世界最強で始める異世界生活〜最強とは頼んだけど、災害レベルまでとは言ってない!〜

ワキヤク

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「あ、あの……この度は助けていただいて、ありがとうございました!」

 丁寧に頭を下げてお礼を口にするのは、先程巨大イノシシから助けた金髪の少女。

 胸の前で指を絡め、綺麗にお辞儀する仕草は少しだけ気品を感じる。だが、身に着けたズタボロな防具の影響で育ちの良し悪しに判断がつけられない。

 まぁ、素直に礼は口にできるのだから、性格上はできた女の子だろう。

「いいよ、別に気にしなくて。俺としてもやっと人に会えたんだ。それだけで助けに来た甲斐あったってもんだし」

「そ、そうなんですか?」

「おう。だから、そんなにかしこまらなくても大丈夫。気楽にしてくれて構わないよ」

「わ、分かりました……」

 そう口にして、彼女は下げていた顔を上げる。それから少しだけ姿勢を正すと俺を見据えてぎこちなく微笑んだ。

 まだイノシシに襲われた恐怖が抜け切れてないみたいだな。生きるか死ぬかの状況にあったんだ。いくら助かったとは言っても、すぐに安心しろっていうのは無理な話か。

 まぁ、順を追って少しずつ緊張を解していけばいいか。

 そう結論付けて、俺は警戒を生まないように笑みを浮かべると、

「俺の名は暁人。春崎暁人って言うんだ。君の名前を聞いても良いか?」

「は、はい! えっと、私はフィーリネ。フィーリネ・トルマリンです」

「フィーリネか。良い名前だね」

「あ、ありがとうございます……」

 名乗りあえば少しくらいは緊張も解れるかと思ったが、その考えは無に帰したようだ。そう簡単にはいかないだろうけど、ここは根気よくいかないとダメだろう。

 とはいえ、彼女の緊張を解すのに時間を浪費するのも効率が悪いからな。

 ここは本題に入らせてもらおう。

「ところでフィーリネ、ちゃん。君はどうしてこんな森の中に一人でいたんだ? その格好から察するに冒険者……みたいなことやってるとか?」

「えっと、はい。その通りです……その、依頼を受けてやってきたんですけど」

「何で君みたいな若い女の子が……見たところ、まだ十代くらいだろ?」

 そう告げてみれば、彼女は目を伏せて言いにくそうに口を開いた。

「わ、私も本当はここに来る予定じゃなかったんです。でも、ここ最近この森の主が何者かに倒されたみたいで、森の魔物たちが凄い活性化しているんです」

「次の主の座を狙って暴れてるってことか?」

 フィーリネは頷く。そして、肩を落として俯くと

「森の主が倒され、次の覇権争いの影響でこのアーウェイの森から魔物が大暴れしてる。その始末をするために、冒険者ギルドのメンバーの半数が駆り出されたんです」

「それで、不幸にも君も来ないといけなくなったと」

「はい……」

 明らかに落ち込んだ様子のフィーリネ。

 さっきの逃げ惑う姿を見るに、手に負えない仕事を任されてしまったらしい。だが、いくら自分の力量に収まらない仕事だとしても、参加せざるを得ないとは。

 もしかして、冒険者って結構ブラック起業だったりするのだろうか。

「自分で危ないと感じたのなら無理に参加しなくても良かったんじゃないのか?」

「そうなんですけど、一応倒した数と個体差によって依頼料が発生するので……。その、私って結構生活がピンチでギルドにお金を借りてるんです。それで……」

「借金の代わりに参加を余儀なくされたということか。なんというか、ご愁傷様」

 こんなに若いのに苦労してるんだな。

 俺がフィーリネくらいの年のころは学校に行ってたぞ。親に養ってもらいながら普通に学校に行っていた俺とは大違いだ。

「それで、暁人さん。あなたは何でこの森に? 見たところ、ギルドのメンバーではないみたいですけど……」

「あぁ、そうだな。簡単に説明すると、遭難者だな」

「遭難者!?」

「さっき言っただろう? 『人に会えてラッキー』だってさ。かれこれ数日間この森を彷徨っていたんだが、やっと君という人に巡り合えたというわけさ」

 本当は転生して気づいたらここだったってだけなんだが、数日間森で過ごしたというのは事実。間違ってはいないのだから問題ないだろう。

「よく無事でしたね……」

「俺、強いから!」

「あっ……ふふっ、そうでしたね」

 先程イノシシを打ちのめした時のことを思い出したんだろう。

 口元に手を添えてクスリとフィーリネは微笑んだ。

 それまでの緊張した面持ちから一転。自然な笑みは随分と可愛らしいものだ。うん、やっぱり女の子は笑顔が一番だよな。

「それでお願いがあるんだけどさ」

「森の外まで連れてってほしい、ってことですよね?」

「まっ、そういうこと。頼めるかな?」

「はい! 助けていただいたので、それくらいの恩返しはさせてください!」

 軽い様子で俺の頼みを聞いてくれたフィーリネは、おもむろに腰に下げたポーチに手を突っ込む。それから中をまさぐると、ビー玉のようなものを取り出した。

 玉の中では青い炎のようなものが揺らめいていて、彼女がそれをかざすと火力が上がった。

「こっちです。ついてきてください」

「あぁ。じゃあ頼むよ」

 どうやら、炎が強く揺らめく方向に森の出口があるらしい。

 そうして彼女の案内で移動を開始した俺だけど、道中何も話さずなのは気まずいと思って、ふと頭に浮かんだ『森の主』を話題にしてみようと思ったのだが、

「そういえば、倒された森の主ってどんな化け物だったんだ?」

「えっと、一言でいえば大きな熊のような外見をしているそうですよ? 私は見たことはないんですけど、強い爪と牙をもってる強大な魔物だとか」

「……」

 もしかして、森の主って俺が初めてぶっ飛ばしたじゃないよな?

 できることなら無関係であってほしい。そう切実に思いながら、俺はフィーリネの案内に従って歩いていくのだった。
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