世界最強で始める異世界生活〜最強とは頼んだけど、災害レベルまでとは言ってない!〜

ワキヤク

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 中世的な整った顔立ちと濃い青色の髪が印象的な少年。身にまとったブレザーのような衣服は所々に黄金色の刺繍装飾がされていて、白い生地に相まって気品な雰囲気を感じる。

 そんな彼はニコリと微笑むと、ルビーのような美しい赤色の瞳を受け付けのお姉さんに向けた。

「構わないでしょうか?」

「えっと、こちらとしては構いませんが……」

 答えづらそうに彼女は俺を見据える。

 ギルド側としては手間が省けて問題ないが、俺の気持ちを尊重するということだろう。

 こういう急にやってきた客に対しても柔軟な対応を見せるとは、流石は異世界の受付お姉さん。踏んだ場数が違うということだろうか。

「暁人さん、こちらの方も同じように魔法検査を受けても構わないでしょうか?」

「まぁ、一緒に受けて何か不便なことが無いのなら俺も構わないですよ」

 快く承諾してみれば、再び安堵するように息を吐く彼女。

 やっぱり俺は知らないうちに何かしらのオーラでも出しているんだろうか。それ以外でこんなに相手を困惑させる理由が見当たらないんだけど……。

「で、では、お二人ともついてきてください。検査は別室で行われますので」

「はい」

「えぇ、分かりましたよ」

 髪をなびかせきざったらしく返事をする少年。いちいち行動が面倒なことこの上ないが、個人の癖や仕草にケチをつけてたら懐の小ささが伺えるからな。

 お姉さんを見習い、社会人時代の営業スマイルを浮かべて俺は少年に手を差し出す。

「さっき聞いただろうけど、俺は春崎暁人。今日からこのギルドでお世話になることになってるんだ。よろしくな」

 少年は差し出された手をちらりと見ると、ニコリと笑って握ってくる

 瞬間、込められた力。傍から見れば仲良く握手しているようにも見えるだろうが、実際のところ彼は俺に対して嫌悪的な態度を見せていた。

 つまり、凄い力で握られてます。

「こちらこそ、よろしくするよ。ボクはゾイト・ブランシュベール。あの誇り高きブランシュベール家の生まれにして、未来の跡取りだ!」

「……そうっすか」

 淡白な反応になってしまったのも仕方ない。

 だって『ブランシュベール家』とか言われても正直ピンとこないからな。コイツの身に着けた衣服と、無駄に偉そうな態度を見るに、おそらくはこの世界の貴族的存在というのは分かる。

 けど、あくまでそれは推測でしかないからな。

 もしかしたら、誰も知らない無名の貴族って可能性も――

(……ブ、ブランシュベール家って、オブシディアンでも有数の大貴族じゃないかッ! 何でそんなとこの嫡男がこんな場所にいるんだよ!?)

(し、知らねぇが……ブランシュベール家と言えば、数百年前の大戦争で多大な戦果を挙げて出世して貴族の仲間入りをした武闘派だろ? だったら、こういう野蛮なところにいても良いんじゃねぇか?)

(それもそうだな……)

「コソコソ話しているみたいだけど、全部筒抜けだぞ……」

 だが、俺の推測は間違ってはいないらしい。

 しかも、この国でもかなりの地位にある貴族のお坊ちゃまということだ。

「どうやら、またボクの噂を誰かがしているみたいだな」

「……」

 やれやれといった様子のゾイトだが、白々しいにも程があると思うのは間違っているだろうか。

 顔を合わせてからものの数分で好感度がガクッと下がった少年の手を離すと、自然な笑みを浮かべて律義に待っていてくれたお姉さんに追従を始める。

 すると、ゾイトもそれに続いてくれるんだが、どうもその視線は俺にばかり注がれている気がする。

 言いたいことがあるなら素直に口にすればいいものを。随分と回りくどい性格をしてらしゃるらしい。

「暁人、でしたか?」

「おいおい。近頃の子供は人を即座に呼び捨てするのか? 行儀がなってないんじゃないの?」

「おっと、それはすまないな。貴様のような虫けらにも、ある程度のプライドがあるとは思わなくてな」

「……」

 これは喧嘩を売ってるのか? そうだよな?

 だが、ここでそう簡単に手を上げてしまえば年上としての面目丸つぶれだ。ここは大人の余裕というものを見せつけてやらないとな。

「俺とお前は初対面のはずだが、何で俺を毛嫌いするんだよ? 何か気に障ることでもしたのか?」

「流石は虫風情だな。自分の過ちに一切気づいていないとは……。滑稽にもほどがある」

「なんだと……?」

「まぁ、一つだけ言えることがあるとするなら――貴様はボクからを盗んだということくらいだな。まぁ、ヒントを与えたところで? 貴様が気づくはずはないんだけどな」

 人を馬鹿にした様子でクスクスと笑うゾイト。

 何がそんなにおかしいのか。俺には自分の歩き方以外で見当たらないんだが、コイツの場合馬鹿にしているのは歩き方ではなく俺自身だ。

 大事なものを奪われたというが、初対面なんだから奪うも何もないだろう。

 全く身に覚えがない。

「あの……魔法検査、開始してもよろしいでしょうか?」

 いがみ合いながら歩いていると、いつの間にか目的地に到着していたらしい。

 八畳くらいの広さの個室。床や壁はコンクリートのようなもので作られているのか灰色一色で、殺風景な部屋の中央にはデカい水晶玉のようなものが設置されてあった。

「あっ、すいません。見苦しいところを……」

「ボクは悪くない。彼が気に障ることをしたから当然だ」

「え、えっと、それでは……水晶の前に移動してください」

 困ったようにそう口にする彼女の言う通りに部屋中央の水晶の前へと移動する。

 近くに寄るとなお一層大きさが増した気がした。

 つるりとした滑らかな表面に、水晶玉を挟んだ向こう側すらも見えるほどの透明度を誇る玉。神秘的な雰囲気を感じるよ。

「では、水晶玉に手をかざしてください」

 言われた通りに手をかざそうとした俺だが、そんな俺の前にゾイトが割込み手を上げる。

「ボクを差し置いて先に検査するなんてことができるとでも?」

「こ、こんのクソガキ……」

 いちいち癇に障る子供だ。

 だが、ここで暴れて迷惑はかけられない、平常心だ。平常心でこの場を乗りこえるんだ。

「終わりです! ――こ、これは!」

 などと自分の感情を抑えているうちに検査が終わったらしい。

 少し離れた場所でタブレットくらいのパネルのようなものを手にしたお姉さんが声を上げた。

「どうしたんだ? ボクの魔法検査の結果に何かあったのか?」

「あったのかな、なんてものじゃありませんよ! 魔力量は平均値を軽く凌駕していますし、スキルも……何これ、『命中』だなんて……」

 ……凄い驚いているみたいだけど、そんなに凄いことなんだろうか。

 などと他人事のように彼女を見据えていると、真横から嫌な高笑いが木霊する。

 見れば、当然ゾイトが胸を張って見下すように俺を見据えていた。

「聞いたか? ボクの魔力は平均値を軽く凌駕しているらしいぞ。ふふっ、流石はブランシュベール家跡取りであるボクだな。自分の才能が怖いよ」

「あぁ、そうですか……」

 軽く流して水晶玉の前に今度こそ立つ。

「次、俺の番行きますけど、良いですか?」

「――えっ? あっ、はい、どうぞ」

 お姉さんの言葉を皮切りに、俺は水晶玉に手をかざす。

 ゾイトのことは気がかりだが、それ以上に自分はどれだけの力を持っているのか。そのワクワク感が一時的にクソガキへの苛立ちを緩和したのは言うまでもない。
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