世界最強で始める異世界生活〜最強とは頼んだけど、災害レベルまでとは言ってない!〜

ワキヤク

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 結果から言って、俺は呪いにはかかっていなかった。
 神会で勤める司祭のお爺さんに身体の隅々を診てもらったんだが、呪いの類の反応はなく全くの健康体だそうだ。

 それなのに悪夢を見たりしたのは、ドゥルドゥーを大量に殺めてしまった罪悪感から来るのではないか。
 というのが、診察した司祭様のだした結論だ。

 曰く、『要は、精神的な問題じゃから、気を強く持てば悪夢も見んじゃろう』とのことらしい。

 なんとも適当な診断だったが、現代医学でも人間の全ては解明できていないんだ。魔法という未知な力があったとしても、分からないこともあるだろう。

 そうした結論に至った今回の呪いの件だが、実は収穫が全くなかったというわけでもない。

 今回俺を担当してくれた司祭様は、『スキルチェッカー』と呼ばれる相手のスキルを見抜く力を保持していた。
 そんな彼に俺のスキルを見てもらったところ、驚くべきことが判明したんだ。

『……こ、これはドゥルドゥーの固有スキル、『早起き』じゃないか! そ、それにこちらは『火炎』……。何故魔物でもないアンタがこのスキルを……』

 今朝俺を起こしたあの文字列。
 あれの正体は俺の中に何故か出現していたドゥルドゥーの固有スキル『早起き』というものらしい。

 本来は眠っている相手を強制的に起こすという地味だけど嫌がらせには最適な能力らしいが、それがどういうわけか暴発したように俺を起こすことに使用されたとのことだ。

 ピンポイントに俺だけを起こしてくるあたり、呪いと言えなくもない無駄なスキルだと思うよ。

「でも、どうして暁人さんに魔物のスキルが備わっていたんでしょうか?」

「俺の固有スキルが『吸収』だからな。もしかしたら、敵の能力を吸収して自分の能力にでもできるのかもしれないよ」

 帰路への道を歩きながら、隣を行くフィーリネの質問にそう返す。
 あくまで仮説にすぎないが、俺の固有スキル『吸収』は、敵の魔法またはアビリティスキルによって生まれる攻撃を無効化。吸収して自分の力にする能力なのではないかと思っていた。

 最初は殺した相手の能力を奪うものだとも思ったさ。
 だが、俺がこの世界にやってきて倒した相手は思いのほか多い。巨大熊やイノシシ。グリフォンやガルーダといった化け物から、ドゥルドゥーのような弱い魔物を数多く倒してる。

 それなのにスキルとして奪ったものは『早起き』と『火炎』のみだ。

 となれば、受けたアビリティスキルや魔法が対象と考えるのが自然だろう。

「魔法やスキルによる攻撃を吸収するなんて、無敵じゃないですか!」

「そうでもないぞ? それら以外の攻撃……直接的な物理攻撃は無力化できないし吸収できない。向かってくるもの全てを吸収するから、ドゥルドゥーのようなスキルだって手に入れてしまうんだ。せめて選別くらいできればいいんだけど、こればっかりはな……」

 どうやら手に入れたスキルは捨てることもできないらしい。
 いらないスキルを手に入れたら最後、文字通り墓場まで共に過ごしていく必要が生まれるんだ。

 『火炎』のように攻撃とかに使えそうな強力なものならまだしも、『早起き』は別に欲しくはないんだけどな。
 早起きは三文の得とはいうけれど、俺はぐっすり眠っておきたい派だから。

「どんな万能なスキルでも弱点はあるんですね」

「まぁな。でも、悪いことばかりじゃないぞ? もしかしたら、あのドゥルドゥーから羽を奪えるかもしれない」

 立ち止まり、拳を握って俺は言う。
 若干口調に熱が入るのも仕方ない。

 最弱の魔物であるドゥルドゥー。ソイツから羽をもぎ取ることは普通の冒険者からすれば簡単なことかもしれないが、触れば吹っ飛んでいってしまう俺には至難の技なのだ。

「え、えっと……奪えるかもって?」

 愛想笑いを浮かべながらフィーリネは聞いてくる。
 なんら難しくないことを、さも高い壁のように口にしている俺に気をつかってくれている様がありありと見受けられるが、俺はそんなこと知ったことではないと指先を立てると

「俺はどんなスキルや魔法でも、向かってくるなら吸収できるわけだよな?」

「そ、そうですね」

「ということは、俺の動きを止める、もしくは制限するようなものを受ければ自分の能力に変えられる。つまり、そういう能力を手に入れられればドゥルドゥーの動きも止められると思うんだ」

「な、なるほど……!」

 今の現状、加減ができない以上はドゥルドゥーから羽を取るなんて夢のまた夢だ。
 時間をかけて加減を覚えていけば、いつかは可能になるかもしれない。だが、そこまでいけるのにいったいどのくらいの時間がかかるだろう。

 そう考えると、ズルをしているようだがスキルを奪って現状打破をした方がいい。
 加減を覚えていくのはその後からでもゆっくりできるのだから。

 高らかに宣言していた俺だが、肩を落として一気にテンションを下げる。
 というのも、この計画には大きな穴が存在するからだ。

「問題は、そんな都合の良いスキルを持ってる相手がいるかどうかなんだけどな……」

 いくら魔法やスキルを奪える力が備わっていたとしても、撃ってもらわないと吸収もなにもない。
 そもそもスキルだって星の数ほど存在するわけだから、その中から目当てのものを見つけるのにどのくらいかかるだろう。

 最悪、加減を覚えるより時間がかかるかもしれない。

「えっと……相手の行動を制限できるスキルがあれば良いんですか?」

「そうだな。遅くする、動けなくする、。足に絡みついたり、行く手を阻む。とにかくあいつらの動きをどうにかできるなら……」

「それだったら、良い相手を知ってます!」

「……えっ。マジで!?」

 落としていた肩をあげ、バッとフィーリネを見据える。
 胸の辺りでギュッと拳を握る様は小動物のように可愛らしい。

 そんな彼女は少し考える素振りを見せてからこちらを上目遣いに見ると

「危ない橋を渡ることになるでしょうけど、大丈夫ですか?」

「行く!」

「即答ですか!?」

 どうやら彼女は俺に選択肢を迫ってきていたようだが、すでに俺の決意は固まっている。
 現状打破できるのなら、危ない橋だろうとだって渡ってやるさ。

 そのような思いを即答という形で表してみれば、フィーリネはクスリと笑う。しかし、すぐに真剣な表情を浮かべると言った。

「では、行きましょう。……聖地アガットへ!」
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