世界最強で始める異世界生活〜最強とは頼んだけど、災害レベルまでとは言ってない!〜

ワキヤク

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 ギルドを後にする頃には、すでに空は星がチラホラと輝く茜色に染まっていた。
 昼間は騒がしい道もこの時間帯となれば静かなもので、立ち並ぶ家々からは明かりが漏れ始めている。

 そんな夕焼けに照らされた静かな道を、俺はフィーリネと共に歩いていた。

 目的地は――フィーリネの家である。

「なぁ、本当に君の家に泊まらせてもらって大丈夫なのか?」

「全然問題ないですよ? むしろ、何もない家なので暁人さんは大丈夫なのかなって心配なくらいですから」

 控えめな俺に対し、フィーリネは大して気にした様子もなく答える。

 俺はこの世界にやってきてから、大半は野宿して生活してきていた。
 食事はもちろん自炊だし、寝床なんかも自分で草木を集めてそれらしくしたものを使ってきていたよ。

 そんなこの世界で培ってきた技術を使って、今夜も野宿をと。そう考えていた俺だが、どうやら彼女はそれをよしとしなかったらしい。

 『婚約者を外で寝泊まりなんかさせられません! 外で寝るくらいなら、私の家に来てください!』

 羞恥に頬を染めながらもそう提案してきたフィーリネに、半ば強引に連れられたわけだ。
 
「ここです」

 事の経緯を思い返しながら歩いていると、どうやら目的地に到着したらしい。
 見れば、両脇をレンガ造りの立派な家に挟まれた場所にひっそりと佇む小屋。

 全体的に薄汚れた印象を覚えるそれは、お世辞にも人が住んでいるとは思えない。どちらかというと物置と呼称した方がいいかもしれないそんな小屋だった。

「ず、随分と年季の入った家に住んでるんだね……」

「別に気を使わないでも大丈夫ですよ? 家が汚いのは私も自覚してますから」

 苦笑してからフィーリネは小屋の中に入っていく。
 隣のレンガ造りの家に入っていかない辺り、本当にこれが彼女の家らしい。

 お金に困っているとは聞いていたが、こんな家で寝泊まりするしかないほどにまで貧困だとは。さすがに想像もしていなかった。

 などと考えつつも家に入ってみれば、無駄なものなどない随分と質素な屋内が俺を出迎えてくれた。

 『女の子らしさ』の欠片もない屋内は、本当に最低限人が住めるといった感じだよ。インテリアなんかも、テーブルと椅子。あとは、小さなベットくらいだろうか。
 その他のものは取っ払われている感じだ。

「言っちゃ悪いけど……よくこんなところに住んでるね」

「最初は苦痛に感じるかもしれませんけど、外よりは悪くはないんですよ?」

「そりゃ確かに雨風はしのげるけどさ……」

 野ざらしの外に比べればマシだけど、ただそれだけだ。
 年頃の女の子が住むにしては酷いものだと思うよ。

「……俺、ギルド試験受かって金が貯まったら、絶対君を普通の家に住まわせてやるから……」

「あ、あはは……ありがとうございます」

 最初は戸惑いもあったが、今はここにきて正解だと思う。
 何せ、来てなければこんな惨状を目の当たりにできていないのだから。

 勘違いとはいえ、婚約者となったフィーリネをこんなところに長居させるわけにはいかない。

 だから、必ずギルドの試験に受かってやる。そんな決意を再び心に刻んでいると、ほんのり甘い香りが鼻をくすぐった。
 見れば、小さなお盆のような台に二つカップを乗せたフィーリネの姿。

 家には似つかわしくないのにフィーリネが持つと絵になる。そんな装飾に彩られた美しいカップから漏れた香り。
 手渡されたカップを見てみれば、紅茶らしきものが注がれていた。

「ゾイトからもらった紅茶です。お客様用にと思って取っておいたんですが、役立つ日がくるなんて驚きです」

「まぁ、あいつがこの惨状を知ってるなら、放っておいたりしないよな。でも、アイツのことだ。家に来ないかとか誘われたんじゃないか?」

「そうですね。確かに『ブランシュベール家の養子にならないか』とは言われましたけど、お断りしました。――迷惑はかけられませんし」

 幼馴染のゾイトがフィーリネのこの暮らしを良しとするはずもない。
 とはいえ、本人自身が助けを拒むのであれば、その意思を尊重するのがゾイトと言う女の子だ。

 だから、せめてと言わんばかりに食器や紅茶を用意してくれたんだろう。
 やっぱり、アイツはフィーリネに甘い。

「わ、私のことは置いておいて、暁人さんののことです! それを解決しないことには、私をこの家から出してはもらえないんですから」

「はは。そうだったな」

 彼女の言葉にうなずき、俺はカップをテーブルに置くと

「――力の加減が出来ていないのかどうか分からないが、とにかくこれを何とかしたいんだ。何か、方法に心当たりがあったら教えてほしいんだけど」

 ここに来るまでにある程度は彼女に平原でのことは説明していた。

 ドゥルドゥーを捕まえようとしたら、何故か圧縮されて無残な死を迎えたこと。
 かと思えば、再度の挑戦からは触れることはできるようになったが、ちょっとの衝撃で吹き飛んでいくこと。

 自分でも話しながら原因を考えてみたものの、結局答えは出なかった。だから彼女の力を借りようと相談してみたわけだが、残念ながら原因は分からないらしい。

 首を横に振って俯くと
 
「すいません……」

「だよな……」

 なんとなく分かってはいた。
 自分の身体のことならともかく、人の身体に関して答えを説ける相手がいるとするなら、医者やそれこそ神とかだけだろう。
 それをフィーリネが答えられるわけがない。

 せめて、あの謎の声にもう一度会えれば話は早いんだけどなと、そう思いながら俺はフィーリネの入れてくれた紅茶にもう一度口をつける。

 それからいくつか意見を出し合ったんだが、結局打開策は見つからず俺たちは夜を迎えたのだった。
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