世界最強で始める異世界生活〜最強とは頼んだけど、災害レベルまでとは言ってない!〜

ワキヤク

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 受付のお姉さんの正体に関して思うところはあるけれど、今は素直に待つのが正解。そう結論付けて、俺はフィーリネを連れて適当なテーブルを確保した。

 とりあえず、ここに来るまで何も口にしていないからな。

「あの魔物、どのくらいで売れるだろうな?」

「そうですね……。申し分ない巨体と綺麗に残った牙。皮なんかも暁人さんが殴った額以外は使えそうですから、結構な金額にはなるんじゃないでしょうか」

「そして、残った部分は食用として出回る、と……?」

 顎に手を添えて視線を横に向ければ、今まさに丸焼きにされた魔物の一匹が厨房らしき場所から出てきたところだった。

 こんがりと焼かれた身からは湯気が立ち、香ばしそうな匂いが鼻をくすぐる。その匂いに空腹心を掴まれてしまい、さっそく肉を注文する連中も後を絶たない様子だ。

「そもそも、魔物って食えるのか? さっき俺が倒したイノシシはまだしも、アレって見るからに蛇だよな。毒とか持ってるんじゃないの?」

「あー、確かに食べるのに拒否反応は出ますよね……」

「まぁな。あとは、単純に腹が満たされそうにないし」

 視界に映る蛇は、全長が大体二十メートル弱くらいはある大蛇だ。

 けど、それは長さが大蛇級であって胴回りは大したことないんだよな。俺の太もも程度くらいしかないから、アレをたくさんの連中で分け合ったら一人分なんてたかが知れてる。

 ハッキリ言って、俺なら絶対腹は満たされないだろう。

「ふふっ、とか言って本当は食べたいんですよね?」

「あっ、分かる?」

「はいっ。顔に『蛇食べたい~』って書いてありますからっ」

 そんなに顔に出ているのだろうかと顔を擦ってみれば、口元をぬぐった瞬間こびりつく涎。

 こんなものを口からあふれ出させていたら、そりゃ腹が減っているって気づかれるよな。

「食べますか?」

「良いのかっ!?」

「はい。助けていただいたお礼に、奢っちゃいます!」

 微笑みながらそう口にしてくれたフィーリネは間違いなく天使だった。

「じゃ、じゃあ、お言葉に甘えてもいいかな?」

「はい! ――あっ、そうだ! 暁人さんはギルド登録しますよね? でしたら、私がご飯を頼んでる間に登録を済ませてきても良いですよ?」

「えっ!?」

 思わず口から声が漏れる。

 確かに街まで出たら冒険者にでもなろうとは思っていたけど、そのことについてはまだ彼女には伝えていないはずだ。

 そんな困惑が伝わったのだろう。

 悪戯な笑みを浮かべてフィーリネは片目を瞑ると、

、顔に書いてましたからっ!」

「はは……まいったなぁ。俺のことは全部筒抜けか?」

「ふふっ。さて、どうでしょう?」

 笑みを浮かべたままフィーリネは立ち上がる。それからペコリと頭を下げると、彼女は今まさに地獄の業火に焼かれている大蛇の方へと歩いて行く。

 そして、途中で振り返ると、

「登録はさっきの受付で済ませられますから」

「あぁ。色々とありがとな」

「はい!」

 年相応の可愛らしい笑みを浮かべて今度こそ姿を消したフィーリネ。

 そんな彼女を手を振って見送り、姿が見えなくなったのを確認すると俺の口角は自然と上がっていた。

 本当に、色々と助けてくれてありがたいことだ。彼女と出会っていなかったら、多分まだアーウェイの森を彷徨っていたことだろう。

 そういう意味では、彼女は俺の幸運の女神さま――いや、天使なのかもな。

「よし! じゃあ天使の助言通り、ギルド登録済ませますか!」

 意気込みは良し。軽い足取りで受付まで移動すると、さっきの色っぽいお姉さんが戻ってきていた。

 彼女は近づいてきた俺の存在に気が付いたらしく、立ち上がり頭を下げると、

「あっ、申し訳ありません。まだ査定の方が終わっておらず換金ができてないんです。もう少し時間をいただきたいのですが……」

「あぁ、大丈夫ですよ。今回は別の用事で来させてもらったので」

 胸の前で手を揺らし、慌てて訂正。

 本当に申し訳なさそうに頭を上げるお姉さんに向けて精一杯の笑みを向けると、

「実は、これを機会にギルド登録しようと思うんですけど、その受理をお願いしようと思いまして」

「あっ、そういうことですか」

 胸に手を当てて心底安堵した様子の彼女はホッと息を吐く。

 何だろう。俺はそんなにも気が短いように思われているのだろうか。別に怖がらせるようなことは何一つとしてしていないはずなんだけどな。

 そんな俺の心情なんて知る由もない彼女は、カウンター下から一枚の紙を取り出した。

「それでは、こちらにご署名をお願いします。何か分からないところがあれば空欄でも構いませんので」

「わかりました」

 差し出された書類に視線を落とせば、書いているのは日本の履歴書に近い感じのものだった。

 生年月日、名前、年齢という日本と共通のものもあれば、得意な魔法の属性から卒業した魔法学校等の経歴など、まず日本生まれじゃ埋められない欄も存在した。

 でも、まぁ分からなければ空欄で構わないということだからな。さっさと埋めていく。

「できました」

「はい! ――えーと、春崎暁人さんですね。魔法等の項目が全般的に空欄と言うことなのですが、魔法検査はご所望ですか?」

「魔法検査?」

「簡単に言うと、魔法に関しての健康診断の様なものです。受けた方がどのような魔法を扱え、どれほどの力を持っているのかを検査するんですよ」

 つまり、俺にも魔法が使えるかどうかが分かるってことだな。

 まぁ、転生した時に災害レベルの力をもらっちゃってるからな。なんとなくオチは見えてはいるんだけど、いい機会だ。診断してもらった方がいいだろう。

「じゃあ、お願いしま――」

「ちょっと待った」

 検査の方をお願いしようとした俺の前に横から手が出てきて言葉を遮る。

 見れば、ちょうどフィーリネと同年代くらいの男の子がきざったらしい笑みを浮かべて立っていた。

 そんな彼は横目に俺を見据えると、

「その検査、ボクも一緒に受けても構わないか?」

 無駄に整った表情を笑みに変えて、そう提案してくるのだった。
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