は最低限取得する事。もう一つは一部隊に2人は幻獣士または幻獣術を取得を義務付けることだ。他の事は交渉の余地はある」
「先程の説明にない条件はそれだけか?」
「そうだ。あとは説得材料が有れば検討出来る」
「あい分かった。食事を用意するから食後のお茶までの間ごゆるりと過ごされよ」
そう言って部屋を出て行った。

 指定された時間までの間に現在提示出来る条件やこちらが要求するものの擦り合わせと、元傭兵部隊での近況及び課題点の擦り合わせを行なった。もちろん盗聴されているだろうと想定した上で。
ノックの音と共に先程の男と数人の男女が入室して来た。ソファのあるテーブルへ移動し、自己紹介の後に先ずは互いに要求する条件を書き記したものを交換して読み合った。互いが合意したものは即座に別の紙に書き、残りについて現状での妥協策が可能なものと、保留するものと分けてリストを作り直した。
 一番揉めたのは対人の戦闘と幻獣の監査について。騎士団という組織として盗賊団や荒くれ者を排除するのは当然だが、幻獣を優先するために討伐の後追いを中止する場合がある事や、幻獣の信頼を得るために最低半年は精霊か妖精が強制して付く事に強い難色を示した。此処にいるのは団長に忠誠を誓い、弱い者達を助けて来た清廉潔白な者しか居ないからと。
 それに対してレナードは光と闇の加護を持った人間が、力に溺れ心が腐敗したり、権力者達によって使い捨てされた事などによって裏切られたと思い人間に一切の加護を止めて永い間引き篭もっていた事。密猟や奴隷化だけでなく、実験に利用されキメラ化までしていて大粛正をした事。家族を人質にされて止むを得ずを行なった者も居たが、人族の事情や心情が理解出来ず幻獣が憤慨していた事。
そう言った事情があって人族を信頼出来ない事もあるが、逆に権力者側の接触を監視する意味合いもあり、一部の精霊や妖精は監査していた者を気に入れば勝手に仮契約をし、主人に危害を加えようとする者を見つけると悪戯してくれるというメリットもある事。深追いの中止に関しては幻獣側も復讐の機会を欲しがっているなどと説明した。
「…ギルド長、勝手に仮契約云々って言うのはこちらは聞いていませんが?」
副部隊長から抗議があった。
「これは勝手に仮契約された者しか知らない情報なので、たまたまそちらと交渉した者には居なかっただけで、意図して隠した訳じゃない」
「まぁ、まだ我が隊は監視期間内みたいだから仕方ないか」
「話し中失礼ながら、そちらの副部隊長は幻獣士だと聞いたのだが?」
「あぁ先日なったばかりの新米幻獣士なんですよ。幻獣士や『幻獣の卵』に加入した組織には必ず全員に精霊か妖精達が最低半年は付きます。主に幻獣との接し方や幻獣を得た後の行動のチェックなどで、問題ないと判断されれば専属は居なくなりますが、疑いが有れば1年以上ついている事もあるそうです」
「そちらの傭兵部隊はまだお試し期間という事か」
「そうですね。実際に幻獣士になって半年以内に幻獣が取り上げられた者がいますが、今のところは酒に溺れて幻獣に危害を加えようとしたり、けしかけようとした者と、借金返済のために幻獣を売ろうとした獣人族とドワーフが数名です」
「なるほど、幻獣を得てからでないと分からない事があるからと思えば我慢も出来よう」
「流石に初期に幻獣士になれた者は第1試練が厳しかった様で問題ある者も少なく、気に入られた者も多かった様ですが、最近ではあまり好かれる者も減りましたよ」

 詳細な条件などはこれから精霊王達や実務者で協議するが、新たな武装組織として今居るメンバー以外にも、退団者や非もなく放逐された者も受け入れる事には合意したため契約を締結した。
 のちに幻獣騎士団と言われる様になる武装組織の前身となる集団の誕生であった。





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