世界最強で始める異世界生活〜最強とは頼んだけど、災害レベルまでとは言ってない!〜

ワキヤク

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 フィーリネの家に戻るころには、すでに日は昇っていた。
 今日は一段と身体の調子が良かった。思わず汗だくになるまでトレーニングを続けてたら、いつの間にかこんな時間である。

 流石に何も言わずに出ていったのはまずかっただろうか。なんて考えながら家の扉を開けると、案の定ご立腹のフィーリネが仁王立ちしていて静かに怒られたのは言うまでもない。

 声を荒げて怒るわけではなく、冷たい視線で怒るところが彼女らしい。
 笑っているけど笑っていない。そんな目を始めて見たよ。

 とはいえ、彼女も本気で怒っているわけでもないらしく、素直に『トレーニングに行っていた』と言えば許してくれた。

 そして、現在はそんな彼女が用意してくれた朝食に舌鼓を打っているところだ。
 
 朝食のメニューは野菜や肉の入った鍋にパンを浸したスープ。
 味は随分と薄いけれど、不味いわけでもない。浸かったパンを口にし咀嚼してみれば、柔らかくほぐれた食感とともに口の中に若干の塩気を含んだスープの旨味が広がる。

 現代の食事に比べれば劣るけれど、こちらの世界に来てから食べたものでは一番だ。

 特に、この肉。
 柔らかな上に肉厚。スープの味も染みていて美味い。

「すいません、こんなものしか用意できなくて……」

「こんなものって、すごく美味いよ! スープも美味いけど、特に肉が美味い。これって、何の肉なんだ?」

「これ、昨日ギルドでおすそ分けしてもらったのお肉なんです。美味しいですよね!」

「……えっ!?」

 フィーリネの言葉に思わず動かしていた手が止まる。
 何だろう。今、肉のことで聞き捨てられない言葉を耳にした気がする。

「何の、肉だっけ……」

「……? ドゥルドゥーですけど……」

 どうやら聞き間違いではなかったらしい。
 口の中に残った肉を咀嚼し飲み込むと、俺は口元を押さえて涙を流した。

 何故だ。何故今日はこんなにもドゥルドゥー関係のものが多いんだ。
 悪夢から始まり、鳴き声が挟んで最後は食事の中に混入した肉って。俺は本当にドゥルドゥーに呪われているのかって話だ。

「ど、どうしたんですか!?」

 突然涙を流し始めた俺に心配の声をかけてくるフィーリネ。
 喉に食事を詰まらせたとでも思ったのか、わざわざ隣までやってきて背中をさすってくれる。

 だけど、違うんだよ。俺は別に食事を詰まらせたわけではない。
 素直にそう伝えたかった俺だけど、彼女の優しさが身にしみてしばらくはなすがままになっていた。

「……ありがとう」

 心が落ち着いたのは、それから数分ぐらい経った後だった。
 恥ずかしい気持ちを抑えながらお礼を口にしてみれば、彼女は笑みを浮かべて「気にしないでください」と言う。

「でも、どうしたんですか? もしかして、お口に合わなかったとか……でしょうか……?」

「いや、さっきも言ったけどフィーリネちゃんの作ってくれた食事は美味かったよ。それに関しては、全然問題ないんだ。ただ……肉がさ」

「お肉? ドゥルドゥーのお肉がどうかしたんですか?」

 小首を傾げる彼女に、俺は今朝起きたことを説明していく。
 悪夢のことや、今朝の鳴き声のこと。偶然にしては、ドゥルドゥーが関わる異変が多すぎた。

 昨日は連中をぶっ飛ばしまくったし、呪われてもおかしくはない。だからこそ怖いのだと、包み隠さず口にしてみれば、

「ふふっ、暁人さんでも怖いものってあるんですね」

「そりゃああるさ。俺だって完璧人間じゃないからな」

 呪いや心霊現象。そんな日本特有の説明できない現象は、俺にとって恐怖の対象でしかない。

 海外の映画に出る『ゾンビ』や『化け物』の類は、銃でどうにかなってしまうからそうでもないが、日本産の『逃げるしかない』という類の恐怖はどうしても克服できないと思うよ。

 思い出しただけでも寒気が……

「でも、確かに不自然ですね。悪夢は別として、今朝方耳にしたドゥルドゥーの鳴き声。頭上に浮かんだスキルに関しても、色々と不可解です」

 顎に手を添えて呟くフィーリネ。
 鳴き声はまだしも、スキルに関しては何か知っているかもしれないと思っていた俺だが、どうやら考え込むその姿を見るに彼女にもわからないらしい。

 そうして深く考え込んでいたフィーリネだが、一つの結論が出たんだろう。顔を上げると、

「本当に呪われていたらマズイですからね。一応、神会に行ってみた方がいいかもしれんません」

「神会?」

「簡単に言えば、神に遣える神官様がいらっしゃる場所です。祈りを捧げたり、教えを受けたり。今回のように解呪なんかもしてくれるんですよ?」

 つまり、平たく言えば教会のような場所ということみたいだな。
 祈りや教えを請うまではわかるが、解呪って。魔法の存在する世界ならではな気がする。

 だが、それ故に効果も絶大だろう。
 胡散臭い霊媒師と違って、本当に存在する魔法なんだし。

「分かった。その神会って所に行けばいいんだな。場所はどこにあるんだ?」

「ふふっ。案内します……けど」

 彼女はそこで言葉を切って、俺の身体を上から下までマジマジと見つめる。
 それから苦笑してこちらを指差すと

「流石にその服装をどうにかしないことには問題になるかもしれません……」

「……確かに、そうだな」

 未だ、ゾイトの上着に焦げたズボン。
 酷い格好を見て、俺も彼女につられるように苦笑するのだった。

 
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