世界最強で始める異世界生活〜最強とは頼んだけど、災害レベルまでとは言ってない!〜

ワキヤク

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 その昔、まだこの世界の人々が魔物の恐怖に怯えるだけの毎日を送っていたころ。オブシディアンには四人の強大な魔力を持つ化け物が存在した。
 魔物たちを従え、世界に恐怖を与えた存在。彼らは自らを魔の四天王と名乗った。

 目的は何なのか。どこから出現したのか。
 その全てが謎。ただ分かっていたことは、人類の明確な敵ということだけだった。

 当時の人類は魔物に生活を脅かされ、魔の四天王に恐怖し、ただ『死』という絶望が自らの前に現れないことを願うばかりの毎日を送っていた。

 だが、必ず暗闇が訪れるように、夜明けだって必ず訪れるものだ。

 魔物たちの脅威に侵されていた人々の前に女神が現れたのだ。
 名を『ネフラ』という女神は、ただ侵略を待つばかりの人々に戦う力――すなわち、魔力を与えた。

 そして、人類を先導。
 人類の中から一人の勇者を選び抜き、彼の者に絶対的な力を与えて見事人類に勝利をもたらした。人類は勝利を――自由を手にしたのである。







「聖地アガットは、女神ネフラ様に選ばれた勇者が魔の四天王の一人と壮絶な戦いを繰り広げ、見事それを打ち破った場所なんです!」

 目の前に広がる景色は、一言で表すと荒野だろうか。
 草木の一つだって生えていない殺風景な光景。

 今まで自然豊かな世界ばかりを見てきたからだろうか。生気を感じられない――言ってしまえば、墓場のような印象を俺は覚えた。

「聖地っていうわりには、随分と寂しいところだな……」

「数千年前までは自然豊かな場所だったそうです。ですが、勇者と魔の四天王の激闘で生き物全てが死に絶えた。そうして生まれたのがこの光景だそうです」

 生き物全てが死に絶える。
 豊かな自然を植物すらも生えない地獄のような場所へと変貌させたんだ。きっと、天変地異ともいえる激闘を繰り広げたんだろう。

 そうでなければ、このようにすべてがなくなった世界にはならないはずだから。

 目の前に広がる光景を目に焼き付けていると、視界の隅に生き物姿が確認できた。
 綿あめのような桃色の毛から、蝙蝠のような羽の生えた存在。どうやら魔物らしい。

 こちらの存在には気づいていないようで、フワフワと空気に流される風船のように漂う姿は見ていて面白い。

「――でも、こんな場所でも魔物は住めるんだな」

「はい。どんな過酷な環境でも生きていられる。このような場所でも例外ではありません」

「だから、なんだな……」

 ここに来るまえ、フィーリネに言われたことを俺は口にした。

 聖地アガット。名前だけ聞けば神聖な場所と思えるそんな場所だが、実際は誰一人として人間が足を踏み入れない危険地帯らしい。
 そうして誰も寄り付かなければ魔物が増えるのも必然だ。

 少し視線を他へ向ければ、化け物の姿が目に入る。
 まるで、魔物の放牧場だな。 

「さて、そんな危険地帯に来たわけだが――本当にこんなところに目的の能力を持った魔物はいるのか?」

「はい。私は一度、その力に屈していますから……」

 当時のことを思い出したのか、消えそうな声でフィーリネは言う。

 曰く、彼女は俺と会う以前にこの場所を訪れているらしい。
 そして、運悪く化け物に遭遇。そいつとの戦いを繰り広げた結果惨敗してしまったとのことだ。

「それからです……。なんとか死に物狂いでカルサイトにまでは戻ってこれたのですが、負けた拍子に運気も落としてきてしまったみたいで災難続き。結局、借金まで作ってしまった始末です……」

「借金返済のために防具も武器も売らなきゃならなくなったんだよな?」

「はい……」

 目に見えて落ち込む彼女だが、フルフルと首を横に振るとこちらを見据える。
 その表情には影はなく、ただ嬉しさだけがあった。

「けれど、そんな防具も武器も帰ってきました! それに頼れる婚約者だっているんです。怖いもの無しですよ」

 聖地アガットは超危険地帯だ。
 俺は問題ないだろうが、フィーリネを危ない目に遭わせられないからな。一応、保険という意味でも以前手に入れた報酬金で取り戻しておいてもらった。
 
 そんな彼女に俺は微笑みかけると親指を立てると

「あぁ。今回は俺もいる。絶対前回の二の舞にはさせないから安心して案内してくれ」

「はい!」

 小さく微笑むと、フィーリネは前を見据える。
 そして、空色の瞳を瞑ると小さく何かをつぶやいた。

 瞬間、彼女の身体が頭の先から足の先まで淡い青色に発光する。
 そうして身体全体を包み込んだ光は、やがて粒子となってフィーリネから弾け飛んだ。

 その場に残るのは当然フィーリネなんだが、彼女であって彼女じゃない。そんな印象を覚える姿のフィーリネが立っている。――というのも

「……もう少し、女の子らしい装備にならなかったのか?」

「えっ? そ、その、可愛くないですか……?」

「可愛いというよりは、カッコいいかな……」

 苦笑しながら答える俺の視線の先に立つフィーリネ。

 黒を基調としたフルプレートではあるのだが、いたるところが針のように尖っていて全体的に刺々しい。
 その背に担いだ巨大な剣は、片刃ではあるのだがサメの歯のように鋭く、小刻みに刃が突起した非常に面白い形をしたものだ。

 とはいえ、形は珍しくても凶器としての危険度は最高潮。

 それを他でもないフィーリネが使うって言うんだからさらに驚きだよ。
 彼女には可愛いものの方が似合うと思うんだが、身に着けた鎧は男の受けの良さそうなものだ。実際、俺もそんな鎧があるのなら欲しいくらいだし。

 つまり、彼女のセンスは少しズレてるみたいだ。

「まぁとにかく、用意も済んだんだ。――行こうか」

「わかりました」

 言いたいことはあるけれど、それは帰ってからでも可能だ。
 今はどうにかフィーリネの言う力を持つ化け物をと会い、そいつから力を得ることの方が先決だ。

 頷くフィーリネを連れて、俺たちは聖地へと足を踏み入れていった。
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