世界最強で始める異世界生活〜最強とは頼んだけど、災害レベルまでとは言ってない!〜

ワキヤク

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 気が付けば、俺は辺り一面真っ暗な空間に一人立っていた。
 何も見えず、何も聞こえない。真っ暗闇に包まれた空間は、何処となく俺が『謎の少女の声』と出会った真っ白い空間に似ている。

「――どこだ、ここ……? 何で俺はこんなところに……」

 確か、ギルドからフィーリネの家まで移動して、そこで俺の力のことで色々話していたはずなんだけど、そこから先が霧のかかったように思い出せない。
 まるで意識が一瞬で刈り取られたような……。

「……ん?」

 自分に何が起きているのか。
 それを思い出そうと頭を悩ましていた俺だったが、突然聞こえてきた騒音に気が付いた。

 第一印象は行進だ。
 兵隊なんかが列をなして歩く時の大きな足音。それに近い気がしたんだが、音が鮮明になるにつれてそれも違うと理解する。何故なら行進のように統一性のある音じゃないからだ。

 どちらかというと、群れ移動だろうか。
 などと考えていると、音の発生源がやってきたらしい。騒がしい足音に混ざって奴らの鳴き声が聞こえてきた。

『ゴォゲェゴッゴォォォォォオオオ~~ッ!!』

「――いッ!?」

 鳴き声が聞こえた瞬間嫌な予感がして振り返る。
 すると、視界に映ったのは数えきれないほどの群れを成したドゥルドゥーたちが、何を考えているのか分からない目を浮かべたまま突っ込んでくる光景だった――







「く、来るなぁぁぁぁああああ~~ッ!!」

 心からの叫び声を上げながら俺は上半身を勢いよく起こす。
 荒れた呼吸のまま辺りを見回せば、薄暗いけれどフィーリネの家の中だと確認できた。

「ゆ、夢……か?」

 汗ばんだ顔を拭いホッと安堵の息を漏らす。
 再度周りに視線を向けてみれば、質素な雰囲気はそのまま。家具は動いていないし昨日紅茶を入れたカップも中身が綺麗になくなったままテーブルの上に置かれてあった。

 そして、そのカップの先には

「スー……スー……」

 テーブルの向かい側で静かに寝息を立っているフィーリネの姿。
 いつもは笑みを浮かべた印象の多い整った顔立ちは、寝ていても可愛らしいものだ。

 そんな俺と同じく寝落ちしてしまったらしい彼女の顔を見て俺は理解した。

 どうやら俺は群れを成したドゥルドゥーたちに踏み殺される悪夢を見たらしい。

「昨日の今日でこんな夢見るとか……俺って、呪われてるのか?」

 確かに昨日は羽欲しさに大量のドゥルドゥーを吹き飛ばした。
 けど、命を奪ったのは最初の握りつぶした個体ただ一匹。他は生きているはずなのだから、呪われる筋合いはないはずだ……多分。

 などと考えていると、

「……ひっ!」

 突然聞こえてきたのは『ゴォゲェゴッゴォー』というドゥルドゥー特有の鳴き声だ。

 まるで、夢の続きとでも言いたげな鳴き声に思わず女々しい悲鳴が口から漏れた。
 恥ずかしさでどうにかなってしまいそうだが、フィーリネは寝ているし彼女の他には誰もいないのだから問題ない。

 嘆息しながら鳴き声の聞こえた頭上を見てみれば、変な文字が浮かんでいるのが確認できた。

「こ、今度はなんだよ?」

 ガラス細工で作られたかのような文字。
 一見するとアートのように見えなくもないそれだが、よくよく観察してみると何やら意味のあるものらしかった。

「『スキル――早起き』?」

 文字をそのまま読んでみたが、よくわからない。
 何だろうかと手を伸ばして触れてみれば、砂のように消えてしまったよ。

 頭上に突然現れ、目覚まし時計のように俺を起こして消え去った文字列。
 昨日までは確かに存在しなかったもののはずだ。

 それが何故、ドゥルドゥーの悪夢を見たその日に出現したのかはわからない。ただ一つ言えることは、あの文字列は嫌いだ。

「はぁ……。起きてしまったものは仕方ない。少し早めだけどトレーニングするか……」

 上に腕を伸ばして背伸びすると、小気味良い音がなる。と同時に少し軽くなった気がする肩を回しながら立ち上がると、俺は寝ているフィーリネを起こさないように家を出た。

「まだ真夜中じゃないか……。ホント、俺あの文字列大嫌いだ……」

 家の外に出た俺を迎えてくれたのは真っ暗闇。
 どうやら日の出の時間すら迎えていないらしい街の中は静寂に包まれていた。

 何故この時間帯に俺を起こそうとしたのか。
 文字列には確か『早起き』とかって書かれていたけど、いくらなんでも早すぎるだろ。

「……絶対この文字列用意した奴は性格ねじ曲がってるぞ」

 愚痴をこぼしながらも俺は歩き出す。
 地面を壊さないよう慎重に進んだ俺が出向いた場所は、昨日ドゥルドゥーと羽取りした平原だ。

 まだ俺が暴れた跡が当然ながら残っていて、いたるところの地面が抉れたり亀裂が入っていたりと酷いものだ。

 おかげで生物はおろか、生えていた草花だって引越しでもしたかのように消え去っている。自分でやっておいてなんだけど、もう少しマシにならなかったのか。

「まぁ、こうならないように今から練習するわけだけど……っと」

 呟きながら軽めの準備運動をして、少し身体が温まったところで俺は走り出す。
 結局、今の俺の俺の身体を制御するには、使うだけ使って感覚を身体で覚えるしか方法がないようだ。

 どんなスポーツも仕事も、地道な努力の積重ねで上手になっていくんだ。
 俺だって、それに習って頑張るほかないだろう。

「ほっ! はっ! ふっ!」

 今回の走り込みの成果は上々といったところか。所々は地面が抉れていたりするが、大半を亀裂程度に抑えられている。
 ドゥルドゥーを追い回す時に練習した早歩き維持がこんなところで結果になるとはな。培った経験は何処で活かされるか分かったものじゃないよ。

 そうして、走ることから始まったトレーニングは、無難な筋トレを交ぜたり、普通に歩くことや走るなどのメニューを経て残り最後となった。

 最後に残ったメニューは、もちろん明確な敵を想定したイメージトレーニングだ。

「……これが一番難しいんだよな」

 加減しすぎても弱いだけだし、加減を損なっても全てを壊す剣になる。
 強くもなく弱くもない。そんな中間地点をこの異世界に来てから何度も感覚で探ってきてはいるものの、未だに見つかっていないのが現実だ。

 こればっかりは、他にも増して地道に進めていく必要があるだろう。

 拳を突き出した衝撃波が遠く離れた岩を砕けば強すぎると威力を少し抑える。放った蹴りにキレが無ければもう少し威力をあげて再チャレンジ。
 手探りで感覚を掴む。当然ながらそれが一番時間がかかった。

 とは言え、時間をかけたぶん多少は感覚が掴めたんじゃないだろうか。

 流れる汗をぬぐいながら、真っ二つに割れた自分の五倍はある岩に腰掛けて俺は呼吸を整えるのだった。
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